バーボン事始め

ケンタッキーの魂に酔いしれる。「ワイルドターキー ケンタッキースピリット」新発売!

バーボンがブームらしい。日本でのバーボン販売数量は、ここ10年で倍増しているのだそうだ。なぜ今バーボンなのか、その背景を探ってみた。
ワイルドターキー 

今、再びのバーボンブーム

その昔、1990年頃だったろうか、バーボンが流行ったことがある。そのときにブームを牽引したのは男たちだ。ワイルドなイメージのバーボンは、男らしさの証だった。だから男たちは、アルコール度数が強くても割ったり薄めたりせず、ストレートやオンザロックで飲んだ。しかも、スコッチなどに比べて安かったのも、バーボン消費が増えた大きな要因の一つだったと思う。

現在のブームは、当時のブームのリバイバルではない。バーボンに対するイメージも飲み方も違う。ジム・ビームの広告キャラクターは、女性人気が高いタレントのローラだ。そう、女性も今回のブームの立役者。バーボンは、都会的な洗練された酒にイメージチェンジしているのだ。そして、飲み方はハイボールやコーラ割りなどのカクテル。しかも、居酒屋などで食事と一緒に楽しむ。

こんな飲み方は、第一次ブームでバーボンを飲んでいたオヤジたちには考えられないことかもしれない。しかし、実際飲んでみると、バーボンカクテルは、料理との相性はいい。特に肉料理とはよく合う。

昔、さまざまな種類のウイスキーを用意して、飲み仲間たちとハイボールのベースにするウイスキーは何がうまいかを研究したことがある。その時、全員がうまいと言ったのがバーボン。その時用意したバーボンは、メイカーズマークとワイルドターキーだったが、どちらも、今や定番となったサントリー「角」や「ブラックニッカ」のハイボールよりも、呑んべえたちの間では評判が良かった。

バーボンならではの強い香りやコクが、ソーダに負けずに、しっかり味わえるところが評価されていたように思う。ちなみに、レモンよりライムやオレンジを絞ったバーボンハイボールの人気が高かった。

そもそも、バーボンとは?

バーボンとは、ウイスキーの一種。主にトウモロコシを主原料にしている。アメリカのケンタッキー州を中心に生産されているので、アメリカン・ウイスキーやケンタッキー・ウイスキーなどと呼ばれることもある。

モルトウイスキーのモルトとは、大麦麦芽のこと。ウイスキーの原料は、大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシなど実はさまざまだ。それらを混ぜ合わせて造ることも多い。バーボンの多くもそうで、トウモロコシを51%以上使うことがバーボンを名乗ることができる条件の一つだったりする。

バーボンがスコッチなど他のウイスキーと違うことの一つに樽がある。スコッチは一度使った古樽を使うのに対し、バーボンは内側をバーナーで焦がした新品の樽を使う。新樽だから、樽のエキスを吸収して、カラメルのような甘さをダイレクトに感じることができる。これがバーボンならではの旨味を造る。この旨味が欲しくて、実は古樽としてバーボン樽を使って造るスコッチも多い。

バーボンの歴史は18世紀にまでさかのぼるが、禁酒法でほとんどの蒸留所は廃業してしまうことになる。その後はカナディアンウイスキーがアメリカを席巻するのだが、その軽い飲み口に習って、度数を低くするバーボンも増えたという。

しかし、禁酒法以前の伝統的な造り方を頑なに守った蔵もあった。有名な人気ブランドの一つ、ワイルドターキーも禁酒法後の設立だが、昔ながらの造り方にこだわった。50.5度という高いアルコール度数が、ワイルドターキーの代名詞にもなった。

ワイルドターキーという伝説

ワイルドターキーは、ジミー・ラッセルとエディー・ラッセルという親子で、マスターディスティラー(蒸留責任者)を勤めている。時代に合わせて味を変えたり、造りを変えたりすることをしない頑固さで有名だ。60年以上のキャリアを持ち、いまだに現役のジミーは、バーボン業界の生きるレジェンドだ。

ジミーは、2000年のケンタッキー・バーボン殿堂発足時、初代殿堂入りの一人。そして息子のジミーも2010年に殿堂入りを果たしている。原料となるトウモロコシは、ケンタッキー州とインディアナ平野、大麦はモンタナ州、ライ麦はサウスダコタ州とノースダコタ州で収穫されたものだけを使用。これも、昔から全く変わっていない。もちろん、遺伝子組換えなどの原料は一切使わない。仕込み水には、鉄分やミネラルを含まないライムストーンウォーターを、地下85mから汲み上げて使用している。

ラッセル親子のこだわりと頑固さは、その存在と同様にバーボン業界の伝説だ。きつくても、癖が強くても、それがワイルドターキーなのだ、と時代に妥協することは決してしない。

現在、日本で売られているワイルドターキーの「8年」と「13年」という商品、実は他の国では買えない。プレミアム性の高いものを好むという日本市場の特性を考え、日本向けに作られた商品なのだ。特に13年は、原料そのものも希少でお値打ちだという。日本に住むバーボン好きは幸せだ。

魂という名の新商品

さて、そのワイルドターキーから、この春(3月下旬頃)、新商品が出るという。その名も「ワイルドターキー ケンタッキースピリット」。ケンタッキーの魂と名付けたこの商品は、バーボンでは珍しいシングルバレル。

ケンタッキースピリット

 

8.5年から9.5年熟成した樽の中から、ラッセル親子がセレクトしたもの。瓶詰めした日付、貯蔵所、樽ナンバーが手書きで各ボトルに記載されているという。

伝説の親子ディスティラーが選んだシングルバレル、一足早く試飲してきた。香りは、芳醇で複雑。バーボンらしいバニラのような甘さを感じる。口当たりは、熟成年数が長いせいだろう、コクはあるがまろやか。余韻もしっかりと残る。まさにプレミアムバーボン。これはうまい。

「容量750ml、アルコール度数50.5度、価格1万円程度を想定(未定)」で販売予定だそうだ。輸入元は株式会社明治屋。

ちなみに、デイリーワインを高級ワインのような味に変える裏技として、ワインにバーボンをスプーン一杯ほど入れるという方法が、巷で語られていることご存知だろうか? これ、赤ワインが対象だが、確かに、高級ワインによくある木樽熟成のようなバニラ香が付加されるので、ちょっと騙される。ワイン業界の人たちには怒られそうだが、買ったワインの味にしっくりこない時は試してみるといいかもしれない。そんなときには、香りの芳醇な「ワイルドターキー ケンタッキースピリット」はかなり良い仕事をしそうだ。

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