プランナー 岡本光正の企画

キッチンから聖火台まで

1998 年の長野オリンピックの聖火台も、岡本氏がデザインに深くかかわった。CAFEZ の装飾は、その聖火台をデザインした菊竹清文氏によって、聖火台のデザインを引き継いでつくられている

環境を汚染したら美食はない

1992年、国連は、リオデジャネイロで国際地球サミットを開催した。ここで出された「リオ宣言」は、現在のサステイナビリティに関する取り組みの原点ともいえるもので、日本も、関連の取り組みを加速させる。エネルギーの企業である東京ガスには、もちろん、環境にまつわる企画への協力要請がきた。しかし岡本は、「ただお金だけ出すような、地に足のつかないPRはやりたくなかったから、ドイツの環境映像祭「エコメディア」を見に行くことにしました。ドイツ料理も食べたかったし」といたずらっぽく笑う。ドイツでは、子どもたちが、当時問題視されていた酸性雨をあつかった映像作品を見て、どう解決できるか、ディスカッションしていた。岡本はこれを見て、アジアでもこれをやろう、と「EARTH VISION 地球環境映像祭」という企画を立案。この、アジア初の国際環境映像祭も、形をかえながらも今年も開催された。

自らの食べ歩きの軌跡を簡潔な文章でまとめた著作『東京 連れて行かれて嬉しい店』。2018 年2 月に開催されたEARTH VISION 多摩では、ジュゴン生息地、辺野古をあつかった映像と、福島をあつかった映像作品がメインとなった

協賛金の代わりに納品された長野オリンピックの聖火台。その制作の舞台裏を綴った、岡本氏の著書、『聖火台のひ・み・つ』。現代の篝火をコンセプトに、チタンと銅、高度な燃焼技術にささえられ、少量のガスでも、消えずに燃え盛る、世界最高の炎のモニュメントを目指した聖火台は、最終聖火ランナー 伊藤みどりさんも巻き込んで完成した

「環境映像祭にしても、料理文化の普及にしても、お金がかかるのは事実だから、それをペイしない、と企業は切り捨ててしまうこともあります。でも、フランス料理は料理・サービス・ワインと格付けがあって、だから、評価もされるし、そのときどきの自分の都合で、チョイスできる自由もあるでしょう? それは世界で影響力ある料理文化でありつづけている理由でもある。それに……」

岡本の話は近未来への提言を含む。

「環境を汚染したり、安全性を後まわしにしたら美食はない。複雑化した流通のなかで、相手の顔がみえなくなって、大量に作って大量に売れれば何でもいいと、金と規模を優先した過去は反省すべきで、本当の意味で食物と自然の原点に戻って、地域の食材を大切にする時代になってほしいと思います。今の日本は相手の顔が見える食環境になってきています。自分がプランニングしているゴールドシェフクラブ(http://goldchefclub.com)もそういう世の中にしていきたいという意図があって、日本各地の食材を世界にPRする活動を展開しています。」

日本にも世界にも美味しいものはまだまだたくさんある。岡本光正は、この世界を食べ飽きていない。

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