Every Little Thingの伊藤一郎、ワインを語る

「ワインでワンウェイ! バックギアはない(笑)」

自然体という言葉がしっくりする。
だからこそ彼らの音楽は聴く人に寄り添う。
ガツガツしないでも、一歩ずつ進む。
それがこの20年という時間に現れている。

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幸せの瞬間

伊藤家のワインセラーが、毎夜危機にさらされているという。

「小さなワインセラーなんですが、子どもがいたずらで開けて、ボトルを割ってしまうんです。うちの子、ロックされたものを突破するのが大好きなんですよ。将来がちょっと不安ですね(笑)」

お子さんの話をするとき、Every Little Thing(以下ELT)の〝いっくん〟こと、ギタリストの伊藤一朗さんは、ちょっと困ったような、だけど嬉しそうな顔をする。その穏やかなたたずまいは、ELTの音楽の印象そのものだ。

ともにユニットを支えるヴォーカリスト、持田香織さんのほんわかしたキャラクターとも相まって、彼らの音像には聴き手の生活にそっと寄り添うゆるやかな空気感が息づく。9月にリリースされたばかりの新曲「まいにち。」もしかり、そのタイトルの印象を裏切らない。

「最初から完璧にマイペースでいられたわけじゃないんですけれど、少しずつペースを固めていきながら、平和にやってきた20年だったと思います。二人ともどちらかというと気性が荒い方ではないですしね。ただ、個人的には家族ができた今は、以前ほど時間的な自由が利かないぶん、音楽に集中して取り組めている気がしますね」

本来は、寝食を忘れて演奏に没頭するほどのギター愛好者。だが、ここ数年はバラエティ番組などへの出演が増え、図らずも持ち前のいわゆる天然キャラをフィーチャーされたことによって、新たなファンが急増中だ。

「テレビに出ている僕しか知らない人も増えたので、『ギター弾けるんだ 』って聞かれることもあります。でも、僕はもともと、ELTでデビューする前に音楽の道を一度挫折した人間なので、その程度じゃ心が折れないんです。だからいつも『案外うまいでしょ?』って返すんですよ」

お酒の飲み方もずいぶん変わったのだとか。独身の頃はオールナイトどころか翌日の昼まで飲み続けることも多々あったというから、そもそもが酒豪なのだ。

「今は家飲みばかりですね。家族が寝静まるのを待って、好きな映画や音楽と一緒に楽しむのが至福の時間。でも、だいぶ弱くなりました。本当はワイン3杯で十分なんですが、これは性格なのかな、一度ボトルを開けたら最後まで飲み切りたいんです。もう、澱まで飲んじゃう(笑)。そうすると翌朝起きられなくて、軽く後悔するんですけど」

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Ichiro Ito(ELT)
持田香織とのユニットからなる、Every Little Thing(ELT)のギタリスト。
2016年に活動20周年を迎えた。最近ではバラエティ番組でも活躍中。
9月21日にニューシングル「まいにち。」を発売。1,000円(税込)

根っからのワイン好きだ。ビールで乾杯する必要がない場面では、シャンパンやスパークリングに始まり、続くはこよなく愛するフルボディの赤、いわく「ガッツリ重いやつ」で最後まで。

「ワインならワインで、ワンウェイです! バックギアはない(笑)」

では、今回「WINEーWHAT!?」が用意した〝ラ・キュベ・ミティーク〟はお眼鏡にかなっただろうか。

「飲み口はけっして重くないのに、香りが濃厚な感じ。これは深夜に軽く飲みたいとき、僕にはちょうどいいですね。ハロウィン仕様のラベルも、フクロウの焼印のコルクもかわいいので、子どもたちにいじられないように隠しておかなくては(笑)」

伊藤さんの話をうかがっていると、ワインそのもの以上に、ワインのある時間と空間を大切にしている印象を受ける。実は、ブランドにもさほどこだわりがないのだとか。

「1本数万円でも、千円でも、美味しいものは美味しいじゃないですか。旅と一緒で、メンツが楽しければ、そこにあるワインもよっぽどひどいもの じゃない限り美味しく感じるんじゃないかな、と。以前〝オーヴァーチュア〟(編集注:〝オーパスワン〟のセカンドワインとして名高い)が安かったときに1ダース買ったことがあるんですけど、友達の誕生日に持って行ったり、夜中にカミさんがこっそり開けて飲んでも、まだ何本もある! って思えることが、僕にとってはその美味しさ以上に幸せでした」

決して特別ではない、だけど離れがたくいつもそこにある。伊藤さんにとっての赤ワインは、思えば、まるで私たちにとってのELTの音楽のよう。

「そう思ってもらえる音楽であるなら、持田も僕も20年やってきた甲斐がありますね。ただ、個人としてはこれからかな。ELTの中での僕の使命はある程度果たせたかなと思っているんですが、ギタリストとしては発展途上。かのエリック・クラプトン だって、セールス的に本当に成功したのは40代後半なんですよね。僕はだから、まだまだ狙ってますよ(笑)」

深まる秋。

赤ワインを傍に、ギタリストの頭の中には次なるアイデアがきっと浮かんでいるのだろう。それがいつか形になる時を楽しみにしていたい。

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