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    末松(神原)弥奈子に聞く

ジャパンタイムズ会長
末松(神原)弥奈子に聞く

なぜいま、「ジャパンタイムズ」を買ったのですか?

今回のインタビューは、The Japan Times創刊120周年記念企画展「英字新聞が伝えた『日本』」の会場でおこなった。同企画展は、ニュースパーク(日本新聞博物館)2階、企画展示室(〒231-8311 神奈川県横浜市中区日本大通11 横浜情報文化センター)にて、12月24日(日)まで開催。開館時間は10:00~17:00(入館は16:30まで)

メディアというパッケージ

それはつまり、日本にはよいメディアがないということなのでしょうか? と聞くと、そんなことはない、とあわてて首を振る。

「むしろ逆です。私たちの世代は、情報の質や量に、このぐらいは当然、という基準がある。それはメディアが形づくったものです」

インターネット以前、情報の信頼性、質と量は、情報源によって、取材によって、プロの記者によって、そして、その情報がおさまるパッケージであるメディアによって担保されていた。ゆえに情報は価値あるもので、議論がうまれる基礎ともなるし、人を説得しうるものだった。ところが、インターネット時代、情報がパッケージから解放され、情報の海をつくりだすと、その海のなかで、信頼性を担保するパッケージをもたない情報も生み出されるようになった。あるものは自由な表現、沈黙を破る声だった。しかしあるものは、情報としてはほとんど無価値なもの、情報に似た何か、だった。情報の偽物はなぜ生まれるのか?

「短期的な収益化、コンテンツづくりの省力化、理由はさまざまあるとおもいます。でもそれは、数字の問題です。メディアの本質は情報を、それが必要な人に届けることであって数を追うことではないとおもいませんか? 100万人が読んだけれど、誰にとってもほとんど価値がない情報は、100万人の時間を無駄に消費させるだけです」

それからぽつりと、「それに、数の勝負ならば、結局、資本の大きいものが勝つ」とつぶやく。安く大量に、効率よく。そんな理念を受け入れるのがメディアだとしたら、それで22世紀まで新聞がつづくだろうか? と、末松弥奈子は問う。ターゲットは小さくても、高いところに理想を掲げ、唯一無二の最高のものを生み出す。考え方はラグジュアリーブランドとおなじだ。

「自分の欲しい情報、興味のあることだけを届けてくれるインターネットがあるいま、英字新聞にかぎらず、新聞を買い、読む人は、パッケージにお金と時間を費やしている。自分とはちがう視点、それほど興味のない話題も掲載されているパッケージに。だから、新聞を読む時間を持つというのは、現代においては、とても贅沢なことだとおもうんです」

ジャパンタイムズはインターネット版もあるけれど、そちらであってもパッケージでとらえてほしいと末松はいう。ジャパンタイムズはコンテンツの切り売りをしていない。数、資本の多寡を問う競争にくわわらない、自立した在り方だ。そして、「こういうことは、もっといろいろな分野でできるのではないか?」といったあとに末松弥奈子はこう締めくくった。

「日本が元気になれば、いま日本にいない人、興味のない人も、日本のことを知りたがるでしょう。そのとき、もっともアクセスしやすい情報は、プロが労力を割いてつくって、信頼できるパッケージのなかにはいっている情報のはずです。ジャパンタイムズは、質に価値を置き、国外のひとが理解しやすい言葉で書かれる。このジャパンタイムズが、22世紀まで必要とされるメディアであるようにすること。それがわたしの使命です」

ジャパンタイムズは120年目をもって、勇敢な女性に導かれることとなった。

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