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ビオディナミの大ファンになりました

国木田アコの酒中日記1 

 

文豪・国木田独歩のひ孫にして、パリ在住20年の元女優がワインとフツーの暮らしをつづるエッセイ第1回。自然派ワインのような余韻をお楽しみください。

いつもワインと一緒でした

パリに住みついてから、20年あまり。私の人生とワインは切っても切れない間柄です。

「シャトーラトゥール」「シャトーマーゴ」「エシェゾー」「ヴーヴ・クリコ」「ドン ペリニヨン」「シャンベルタン」「ギャメ」……高価な物も安い物も、人生に浮き沈みがあるように、楽しい時も悲しい時も、幸福な時も沈んでいる時も、いつもワインと一緒でした。

20世紀に入ってから、ワイン造りはどんどん変化してきました。どちらかというと悪い方向に。農薬や殺虫剤、人工酵母、化学肥料などを使い、利益のための大量生産化を進めてきたのです。

ところが、ここのところ、フランスでは昔ながらのワイン造りに戻ろうとする流れが、密かに広がってきつつあります。

例えば、今まであった従来のシャンペンバーが、いつのまにかbiodynamicのワインを置く酒屋さんにオーナーチェンジしていたり、いろいろなところでbiodynamicという言葉を耳にするようになってきました。

biologyとbiodynamic

ここではまず、この2つの違いを私なりに説明します。

biologyとは、ワイン造りの際に、できるだけ機械も化学物質も使用しない、ブドウの手摘みをし、農薬、化学肥料なしで、酵母も自然酵母を使い、色素抽出なしのワイン製法のこと。EUでは「エコセール(Eccocert)」、フランスでは「カリテーフランス(Qualite-France)などの認証団体が規定に基づきビオロジー認証しています。

そして、biodynamic(英語ではバイオダイナミック)。

1924年に私の大好きな人智学、神智学者のルドルフ・シュタイナーが提唱したもので、ビオロジー農法に、天体運行と占星術をプラスした農法なのです。

不思議ですか? 宇宙人みたいに聞こえますか?

でも、人間は地球人という宇宙人です。私たちも確実に宇宙の法則の中で息をし、生活しているのです。

Biodynamic農法では、太陽、月、惑星と地球の位置関係が、土壌や土の中の生命体や成分、気候などに与える影響を非常に重視しています。種まき、苗植え、耕運、栄養になる調合材の準備や設肥、収穫の時期を天体の動きに合わせ、選択して行なっていきます。

植物の健康や栄養ばかりではなく、地球の土壌のバランスも最適に保ちつつ、かつ効果的な収穫をあげるために、 肥料は天然のハーブや家畜、鉱物を使用します。時には水晶の粉まで使用して宇宙エネルギーを土壌に誘い込んだりするのです。

私はこういうスピリチュアルなことが現実に活用されていることが大好きです。

L’Etiquetteというワイン店

レチケットからのセーヌの眺め。

オーナーのエーヴルさん。

All you need is
HP:L’Etiquetteparis.com

観光で名高いノートルダム寺院のあるサンルイ島に、空色のペンキで塗られたドアの、間口の狭い可愛い店構えのこの店はbiodynamic専門のワインショップです。

この店、奥行きがかなりあり、両脇の棚にはフランスの各地から来たワインがぎっしりと並んでいます。

実のところ、私の先入観ではbioのワインは不味いという印象があったのですが、その考えはここに出合って大逆転しました。この店の大ファンになってしまいました。自然が織りなすアロームの新鮮な感じ。口中にほわっと広がるブーケ、なんとも優しいまろやかな口当たり。

従来のワインには感じられるとげとげしい、攻撃的なものはありません(もっとも1瓶100ユーロ、200ユーロのワインは別ですが……)。

このbiodynamicのワイン、スイスイと口当たりがよく、おつまみなしでも喉元を過ぎていくのが、ちょっとくせ者です。飲み過ぎに危ないワインたちです。

なのに、二日酔いしないと、ここの常連のお客さまから一言ありました。「ワインを飲んで頭痛を起こしたりさせる成分は、殺虫剤、化学肥料、防腐剤などの添加物」だということがこれでよくわかります。

だけど、「1人で2本飲んだら、そりゃあ、解んないよ」と言っているのはオーナーのエーヴルさん。

ここでは、ワインテイスティングもしています。表の壁にかけられた黒板には、「英語でのワインテイスティングをしています。フランス語のなまりですが、ごめんなさい」と書いてありました。

この記事を書いた人

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KunikidaAko
東京都世田谷区下北沢生まれ、下北沢育ち。
幼稚園から中学までミッション系女子校に通う。
お茶の水文化学院美術科在学中に羽仁進監督の映画「午前中の時間割り」に出演。その後、若き母の急死に遭遇し、それを機にイギリス・ロンドンへ遊学の旅に出る。20年間のロンドン生活を終え、現在パリ在住。

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