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パリの日本人ソムリエ 中村豪くんのワインバー

国木田アコのパリ「酒中日記」

明治の文豪・国木田独歩のひ孫で、元女優が独歩の小説と同名のタイトルでつづるパリ便り。

11区のディーン・フジオカ

この頃の日本人は本当に凄いと思います。飄々と世界へ飛び立ち、けっこうクールに自分の夢を現実にしてしまう。パリの日本人も例外にあらず、日本人経営のオーナーシェフのレストランやパティシエ、チョコレート職人と、フランス料理の本場のここパリで、味にうるさいパリジャン相手に大人気です。

今回はそんなお店のひとつを紹介しましょう。

パリ11区にある「MARGO」です。北マレに近い11区は、若者達が集まるバーやビストロが軒並み並ぶ、ここ10年で大きな変化を遂げた地区のひとつです。

店内に入ると、レトロっぽいインテリアで、こじんまりとしていて、居心地がいい。照明もほんのりと薄暗く、蝋燭が綺麗で、なんとも落ち着く感じです。BGMもジャズと、大人っぽく、アンニュイで、ワインも進みそうです。バーのカウンターの止まり木には、常連のお客様が来ています。

カウンターの中には「MARGO」のソムリエでオーナーの中村豪さん。お若いので「豪くん」と呼びたくなるようなご主人。豪くんのことをたとえれば、ソムリエ界のディーン・フジオカでしょうか? 異国でたった一人で築いてきたキャリアがなんとなく、似ているような気します。

豪くんがフランスに来たのは5年前。フランス語もまるで喋れず、知人もまったくなし。志だけは高く、「パリで自分の店を出したい」という気持ちだけで、ここまで辿り着いてしまった。だから、この頃の日本人って本当に凄いって思ってしまうのです。

ただただ、楽しそうなことを

豪くん曰く、「ただただ、楽しそうなことを」やってきたそうです。それでやりきってしまった。必要なビザを揃え、フランス語の学校に1年間通ったりしながら、夢に向かっていった。

1年足らずである程度のフランス語をマスターした豪くんは、その後アルザス、リオンなどのワインの産地を巡り、「ただただ、楽しそうなことを」と思いながらボルドーのソムリエ学校に落ち着きます。そして1年後にソムリエの国家試験を受け、フランスのソムリエの資格を所得しました。

その後はボルドーのシャトーで葡萄作りの研修をしたり、星付きレストランに見習いに入ったりしながら、自分の舌と肌で感じて、夢の現実化に近づいていったのです。

開業する自分のお店の場所選びは、まずは9区と11区にマトを絞ったそうです。

9区は、この頃、ちょっとホットになっておりまして、ピガールの南側、south pigalleを略して「so-pi地区」なんて言葉も生まれたくらいに今、人気が沸騰しています。有機食材の高級食品店や小洒落たビストロ、流行に尖ったバーなど、食の激戦区となってきています。ピガールは歴史的にも歓楽街のせいか、ちょっと洗練された新宿のような空気があるかもしれません。

11区はマレ地区の北側にあるせいか、バーやビストロが立ち並ぶとはいえ、クールで落ち着いた雰囲気があります。

「MARGO」のようなお店が増えると、「フランス料理店でワインについて質問したいことがいっぱいある……」、そんなときに日本語でワインのことを聞けます。嬉しいかぎりです。

これから先も、味にうるさいパリジャンを納得させる、美味しいお料理とワインを追求していただきたいと思います。

MARGO
9 Rue Jean-Pierre Timbaud,
75011 Paris
tel. +33(0)1 43 38 52 19
営業時間 19:00~
定休日 月曜
https://www.facebook.com/margoandgo

この記事を書いた人

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KunikidaAko
東京都世田谷区下北沢生まれ、下北沢育ち。
幼稚園から中学までミッション系女子校に通う。
お茶の水文化学院美術科在学中に羽仁進監督の映画「午前中の時間割り」に出演。その後、若き母の急死に遭遇し、それを機にイギリス・ロンドンへ遊学の旅に出る。20年間のロンドン生活を終え、現在パリ在住。

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