ワインは重い
ワインを抱えて、途方に暮れた経験はないだろうか? ぼくはある。親切にも用意された段ボール箱。その中にはボトルにはいったワインがぎっしり12本。これもって歩けというのか? ほかに荷物もあるのに……
ワインを造る人は、基本的に人がいい。WINE-WHAT!?もワイン雑誌。その編集者がライターやらカメラマンやらをともなって自分のワイナリーにやってきた、などとなると、コレも飲んでみろ、アレも飲んでみろ、となるのは理の当然。たとえば、カリフォルニアに行った時なんかはそうだった。
「そうだ、あのワインも飲んでくれ!」「いやいや、もうこれだけ飲んで、さらに飲んでもなんだかわかりませんよ! もったいないから次にしましょう。」「次っていつだ? 明日、帰るっていってたじゃないか!」「そ、そうでした!」「よし、これは持って帰って飲んでくれ!」
挙句のはてには、ついついお土産にもワインを買ってしまったり。そして帰りに困るのである。ワインは重い。そしてボトルは割れる可能性をはらんでいる。
ここで白状いたしますと、カリフォルニアのワイナリー取材でいただきましたワイン、いくつか飲みきれず、現地の方に差し上げてきてしまいました。ジョエルさん、ごめんなさい。そしていまでも思い出すのです。あのとき置いてきてしまったワインの味をーーおいしかったなぁ
ここでいくつか実例をだそう。通常の形をしたワインボトルは大体1.3kg程度ある。ハーフやマグナムなどは今回無視して、通常サイズで考えるけれど、軽量なものでもワインボトルは1kgは越える。瓶内の圧力の関係から、強度を要求されるスパークリングともなれば、軽量ボトルをうたうシャンパーニュ「マム グラン コルドン」でも、編集部計量で1.58kg。イタリアはヴェネト州からやってくるボトルにもイタリアン職人芸がひかるボッテガ社の「ボッテガ ゴールド」は、およそ1.65kg(編集部計量)で、これはしかし、特別重たいわけでもなんでもなく、普通のスパークリングワインの重量なのだ。
たしかに、頑丈なワイン専用のキャリーケースはある。それは知っている。しかしそれらはハードで、かさばり、プロテクションは優秀かもしれないけれど、ワインじゃないものを入れづらかったりする。人は旅する時、ワインだけを運ぶにあらず。