ニッコウキスゲをお目当てに

7月25日月曜日、「夏が来れば思い出す〜」の尾瀬に行ってきました。

日曜日の深夜2時に東京を出発、関越自動車を北に向かって約150km、沼田インターチェンジで降りて一般道を走ることしばし、週末はマイカー規制で通れない尾瀬国立公園内の鳩待峠の駐車場に到着したのは5時ちょっと前でした。交通規制があると駐車できませんのでご注意ください。

尾瀬の日の出の時間は4時43分でした。歩き始めた時、周囲はすでに明るくなっていました。ハイキング・ルートには湿地を守るためにおなじみの板が敷いてあって、その板から足をおろすことは三脚の足であってもまかりならんのでした。下ること1時間。鬱蒼としたジャングルのような森の中に整備された板の道はジュラシック・パークのような趣がありました。

ウグイスの鳴き声を聞きながら1時間ほど歩くと、尾瀬ヶ原に出ました。ホーホケキョ。平日の早朝のことで、私たちのグループ以外、人っ子ひとりいません。標高1500メートルの高原なので空気はひんやりしています。ガスが立ち込めていて、背後の至仏山はかすかに見えましたが、前方にあるはずの燧(ひうち)ケ岳は見えません。

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尾瀬の湿原は数千年かけて積み重なった泥炭の上に成り立っている。

もっとも、なんの下調べもしていないので、この時点ではだからどうだというわけではなくて、淡々と歩くのみです。

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木道はもともとぬかるんだ湿原を歩きやすくするためだったけれど、現在は湿原が入山者に踏みつけられるのを防ぐことを目的としている。

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前方に見えるのが燧ケ岳。東北で一番高い山。

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牛首分岐の標識。

牛首分岐を左に行き、どんどん歩いて行きましたが、目当てのニッコウキスゲはどこにも咲いていません。鹿に全部食べられてしまった、と途中ですれ違ったひとが教えてくれました。本当でしょうか? 今年は春が早かったので、もう終わってしまったというひともいました。本来ならいまの季節、湿原が一面オレンジになっていたはずで、とても残念です。もっともニッコウキスゲのなんたるかを、この時点では知らないので、想像力が働かず、そう残念とも思わなかったのでした。

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一輪だけ咲いていたニッコウキスゲ。7月上旬から8月上旬が見頃なはずの尾瀬を代表する花。

ヨッピ吊橋を渡り、東電小屋の前のベンチで一休みし、近くにある公衆トイレに行きました。トイレの中に募金箱が置いてありました。維持管理費用の一部を利用者が負担してください、ということで100円が目安のようでした。財布を開いてみると、500円玉しかありませんでした。なんかいいことありますように、とお祈りしながら500円玉入れました。

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東電尾瀬橋。ここから三条ノ滝まで1時間30分。

そこから三条ノ滝を目指しました。元湯山荘温泉小屋の先ですれ違った中学生の団体の子が、「ここから先は道がぬかるんでますから気をつけて」と教えてくれました。湿原ではないため、板がありません。足をとられないように気をつけながら歩くこと1時間ほどで、水のゴーゴー流れる音が聞こえはじめました。

展望台から見る三条ノ滝は豪快で、しばし見とれました。落差100メートルで流れ落ちる水のさまをiPhoneの録画機能のスローモーションで撮りました。スローモーションで再生したらよりダイナミックに見えるのではないか。再生してみたら本物の迫力にはぜんぜんおよびませんでした。これでも水量が少ないそうです。今年は雪が少なかったため、雪解け水もまた例年におよばないからだそうです。

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日本の滝100選にも選ばれている三条ノ滝。

スタートから三条ノ滝まで4時間ほどかかりました。この時点で9時を回っていました。三条ノ滝から同じルートで戻りました。今度は登りなので、息が切れました。太陽も現れて、汗が流れ落ちます。沼田インターを降りてすぐのコンビニで買った1ℓの水も飲んでしまいました。

山小屋が6軒ある見晴というところに出て、昼メシにすることにしました。誘惑に負けて、生ビールを飲みました。誘惑に負けてサイコーでした。今年初めての冷やし中華を食べました。冷やし中華というと、昔ラジオで聞いたロイ・ジェームズの小話を思い出します。すいません、冷やし中華ください。あ、冷やし中か。

