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「マネーの虎」と呼ばれた男 南原竜樹のしくじり話 第4話

「西部警察」石原軍団に全面協力したのに・・・の巻

これはおいしい話だった

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03年春に故・石原裕次郎さんの菩提寺で開かれた「西部警察の『出陣式』」にて。僕も出席した。

2003年、英国の少量生産スポーツカー、TVRの輸入販売を全開でやっていた頃の話だ。MGローバーのインポーター、MGローバー・ニッポンは立ち上げたばかりで、ナンバラさんは毎日が日々充実していた。そんなとき、19年ぶりに復活するテレビ朝日系の人気ドラマ「西部警察」から車両協力の打診があった。

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横浜の菩提寺に勢ぞろいした西部署のありえない覆面パトカーたち。

これはおいしい話だった。「西部警察」が予定通り放映されていたら、TVRは日本で年間500台ぐらい売れていたと思う。02年に輸入権を獲得したTVRの売れ行きは好調で、当時年間80〜90台ぐらい売っていて儲かっていた。問題は知名度が低いことだけだった。

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TVRタスカン。いま見てもカッコイイ。

英国ブラックプールで手づくりされていたTVRは1台1000万円前後もするのに、壊れることでも有名で、ひとりを除いて、壊れることが楽しみになるような個性の塊だった。

除いたひとりの人とは裁判になった。リフトであげてみたら、オイル漏れしているというのが彼の主張だった。僕にいわせれば、それは漏れじゃなくてにじみに過ぎない。第一パッキンがコルクなんだから、そりゃオイルもにじみ出ますよ、絶対。

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名古屋ロケの様子。イギリスのスポーツカー・ブランド、MGのセダン(右手前)が覆面パトカーに使われている。

石原裕次郎十七回忌、石原プロモーション創立40周年、テレビ朝日開局45年に合わせた「西部警察」は、まずスペシャル版をつくって、それから毎週シリーズ放映されることになっていた。「西部警察」といえば日産だったけど、日産は当時ファミリー・イメージ路線に転換していてスポンサーを断った。そこで石原プロはBMWに企画書を持って行った。本国に問い合わせるので結論は3カ月後に、と言われたらしい。早い話、判断が早いところというと、うちぐらいしかなかった。

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名古屋に現れた「西部警察」のロケ隊のトラック。破格の制作費が投入されていた。

「西部警察 WESTERN POLICE 2003」と題したこのスペシャル版は、8月の名古屋でのロケで事故が起きて放送延期になり、シリーズの制作も中止になった。事故に巻き込まれた方にはお気の毒だけれど、いちばんケガがひどかったおばさんでも単純骨折だったから、しょっちゅう骨を折っている俺にいわせれば、たいしたことはなかった・・・かもしれないと思ったりして・・・。

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名古屋ロケの一コマ。迫力ある爆破シーンにビックリ。

事故に巻き込まれたのはロケの見学に来ていたせいで、ロケの見学に来ていたのは「西部警察」のファンだったからだ。だから、巻き込まれた人たちもみんな放映を望んでいた。制作中止は石原プロの過剰反応だったような気もする。

しくじりには2種類ある。不可抗力のしくじり、自力ではどうしようもないしくじりと、明らかにだれだれのせい、悪いのはあんたでしょう、というしくじりだ。「西部警察」のスポンサーはおいしい話だった。しくじったのは、悪いけど、僕じゃない。

と思ったけど、やっぱりそうじゃない。元を質せば、すべて自分の責任だ。どこかでなにかをしくじった。

聞いた話だけど、スタントマンじゃない若手の俳優がTVRを運転して、急発進した。彼はバイク乗りだった。バイクに乗っていると、経験がないのに、クルマもちゃんと乗れるという思い上がりと勘違いがありがちで、僕はバイク乗りだから彼の気持ちがよくわかる。

彼はかっこよく発進しようとしてアクセルを全開にしてスピンした。TVRはトラクション・コントロールとか、現代のクルマには普通の電子制御の類がまったくついてない、野蛮なスポーツカーだということを知らなかった。慌ててブレーキを踏もうと思ったら、間違えてクラッチを踏んだ。おかげでエンジンの動力が伝わらなくなって加速は止まり、横向きのまま、観客のほうにヨロヨロと突っ込んだ。骨折したおばさんの逃げ足がもうちょっと速かったら逃げられたのに・・・と思うと残念で仕方がない。

人生には運、不運は必ずある。

不運も自分の責任、と受け入れていかないと前には進めない。

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爆破シーンに使われたビルを背景にパチリ。当時、当社が所有していた。このあと、厄払いもあってすぐに売った。


【しくじり南原社長の金言】
バイク乗りはクルマの運転もうまいと勘違いする。

この記事を書いた人

南原竜樹
南原竜樹
名古屋〜東京〜沖縄をめまぐるしく移動しながら、いくつものプロジェクトを同時進行させる超人ビジネスマン。「冷徹の虎」の異名をもつ。最終目標は世界制覇だ! 

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