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シャンパーニュのサステイナビリティ

最新ニュースからピックアップ

シャンパーニュのキリっとした味わいは、キリっとしたブドウから生まれる。そしてシャンパーニュはシャンパーニュ地方でしか造られない。だから、温暖化によってブドウが甘くなりすぎてしまったり、雨が多くなってしまったり、あるいは逆に、極端に寒くなってしまったり、そもそも土壌が荒れてしまうことは、シャンパーニュの命運に関わる。

この20年ほど、シャンパーニュでは、様々な方法で、環境の変動に対応している。ここでは、最近のシャンパーニュのニュースで、特に目立った、サステイナビリティに関する話題をまとめて紹介したい。

シャンパーニュはみんなでやっている

2021年は、3月が温暖で、ブドウの芽吹きが早かったのに、4月になって氷点下を下回る寒波が到来し、フランスの多くのワイン産地が被害を受けた年だった。シャンパーニュも例外ではない。

なぜ、こういう気候になるのか。正確なところは誰にもわからないものの、年々、早まる収穫タイミングから考えても、温暖化がひとつの原因である可能性は高い。環境を保全してくことでワインを守ろう、という活動を、シャンパーニュ地方は、いち早くおこなっている産地だ。

独自の「シャンパーニュの持続可能なブドウ栽培」認証を採用し、シャンパーニュ全体で2025年までに除草剤をゼロ、 2030年までに100%環境認証という目標を設定して、すでに20年以上、目標達成のためのさまざまな努力、協力関係の構築を実現している。

各造り手、アプローチの方法は様々。最近では、ブドウ栽培だけでなく、パッケージや輸送に関しての話題も増えてきた。そこでここでは、新商品のリリースの裏側にある、最近のシャンパーニュとサステイナビリティに関するニュースをいくつかピックアップしてみたい。

ボトルが浴衣を着ているような『ルイナール セカンドスキン』

今年の夏から登場しているのが、世界最古のシャンパーニュメゾン、ルイナールのセカンドスキンというパッケージ。従来のボックス型のパッケージをやめ、ボトルをぴったり覆う、紙パッケージが『ルイナール ブラン・ド・ブラン』と『ルイナール ロゼ』で採用されている。

持続可能な管理がなされているヨーロッパの森林から得られた木材から造った紙に、天然の金属酸化物を添加することでボトルのなかのワインを光から守るこの新パッケージは、重量わずか40gと、従来型のボックスより9倍軽い。フランス環境エネルギー管理庁「ADEME」およびエネルギー効率局「BEE」のパッケージの環境アセスメントの方法論に基づく評価では、梱包におけるCO2の排出の60%を削減できるのだそうだ。

ルイナール ブラン・ド・ブラン 750ml ¥ 12,210

Rのイニシャルがエンボスされたボタンのような部分をはずせば、おなじみのボトルが姿を見せるのだけれど、このセカンドスキンは氷の入ったアイスバケツに入れておいても、数時間にわたって水に耐え、ルイナールの誇る地下セラー「クレイエル」をイメージした表面は手触りよく、持ちやすい。ネックも露出していることから、わざわざ外す必要を感じない。

ルイナールは、2015年以降、それまでより50g軽量のギフトボックスを使用し、当時200トン以上の紙を節約した。さらにあらゆる形態のプラスチック包装を撤廃し、プラスチックの使用量を26トンも削減したという実績がある。ここからさらに、セカンドスキンの採用なのだ。

ランスにある敷地内では、廃棄物の98.7%がリサイクルされているだけでなく、醸造工程で発生する副産物も100%リサイクル。電動式トラクターの採用、畑でのブドウ樹以外の植物の植樹による生物多様性の確保、殺虫剤・除草剤の不使用、ワイナリーでの自然エネルギーの使用、流通においても、10年前から飛行機を使った商品輸送はやめていて、同社の半分くらいの市場であるフランスでは、60%のボトルが電気自動車や人力で運ばれている、とワインの質だけでなく、カーボンフットプリントの小ささにも並々ならぬこだわりがある造り手だ。

生物多様性をアートでも表現するペリエ ジュエ

昨年11月に、数量限定という形ではあったものの、ペリエ ジュエも『クラシック ライン エコロジカル ボックス』というFSC認証を得た森から調達した100%ナチュラル繊維、鉱物油不使用のインクと接着剤を使用した、再生可能かつ、従来のギフトボックスにくらべて30%軽量というボックスで『グラン ブリュット』『ブラン・ド ・ブラン』『ブラゾン ロゼ』をリリースしている。

ペリエ ジュエ クラシックライン ブラン・ド・ブラン エコロジカル ボックス ¥ 14,740

これは、ペリエ ジュエのサステイナビリティへの取り組みのわかりやすい紹介で、ギフトボックスは近い将来、すべてが環境に配慮したデザイン、素材に移行する予定。すでに、フランス製のガラスボトル は、永久に再生可能かつ軽量化したものに置き換わっているほか、グリーンのボトルはその85%がリサイクルガラスで作られている。2009年からはCO2排出量を55%削減し、生産工場全体でグリーンエネルギーを使用、澱などの副産物は堆肥やエッセンシャルオイルなどに100%リサイクルされている。栽培においても、生物学的制御やロボットなどの手段をもちいて環境負荷を低減し、木や垣根の植樹、ミツバチの巣箱の設置、石垣の建設といった生物多様性の確保や環境保全をおこなっている。

