アームチェア〝ワイン〟トラベラー Vol.7

気分はテロリスト

太地喜和子と飲みたい

3番は金である。注げば白色で、小さな泡が綺麗に立つ。ううむスパークリングか。まろやかな口当たりで、後味もいい。

貴婦人に憧れる18歳。品はあるけどまだ若い。ブリーやリコッタあたりが合いそうである。

ローストチキンやピータン、豚のローストなんかもよさそうだけど、鶏のフォーやチャプチェ、生春巻きなんかも受け止めそう。貴婦人に憧れるだけあって、度量が深い。

白色の4番は、白ワイン。泡はない。淡い緑色がかった色合いで、レモンや桃のような香りがほんのりと立ち上がる。

若いテニスプレイヤー、土居美咲選手のような溌剌がある。少女の面影を残しながら強いが、まだ83位、伸び盛りである。

焼いたプロヴォーネとよく合う、魚介料理、屋外でボンゴレやスズキの香草焼きなんかを食べながら飲んでみたい。

白缶の5番は、白の発泡、泡の勢いがよい。青リンゴやライムのような香りがあって、飲み口がすっきりとしている。

まだ色気はないが、女性としての繊細さや優しさがにじみ出る、スポーツ選手か。強いていえば、なでしこサッカーの、仲田歩夢選手かなあ。

さあ最後の赤色の6番は、予想通りの赤ワインである。深い赤色で、甘みと苦み、ほのかなスパイス的刺激を感じる。

こいつはチーズが合う。パルミジャーノもゴーダもミモレットも受け止める。2番の赤よりアルコールが強く感じるのは、酔いのせいか。

うんこいつが一番大人だな。20歳と若いながら、十分な色気を隠し持っている、女優の大野いとかな。

6人の、若い美しき女の子と飲むのもいいが、缶ワイン6種類を1本ずつ飲んでいくのは誰がいいかと考えた。

1本250mℓとはいえ、6本である。相当の酒飲みでなくてはいけない。気持ちの懐が深くて姉御肌、といえば、唐人お吉のようにお亡くなりになった、太地喜和子と飲みたい。あの色っぽい目つきと仕草で、缶ワインを飲む。たまりません。

音楽は何がいいだろう。6種類のワインに合う音楽なんてありません。缶ワインだからといって、軽い音楽でもつまらない。

そこで選んでみたのが、カエタノ・ヴェローゾが、初めて全編英語でアメリカの歌をカヴァーした「フォーリン・サウンド」である。
「ダイアナ」や「ラブ・ミー・テンダー」といった有名な曲や、コールポーターや、デューク・エリントン、あるいはボブ・デュランやニルヴァーナの歌を、特有の甘い声で歌いあげる。

硬質なロックでさえ骨抜きにし、空気を蜂蜜のようにねっとりとさせる彼の歌に身をゆだねながら缶ワインを飲み、酔う。

なにしろ横には太地喜和子さんがいて、愛の眼差しを向けているのである。

もうどこまでも落ちてもいい。そう思う瞬間である。瓶なら1本飲んでとりあえず完結するところだが、缶ワインは手頃ゆえにとどめがない。甘い堕落の相方として、申し分ないのである。

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この記事を書いた人

マッキー牧元
マッキー牧元
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、日々飲み食べ歩く。まさに、「食べるグルメマップ」。多くのアーティストの宣伝・制作の仕事のかたわら、1994年には、昭文社刊「山本益博の東京食べる地図」取材執筆、1995年には「味の手帖」に連載を開始するなど、食に関する様々な執筆活動を行う。現在も、「味の手帖」、「食楽」、「銀座百店」、「東京カレンダー」など、多数の雑誌やWebに連載中。日本テレビ「メレンゲの気持ち」、「ぐるぐるナインティナイン」などに出演。

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