見晴にある別の山小屋でコーヒーを飲んでから帰路につきました。行きには咲いていなかった小さくて可憐な白い花が沼のなかで咲いていました。小さな蓮の花のようでした。羊の時、午後2時に咲くのでヒツジグサと呼ばれる、ということはもちろんあとから知りました。

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午前中は開いていなかったヒツジグザ。植物も生きているんですね。

尾瀬ヶ原の北の端っこの尾瀬山の鼻ビジターセンターあたりで空模様がおかしくなり、雨がぽつりぽつり降ってきました。ここから駐車場までゆるやかな登りになります。幸い森の木々が雨を遮ってくれます。ひたすら黙々と歩きました。

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木道がところどころ濡れているのは雨です。

登りの階段が続いていて、だんだん左足のモモの裏側が痛くなってきました。ハァハァゼェゼェ息を切らしながら、ずーっと歩いていたし、雨量が多くなってきたので、大きな木の下で雨宿りすることにしました。そこには濡れていないベンチがあったのです。

リュックを下ろしてカッパを探していると、幼稚園の年長さんぐらいの男の子と年少ぐらいの女の子を連れた女性が来て、ふたりをベンチに座らせ、お腹が空いたという男の子におにぎりをあげました。ふたりともポンチョを着ていました。女の子が男の子の食べる、桜色のおにぎりをじーっと見ていたので、コンビニで買ったおまんじゅうを女の子にあげようと思って話しかけました。おかあさんとおぼしき女性が、食べる物、いっぱい持ってますから、といって去って行きました。不審者に思われたのかもしれません。

リュックの下の方に入れてしまったカッパを出すのに手間取っていると、さっきの親子連れが戻ってきました。男の子が、お腹が痛いと言い出したみたいでした。「だから無理しないでっていったでしょ」と、おかあさんがやさしく抱きしめるように男の子に言いました。それからおかあさんは携帯を取り出して、山荘にこの日の予約のキャンセルを伝えました。

せっかく来たのになぁ。おかあさんと尾瀬に行ったのに、おにいちゃんのお腹が痛くなっちゃって引き返した、ということをあの兄妹は夏が来れば思い出すでしょうか。

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はるかな尾瀬。

カッパを来て歩き出すと、駐車場まですぐでした。雨はすっかりあがりました。クルマのところに行くと、駐車場のヒゲを生やした山男っぽいおじさんが駐車料金2500円の集金に来ました。どこまで行ったの? と聞かれたので、三条ノ滝まで行って来た、と答えると、それはえらい、と褒めてくれました。途中1時間、昼メシ休憩がありましたが、10時間20分、24km歩いていました。えらいぞ、おれ。もし20km以上も歩くと知っていたら、行かなかったでしょう。知らないでよかったことも世の中にはあります。

温泉に入って行くなら、沼田インター近くの「道の駅 白沢」にある「望郷の湯」がいいですよ、そう駐車場のおじさんが親切に教えてくれました。鳩待峠にある山荘で割引券をもらうと、「望郷の湯」の温泉と併設したレストランでの食事がセットで1000円になる、という貴重な情報も教えてもらったのですが、私たちには駐車場から山荘まで、わずか100メートルほどの登り坂を歩いていく気力が残っていませんでした。

「望郷の湯」は沼田を一望する河岸段丘の上にありました。河岸段丘といえば、ブラタモリでやっていたなぁ。併設されているレストランで、奥利根もち豚をつかった和風おろしカツ定食を食べました。沼田が「とんかつ街道」であることをこの日、初めて知りました。

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こちらの定食は1300円でした。望郷の湯は、大人2時間、560円です。割引券もらっておけばよかった。後悔はいつだって先に立たずです。

ワインとはなんの関係もありませんでした。Wine!? What? でしたけれども、ささやかな旅の思い出を残しておきたいと思った次第です。尾瀬は、おっさん3人ぢゃないほうがオススメです。巨大な植物園みたいなところなので、花々に関心のある女子のほうがきっと夢中になれます。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
9月号(通巻18号)では、白ワインに注目! そもそも白ワインって? 三大品種シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングの基礎から、いまどき大討論会、石田博ソムリエによるペアリング提案まで、この夏、飲みたい白ワインを総ざらい。
そして、夏から秋にかけてのワイン旅も提案。ポルトガル現地取材、急成長中の北海道ワイナリーのいまとWINE-WHAT!?ならではのツアー情報、ワインを堪能できる宿「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」へは、ベントレーで訪れ、カリフォルニアでは、ケンゾー エステイトに行ってきました。