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京料理とワインのマリアージュを検証する②

和美塾主催「wabi labo」レポート

3品目  焼物 伝助穴子 長芋 梅醤タレ
合わせたワイン:  アルバリーニョ パシフィカード2014

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干した葡萄で作るパシフィカードはハチミツ、オレンジピールなど甘味を感じる香りでアルコールが高くボリュームがあり、その中にもしっかりとした酸を感じるワイン。
それに合わせた梅醬の酸味と甘味のバランス加減が素晴らしい。梅が強すぎてもワインとのバランスが崩れてしまっただろうし、また穴子を骨切りにしたというところも流石。骨切りにしたことで梅醬を舌の上で強く感じる前に穴子の旨味が溶け出して来て、梅醬の酸と甘みに穴子の上品な脂と香りが混ざり、アルコールが高くボリュームのあるパッシートに見事に合っていた。あれが骨切りしていない穴子だったら、梅醬が口中全体の味の中でもっと強く支配しているように感じたと思う。

4品目   独活・うるい・椎茸 の胡麻と亜麻仁の和え物
ワインは変わらず、 アルバリーニョ パシフィカード2014

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茶事の要領で数人で取り分け。

↓左上にあるのは、「お好みで」と勧められた珈琲の粉

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この皿は甘味が強く、胡麻と亜麻仁の力強さがあり、甘みを感じるパシフィカードと良く合うのは想像に難くないが、お好みで…と後からお皿の脇に添えられたコーヒー粉末にとても驚いた。
アルバリーニョの最後に感じる苦味に合わせただけなのかと思いきや、そのコーヒーはナッツ香やバニラの香りがはっきりあり、ナッツ、バニラ、コーヒーのニュアンスといえば樽由来の香り。少しコーヒーの粉を付けて胡麻和えを一口食べ、ワインを口に含むと別のワインに変わるような…造られた本多さんには嬉しくない表現かもしれないが、樽のニュアンスが上品に溶け込んだ別のワインを飲んでいるかのようにワインの味を変化させていた。もちろん美味しいワインに。そして二口、三口と続けてワインを飲むとまた元のワインの味に戻り…このマジックの様なマリアージュに感動!

5品目  お凌ぎ   蕎麦  鰯山菜揚げ
ワイン   今までに出た3種のワインから好みを探す

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これは3種のワインから自分の好きなマリアージュを探す試み。
京都の蕎麦つゆは関東のものより甘く、こちらもパシフィカードによく合い、出汁との意外な相性の良さに嬉しい驚き。鰯の山菜揚げは三枚におろした鰯の上に何種かの山菜を刻んだ物をのせ衣をつけて揚げたもの。これはマセラシオンが好み。

6品目   鴨肉の炭火炙り  フォアグラ羹添え
ワイン    ラグレアブル ポワソン2014(カベルネ フラン)

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野生酵母でナチュラルな造りをしたワイン。心地良い毒・クセになるワインという意味を含めて名付けされたワインは柔らかく、余韻が長く、ピノと鴨肉の組み合わせに似たマリアージュだが、カベルネフランの持つピーマンのような青い香りに実山椒のソースを合わせてあり素敵なバランスになっている。添えてあるフォアグラ羹は甘く、フレンチの要素を取り入れた和の一品。

7品目  丹後猪三枚肉 柔らか煮
ワイン  カベルネフラン2014

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このマリアージュは唯一疑問が残った。とろみのついた甘い煮汁と柔らかく煮込まれた猪肉は尖りがない丸い味。それに先に飲んだラグレアブル ポワソンよりも青みとタンニンを強く感じるこのスタンダードな造りのカベルネフランは、料理を引き締めるという意味合いのマリアージュかもしれないが、少し強すぎるのでは?
次に出るお食事の肴、鰻の蒲焼きの方に良く合っていた。

8品目    和久傳 丹後米 鰻の蒲焼き 香の物 赤だし

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9品目 菓子   木の実寄せ
ワイン   やまぶどうスパークリングワイン2012

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自生しているやまぶどうで造られたスパークリング。口の細いシャンパンフルートでいただいた為か、めちゃくちゃ酸っぱい!が一口目の感想。でもこの木の実寄せ、分かりやすく言うなら「和」のヌガー。飴で寄せた様々な木の実の野性味が山葡萄の野性味にとても合うし、飴の甘さがこのワインの酸っぱさを穏やかにして、どちらも単体より美味しく感じるマリアージュ。なによりも「和の菓子」の立ち位置を崩していないのが凄い!
これ以上この泡に合うマリアージュなんて無いのでは?と思える組み合わせ

食事を堪能した後のお茶も心にくい物が♪

和のハーブティー  摘み草茶

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青紫蘇、桑の葉、柿の葉、レモングラス
散々味覚を刺激された後に、さっぱりとほ~っとする味。ただ当り前に煎茶にしないところがにくいなぁ

和美塾では
(wabijuku.com/demo.html)
外国人ゲストに食文化を含む良質な和文化を体験して頂くためにアテンドをしています。その為ゲストに好まれる「和食とワインのマリアージュ」はさまざまななところで試してきました。

しかし、ここまで素晴らしくワインに合わせてくるお料理は初めてでした。
合わせ方も一辺倒ではなく、時に共通の柑橘の香りでワインに添わせ、時に料理とワインの味のボリュームを合わせながらもワインの酸を箸休めとして口中を軽やかにする為に使い、また時にはワインそのものの味が変化したかの様に感じる料理を合わせるなど、こんなに多彩なマリアージュが和食でできるとは、さすが高台寺 和久傳の総料理長 藤山さんです。

素晴らしい料理人の手にかかると、こんなに素晴らしく双方が科学変化を起こすのですね。ここまでの料理を思いつかせる程にフェルミエのワインは素晴らしい力を持っているのだと改めて感じました。fermier.jp

日本ワインのレベルがとても高くなっているということは、ワインのプロの皆様がすでに口を揃えておっしゃっていますが、私は特に和食には日本のワインがとても良く合うと思います。

ただの食いしん坊の私の意見ですが、日本ワインは良い意味で余韻が長くない。だからこそお造りなどの生臭さや山菜のエグミを引き出さない、長く引っ張らないのだと感じています。日本ワインの良さや競争力ってここにあるんじゃないの?とも思っています。 

なぜなら世界の料理、特にフレンチやイタリアンが日本料理のように、食材を生かしたシンプルなものに変わってきているし、「旨味」
という概念を料理に取り入れようとしています。まるで和食のようです。 だとしたら、世界の料理が和食のように変わってきているのであれば、和食に合う日本ワインは世界でも求められていくのではないでしょうか?!
そんな風に思っています。
これからの日本ワインの進化がますます楽しみです!

この記事を書いた人

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森實有紀子(和美塾)
和食・日本酒・着物・茶道、そして日本ワイン。 食文化を含めた『和文化』の素晴らしさを世界に伝える『和美塾』の代表です。

定期的に行う『wabi labo 』は、和食とワインのマリアージュを検証したり、日本酒の新しいあり方について試してみたりと、和文化を体験し、試し、意見を交換し合う活動をしています。その様子をこちらでお伝えしていきます。

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