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シャンパーニュ ブラン・ド・ブランの基本のキ

シャルドネ100パーセントは、なぜ格上になる?

黒ブドウ品種のピノ・ノワールとムニエ、白ブドウ品種のシャルドネの、ほぼ3種類でつくられるシャンパーニュ。このうち、白ブドウのシャルドネ100パーセントのシャンパーニュを「ブラン・ド・ブラン」と呼ぶ。では、なぜ「ブラン・ド・ブラン」はシャンパーニュのなかでも、格上の存在なのか。知りたいひとは必読です。

セクシーな「白の中の白」

ブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)。なんというセクシーな響きだろう。ネイティヴの発音では鼻母音が二度繰り返されるので、なおさらセクシーに耳へと響く。ここはぜひ、レア・セイドゥーかマリオン・コティヤールに耳元で囁いてもらいたいものだ。

ブランはフランス語で白。ブラン・ド・ブランは「白の中の白」である。これが転じて、白ブドウのみから造られたシャンパーニュをブラン・ド・ブランと呼んでいる。

シャンパーニュ地方で白ブドウといえば一般的にはシャルドネであり、シャルドネ100パーセントから造られたシャンパーニュを意味する。

しかしながらシャンパーニュ地方には、アルバンヌ、プティ・メリエ、ピノ・ブランなどの品種もわずかなながら栽培されており、これらを単独、もしくはアッサンブラージュしてもブラン・ド・ブランを名乗れるはずだ。

ブラン・ド・ブランの歴史については諸説あるものの、その嚆矢は1911年にリリースされた1905年ヴィンテージの「サロン」と言われている。ル・メニル・シュール・オジェ村のシャルドネのみから造られた単一ヴィンテージのブラン・ド・ブランであり、単一品種というだけでなく、単一のクリュから造られた異例のシャンパーニュだった。

なぜサロン以前にブラン・ド・ブランが登場しなかったのか。それにはいくつかの理由が考えられる。

こんにち、シャンパーニュ地方には3万4000ヘクタールのブドウ畑があるが、そのうちシャルドネの占める割合は28パーセントに過ぎない。かつては今以上に作付け比率が低かったと言われており、フレッシュさやエレガンスを与えるシャルドネは、ノンヴィンテージのアッサンブラージュに最優先で回された。

とくに熟成のポテンシャルを鑑みれば、グラン・クリュのシャルドネほどノンヴィンテージのリザーヴワインに重用されたはずで、貴重なシャルドネのみからシャンパーニュを造る発想など生まれなかったのであろう。

もうひとつは、その品質である。今は地球温暖化でシャンパーニュ地方でも熟度の高いブドウを収穫できるが、昔は気温が低く、とくにシャルドネは酸の強さが際立った。おそらくマロラクティック発酵も自然には起こらず、当時、シャルドネのみから造られたシャンパーニュはよほどの量のドザージュに頼らぬ限り、ギスギスして飲みづらかったはずである。

この問題を解決するには長い瓶内熟成を経て、酵母がワインに丸みを与えてくれるのを待つよりほかない。

それを実現したのがサロンだったのではなかろうか。

希少なシャルドネと不可避な長期熟成。したがって、ブラン・ド・ブランというカテゴリーが、通常のノンヴィンテージやヴィンテージよりも格上に扱われるのも、当然といえば当然なのである。

酸の高さに裏打ちされたミネラル感

ブラン・ド・ブランの多くは、質の高いシャルドネを生み出すコート・デ・ブラン(Côte des Blancs)地区のブドウを用いることが多い。

このエリアは概ね朝日が当たる東向き斜面で、適度な日照が得られるとともに、風味にミネラルを生み出すチョーク質の土壌が特徴となっている。ブルゴーニュのコート・ドールとは対照的に、木々の茂る斜面上部よりも集落の位置する麓のほうが表土が薄く、よりミネラルに富んだシャルドネを生む。

コート・デ・ブランには北からシュイィ、オワリー、クラマン、アヴィーズ、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェと6つのグラン・クリュがあり、とくにクラマン以南の4つの村=クリュが有名である。

それぞれの特徴は、メゾンやレコルタンごとに主張が異なり、一般化するのが難しい。しかし、メニルのシャルドネが最も厳格で、ミネラルに富み、長期熟成のポテンシャルが高いという点では意見が一致する。

また、モンターニュ・ド・ランスの東の縁に位置するヴィレール・マルムリーとトレパイユもシャルドネの産地。位置的にはコート・デ・ブランより北ながら、比較するとわずかにふくよかな印象を受ける。

さらに最近、シャルドネの産地として脚光を浴びるのが、コート・デ・ブランの南に続くコート・ド・セザンヌ、トロワの西に位置するモングー、シャロン・アン・シャンパーニュの南東にあるヴィトリアだ。

いずれもチョーク質の土壌を母岩にもつものの、緯度や斜面の向き、表土の厚さがコート・デ・ブランとは異なるため、ブドウの質にも違いがあるようだ。

ブラン・ド・ブランは色が淡く、緑みがかり、泡立ちは繊細。フローラルで柑橘のアロマが際立ち、酸の高さに裏打ちされたミネラル感に富む。フレッシュでデリケート、そしてエレガンスを極めたシャンパーニュというのが一般的なイメージだ。

しかしそれも若いものに限られ、長期の熟成によってバターやモカ、時にはたとえ醸造に木樽を使っていなくても、ナッツのようなフレーバーを醸し出すことがある。

その一方、熟成感が増しても酸とミネラルが背骨を構築し、決して重くならないのもブラン・ド・ブランの特徴。その高貴な泡立ちと風味に、世のシャンパーニュ・ラヴァーはハートを鷲掴みにされるのだ。

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