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「マネーの虎」と呼ばれた男 南原竜樹のしくじり話 第3話

「rinato」ブランドをとられてビルを建てそこねたの巻

コンセプトも商品もスタッフもよかった

2005年のMGローバーの破綻ですっからかんになり、銀座の某コンサルタント会社の事務所に間借りしていた2010年頃、化粧品の製造・販売に乗り出していたことは、ナンバラさんのしくじりのなかでも知る人はそれほど多くない。

ある日、昔世話になったIさんという元電通の人が化粧品のオリジナル商品をもってきた。それは「rinato(リナト)」というブランドで、ヘア・トリートメントとか化粧水とか、数種類ラインナップが揃っていた。化粧品なんてのは原価率1割で、うまくいくとビルが建つ、なんて話を教えてもらった。化粧品とは、幻想をいかに売るか、という商品なのだ。

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とはいえ、「rinato」は天然モノにこだわって、原料にいいものを使っていた。なにしろ原価は27%ぐらいあった。「ナチュラルで身体にいい」というコンセプトで、シリコンを使っていないシャンプーとか、環境のことも考えてマジメにつくっていて、実際すごく評判がよかった。女性にあげると、「次は買います」といってもらえた。サンゴ由来の成分で、ヘッド・クレンジングみたいな感じで、毛根がしっかりしてくる、なんてこともいわれていた。

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ブランドのコンセプトもよかったし、商品もよかった。スタッフも優秀なひとたちが揃っていてよかった。ただ、資金が回っていなかった。Iさんが再び僕の前に現れ、資金繰りで困っているから助けてほしい、といってきたとき、即座にオーケーした。「rinato」を製造・販売している有限会社の保証人になり、運転資金を投入して、株も買った。「rinato」ブランドの知名度も売り上げもだんだん上がってきて、1日200万ぐらい入ってくることもあった。

化粧品は、ビルが建つ。

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代官山にあった「rinato]の店舗。地下1階にエステ、1階にレストラン、2階に託児所が設けてあった。

うまくいきそうな気配が徐々に僕のまわりに漂い始めた。しくじりはPR会社との契約書だった。いったい、だれがこんな契約をしたのか。Iさんである。僕にいわせれば、IさんはPR会社にだまされたのだ。支払いが1回でも遅れたら、ブランドの所有権をそのPR会社に譲る、という一条が「rinato」の会社とそのPR会社のあいだで交わされた契約書に入っていて、資金繰りに困った際、支払いが遅れてしまったのだ。

こんなの、通常はありえない契約だけど、弁護士に聞いたら裁判でイチコロで負けるといわれた。

結局、「rinato」ブランドはPR会社のものになってしまった。「俺のモノだ。俺がやる」と言って。でも、化粧品の開発・製造にはお金がいることもあって、結局やりきれなかった。せっかく育てたブランドが消えてなくなり、1億5000万円の投資がパーになった。

その契約書さえ出てこなければ、いまごろナンバラさんは大金持ちになっていた・・・。Iさん本人の弁によると、そんな一条が入っていることにまったく気づかなかったという。それでイチコロでした。

【しくじり南原社長の金言】
契約書は必ず全部読むこと。

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南原竜樹
南原竜樹
名古屋〜東京〜沖縄をめまぐるしく移動しながら、いくつものプロジェクトを同時進行させる超人ビジネスマン。「冷徹の虎」の異名をもつ。最終目標は世界制覇だ! 

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