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ローカルが決め手! ドイツワインの新しい品種ムーブメント

いつまでも甘口の白だけじゃない

ドイツワインのイメージは、リースリングで白で甘口・・・?
いやいや、時代は変わる。ローカル品種にこだわるムーブメントが起きている。
ドイツのワイン産地として知られるヴュルテンベルクとラインヘッセン地方の醸造所めぐりをしてみると、
自由で新しいドイツワインが見えてきた。

取材・文:山本真紀 取材協力:Wines of Germany

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1868年創立、とワイン造りを学ぶ学校としてはドイツ最古の歴史を誇る。現在、ヴァインスベルク州立醸造所に所属する研究者兼ワインメーカーは5人。「ボトルの形状はブルゴーニュタイプのほうがこの貧種のイメージに沿うのでは・・・」といった面まで思案する。

訪問地1 Staatsweingut Weinsberg(ヴァインスベルク州立醸造所)

我輩は「We 88‐101‐13」である。

もうすぐ、ドイツから新たな白ワイン用のブドウ品種がデビューする。現在の名は、「We 88‐101‐13」。管理番号のままで呼ばれている。

舞台は、ヴュルテンベルク地方のヴァインスベルク州立醸造所だ。栽培醸造学校、研究所を兼ね備え、品種交配はお手の物。ここ80年を振り返ると20種ほどリリースし、1929年に登録された白ワイン用ブドウ品種のケルナー、最近では1984年に登録された赤ワイン用品種、ドルンフェルダーが代表的な成功例である。一時ほぼ忘れ去られていたドイツの伝統的なロゼの一種、シラーヴァインに着目して復活させつつ、自社からはスパークリングワインにアレンジしてリリースするなど、温故知新の精神を抱きながらドイツのワイン・シーンをリードしてきた。

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「We 88-101-13」はソーヴィニヨン・ブランに近い味わい。病気に強く、栽培しやすいのがウリ。

世の中では地球温暖化が叫ばれているとはいえ、冬の寒さは厳しく、機械の導入が難しいほど急斜面の畑も少なくないドイツ。限られた条件下で、より優れたブドウを求めて選別、交配を繰り返す研究が熱心に進められたのは当然の流れだ。

ところで品種交配というものは、非常にメンドクサイ。ポッと出現した新種のブドウは、次にその枝を分けて10本程度のブドウ樹へと増殖。年月を重ねて地道に増やしていき、開花や果熟のタイミング、天候による変化を記録する。

ボトル数本分でもワインを造ることのできる収獲量になれば、まずは1種類の酵母で品種特性を見極め、さらに酵母や醸造温度を変えて順々に試す。それだけの手間をかけて、最終的に登録する価値があるかどうかをジャッジする。前述の品種に関しては、1988年の交配で誕生して以降、収量、開花時期、病気への耐性などをこの醸造所で徹底的に調べ上げてきた。

最後に残された難問は、ネーミング。ドイツらしく、かつドイツ語の発音に馴染みがない世界中の人にもすんなり覚えてもらえるほうがいい。ケルナーは地元ヴュルテンベルクの詩人の名前に由来し、ドルンフェルダーも栽培醸造学校設立の立役者にちなんだもの。

果たして「We 88‐101‐13」はどのような名前で登録されるのか?

将来はワインの売り上げに大きく影響するだけに、関係者は大いに頭を悩ませているとか。もし素敵な名前を思いついた人がいたら、どうか彼らに教えてあげてほしい。

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試飲室の室内灯は、赤、黄、緑と変化。グラスに入ったワインの色を識別できなくする仕掛けだ。

ドイツワイン豆知識

Kerner (ケルナー)
赤ワイン用品種のトロリンガーとリースリングを掛け合わせて誕生した、寒さに強い品種。2000年当時から比べると栽培面積は半分以下に落ち込んではいるが、それでもドイツの白ワイン用品種としては6番目に広い。ドイツではファルツ、ラインヘッセン、モーゼル、ヴュルテンベルク、他国ではオーストリアやスイスが主な産地。

Dornfelder (ドルンフェルダー)
ヘルフェンシュタイナーとヘロルドレーベを掛け合わせた品種。明るい色調の赤ワインばかりだった冷涼なドイツにおいて、ドルンフェルダーだけは果皮の色が濃く酸も豊かなことから、長期熟成向きのワインができると期待されて即座に人気品種へ。現在、ドイツの赤ワイン用品種のなかでは、シュペトブルグンダーに次いで第2位。

Schillerwein (シラーヴァイン)
黒ブドウと白ブドウを混ぜてから醗酵させる混醸法で造られたロゼ色のワイン。混醸ワインはドイツでロートリングヴァインと呼ばれるが、Q.b.Aに格付けされたヴュルテンベルク産だけがシラーヴァインを名乗ることができる。

Weißburgunder (ヴァイスブルグンダー)
フランスでのピノ・ブランを指す。シュペトブルグンダーはピノ・ノワール、グラウブルグンダーはピノ・グリのこと。

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つづきは次ページに。

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