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漆器 山田平安堂 四代目当主 山田 健太に聞く

勝てる漆器

「人間国宝」の漆芸家、増村紀一郎氏が文字盤を監修したショパールの腕時計。蒔絵という日本の伝統技術とスイス時計製造技術の融合。時計は18Kホワイトゴールド製の超薄型モデル、L.U.C XP。機械式自動巻きムーブメント、L.U.Cキャリバー 96.17-Lを搭載する。文字盤には複数のデザインが存在

伝統工芸の現代性

しかし、「食器の業界自体が斜陽産業といえるのではないか」と山田健太は顔を引き締める。

「人を招いて、自宅で食事をする、という時代ではないから、特別な食器、というものが求められなくなっているんです。年末といえば、漆器屋は重箱が売れる稼ぎ時だけれど、いまはほとんど需要がない」

だからといって、重箱をやめるわけではないし、異業種とのコラボレーションなど、「売るための努力はつづけていく」。また、職人の育成についても、産地に任せるのではなく、業界をリードする企業が積極的にかかわる以外にない、と、若手を雇い入れている。
「だから、お金がどんどん出ていくんです」と笑いながらも、「僕はビジネスマンだから、売れないもの、途切れた技術については、競争力がなかった、と考えてあまり固執しない。伝統工芸だからってすべてが生き残る必要はないとおもっている。生き残る努力をして勝ち残った技術が生きる。勝てないもので勝負してもしょうがない」

であれば、マーケットで勝てる漆器を生み出してゆかなくてはならない。

読者はもしかしたら、ペンフォールズの「グランジ 2003」が山田平安堂のスペシャルパッケージに入っていたことを覚えているかもしれない。腕時計のセイコー「クレドール」やショパールのモデルにも、山田平安堂が文字盤を手がけているものがある。最近のヒット作は、デンマークに向けた琥珀に蒔絵を描いたアクセサリー、そして女性向けのチョーカー。店舗には、iPhoneケースやカフスボタンなども売られている。

ゴールドと漆が美しいコントラストをみせるチョーカーは山田平安堂の人気商品。色は朱と黒。漆が中央にくるものと、漆と金の境目が中央にくるものとで、4種類がある

「漆は塗料だからいろいろなジャンルと組みやすい」という。すでにある商品の価値に、漆がさらなる価値をくわえる。発想がブランド的なのは、いまやグローバルに事業を展開する強固なブランドイメージをもった企業こそが、競合だからだろう。

木の「めし椀」

ところで、そんな山田健太にも固執する伝統的な漆器がある。それが漆器の原点ともいうべき「めし椀」だ。漆器は日本独特の食器のようだ。というのも、日本にはテーブルがながらく根付かなかったから、床やちょっとした台に、食器をならべて食事をする伝統がある。テーブルがないから食器を手に持つ。汁や飯は熱い。陶磁器の器だとどうしても器まで熱くなって持ちにくい。それで木の器が普及した。

木の食器を使ってみてほしい。軽く、熱くない。しかも、漆器の椀に入った米はなんとも美しい。

「汁椀を使う人はいてもめし椀は100人にひとりも使っていないとおもう。日本人100人にひとりがめし椀を使うようになったら、漆器業界は完全に復活しますよ」

漆器は必ずしも高価なものばかりではない。価格的にも手に取りやすい山田平安堂のめし椀は、漆器入門にも向く。そんなことから生活が変わるかもしれない。

山田平安堂はめし椀、汁椀を数多くラインナップする。価格もデザインもさまざま。口の広いものがめし椀、やや狭いものが汁椀と分類される

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