1981 年、ロバート・モンダヴィ、マーグリット・モンダヴィ夫妻をふくむ、ワイナリーオーナーの小規模なグループが、ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズとともに開催した、「オークション・ナパヴァレー」。いまや、ワインと食の祭典として、世界でもっとも華々しいチャリティーワインイベントだ。目玉のライブオークションのほか、数々の稀少なワインのオークションもひらかれ、これまで1 億7000 万ドルもの金額が地元NPO に寄付され、医療や住宅、教育に宛てられている。写真は今年のオークションでのケンゾー エステイトのカタログ

目指すは世界一

上を目指そう、知名度を高めようとするのは、経営者としては当然の姿勢だろうが、彼はそれに輪をかけて強気で、「世界のトップクラスにならないと意味がない」と豪語する。

その考え方には、どうやら彼の育った環境が大きく影響しているようだ。

「私は父親を早くに亡くしてね、中学卒業後、近所の会社に就職し、同時に定時制高校にも入学しました。けど、二足の草鞋を履く生活は想像していた以上にきつかった。このままやっていたら死んでしまうと思ったね。しかし、全日制の学校に通う生徒と対等になるには、人の2、3倍濃い人生を送るしか無いと確信し、それで、自分で会社を起こそう、商売人としてトップを目指したろう、と頭を切り替えた」

そこまで一息に語ると、辻本は笑みを浮かべて「商売には何が大事かわかるかね?」と訊ねてきた。こちらが答えあぐねていると、辻本はいっそう目を細めて言った。

「簡単ですわ。売れるものを作ればいい。売れるものを作るためには一番いいもんを作ればいい。そうすればトップクラスになれる」

いかにも単純明快だ。それだからこそ、辻本はケンゾー エステイトのワインを造るためにデイビッド・アブリュー、ハイディ・バレットという2人のカリスマを起用したのだ。

カプコンの会長としても、その姿勢がブレることはない。社内にいる何千人ものゲームクリエイターの中から逸材を見出し、そのトップクリエイターが能力を如何なく発揮できる環境づくりに邁進する。スケジュールは、日々、30分単位でびっしり。しかも、夜は夜で、東京・広尾の「ケンゾー エステイト ワイナリー」に連日のように通い、さらには1カ月に1度ナパへ行っているというから恐れ入る。今年77歳の喜寿を迎えるとはいささか信じがたい。

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