ペリエ ジュエらしいのは、『ペリエ ジュエ ベル エポック2013』に、オーストリア出身のデザイナーデュオ「ミシャー’トラクスラー」がデザインしたコラボレーションギフトボックス入りの限定バージョンを今年8月に発売したこと。

ペリエジュエベルエポック2013 ギフト箱入り by ミシャー’トラクスラー / ¥ 27,830

このパッケージには「BIODIVERSITY〜生物多様性〜」に敬意を込めたという繊細な水彩画が描かれていて、植物、花、鳥から始まり、小さな昆虫、現実では肉眼では見えない土の中の微生物やバクテリアまでが表現されている。ボックス内部にはそれら動植物の説明もあり、箱をあけても美しい。自分たちの環境に対する姿勢をアートピースによって表明する。なんともペリエ ジュエらしい優雅な手法だ。

そもそもパッケージがないシャンパーニュ メゾン『テルモン』

今年7月に日本に上陸したシャンパーニュメゾン テルモンは、そもそもパッケージがない。販売者に「パッケージがなければ売れない」と言われたら?と質問すると、「であれば売ってもらわなくていい」という徹底ぶりだ。

テルモンは、1912年にブドウ農家兼生産者、いわゆるレコルタン・マニピュランのアンリ・ロピタルが、エペルネ近郊のダムリーに創業した「メゾン・テルモン」が起源。あらゆる活動の指針として「母なる大地の名のもとに」を掲げる彼らの姿勢に『ルイ13世』や『レミーマルタン』で知られるレミーコアントローグループが共感し、現在、同グループのシャンパーニュ メゾンとなっている。

テルモン レゼルヴ・ブリュット / ¥ 7,920

シャンパーニュでは初の例である外装材やギフト包装材の製造と使用の中止は、テルモンにとっては序の口で、ボトルは透明ボトルの使用を2021年中に廃止し、ガラスの85%がリサイクルで製造され使用後は100%リサイクル可能なグリーンボトルに切り替え中。さらには他のワインやシードルに使ったボトルの再利用にも乗り出している。

ワイナリーでの太陽光発電の導入や電気自動車の使用といった自社での取り組みだけでなく、航空機を使わない物流システムの構築や、物流に関連する事業者にも温室効果ガスの排出を制限する、という、先程のパッケージの例にあるように、自社以外のところまで、その哲学を徹底しているのが特徴的で、どこかで妥協してしまったら、結局、取り組み全体の意義が損なわれる、という考え方なのだろう。

畑は、2017年に、自社畑(約24.5ha)の72%がオーガニック認証を受け、2025年までに100%オーガニック認証取得を目指しているという。

日本で展開されるワインは「レゼルヴ・ブリュット」、「レゼルヴ・ロゼ」、「レゼルヴ・ド・ラ・テール」、「ブラン・ド・ブラン・ヴィノテーク」の4種類。ベースのヴィンテージが2017年、リザーブワインが44%という「レゼルヴ・ブリュット」を試したところ、切れ味鋭い酸味、というよりも、まろやかな甘みが印象的。アペリティフよりもスティルの白ワインのように食事に合わせていくと相性が良さそうだ。やや甘みのあるタレや苦味のある魚介や野菜が似合うだろう。

興味深いのはそのフロントラベルで、シリアルナンバー、デゴルジュマンの年、ドザージュ、使用品種とそのパーセンテージ、ベースワインとリザーブワインのヴィンテージと分量、マロラクティック発酵をしているか否か、というテクニカルな情報がすべて記載されている。隠し事はない、という克己的姿勢を感じる。

ブリュットNVを刷新してしまったルイ・ロデレール

シャンパーニュのスタンダード・キュヴェのなかでも、とりわけ、高い評価を連発し、ひとつのベンチマークとなっていた、ルイ・ロデレールの『ブリュット・プルミエ』。これが今後造られない、というニュースには耳を疑った。

代わりに、ルイ・ロデレールのスタンダードとして10月1日から販売されるのが、『コレクション』。これまで、ブリュット・プルミエが毎年同じ味わいになるように造られていたのに対して、コレクションでは、より、ベースとなるワインの収穫年の特徴を反映したものになる。初リリースとなる『コレクション 242』は、2017年ヴィンテージがベース。特にシャルドネの良さを生かしており、酸味が美しい。ブリュット・プルミエとくらべると、ルイ・ロデレールの頂点であり、シャンパーニュのひとつの頂点でもある『クリスタル』と同じブランドの商品、という印象を強くうけるようになった。

ルイ・ロデレール『コレクション 242』 / ¥ 8,250

2000年以降、ルイ・ロデレールがオーガニック、そしてビオディナミ栽培へと転換したことには、気候変動への対応という側面もあった。栽培方法を切り替えてすぐは、困難にも見舞われたものの、現在ではブドウの熟度が格段に上がり、安定的に高品質なブドウが収穫できるようになったことが、ブリュット・プルミエをやめ、コレクションをリリースした理由ということで、シャンパーニュ地方最大級のビオディナミ生産者として、地球温暖化への対応を、ブランドの顔となるワインの質の向上へとつなげてしまった感がある。お見事。

この記事を書いた人

ムッシュ鈴木
ムッシュ鈴木
東京生まれ。信州人になりたいとおもっている。パリ大学でフランス文学の研究をしていた。果物の仕事をしてから、ワイン業界へ。

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