ピアニスト Shioriのワイン

ワインとピアノのマリアージュ

日本でワインを考える

フランス滞在を終えて、帰国すると、音楽家として生きるなら、職業としてやらなくてはいけない、という師の教えにしたがって、職業演奏家としてのキャリアをスタートした。そして、フランス大使公邸でのディナーで、ワインと再会した。

そのとき、Shioriさんはゲストであり、かつ演奏者でもあった。夕食では、ワインについての話があり、料理についての話があり、それをきっかけとしてのテーブルでの会話があった。それまで、音楽の世界にどっぷりとつかっていたShioriさんは、そこで、食事とワインがマリアージュするように、同じテーブルについた人たちが専門分野を越えて話し合う場があることが、文化にとって貴重で、ワインはそういう場をつくるのだ、とワインを意識化した。

もし、音楽ばかりを専門的につづけていれば、それは、音楽好きたちのあいだでの趣味でおわってしまうかもしれない。それでは、音楽に出会わない人はずっと音楽の楽しさに出会えない。多くの人に、音楽を伝えたい。そのためには、単なるピアニストと聴衆という関係を越えてのコミュニケーションのきっかけが欲しい。

Shioriさんが音楽との組み合わせにワインを選んだのは、当然の帰結だったのかもしれない。ワインを結節点にして、音楽と他の文化が繋がっていくのだ。

音楽とワインのマリアージュ

とはいえ、料理とワインであれば、すでにいろいろな方法論があるけれど、音楽とワインはどう合わせるのか?

「ワインを表現するときに使われるアロマや味の表現と、「あまい」「やわらかい」「感情豊かに」「火のように」という演奏で使われる表現とは近いものがあるとおもいます。それをきっかけとして、まずワインのイメージと近い作曲家を選び、その作曲家の曲のなかから、よりワインに近い一曲を選んでいきます」

今回、Shioriさんは単一品種のワイン4種類に曲をあわせてくれた(動画とShioriさんのコメントはこちらから)。そのうちの一曲、ソーヴィニヨン・ブランと合わせたモーツアルトであれば、シンプルにきれいな音楽であることが前提。しかし、モーツアルトの曲には、ゲーテが言うように、悪魔的な要素、人を恐怖させるような迫力がある。そのさじ加減が、スパイス的に利いてきて、ワインとのマリアージュが完成する。

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コンチャ・イ・トロ カッシェロ・デル・ディアブロ クール・エディション ソーヴィニヨン・ブラン 2017に合わせたのが、モーツァルト ピアノソナタ 作品545より第1楽章

「醸造家の人生、ブドウが育った年、ワインを造るときにどんな物語があったのか。そういったことと、作曲家の人生、生きた時代、その時に音楽は誰に向けたものだったのか、どんなふうに聞かれていたか、といったことを組み合わせていくこともできるとおもっています」

と、これから先の可能性を語る。

音楽は時間的な芸術だ。楽曲の生まれた時間、演奏する人がその曲を表現できるようになるまでの練習の時間、そして、実際の演奏の時間。ワインもまた、土壌があり、樹が育ち、ブドウがなり、ワインへと醸造され、熟成し、一本のボトルのなかには、時間が封じ込められている。だからそれは音楽的なものなのかもしれない。

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