モエ・エ・シャンドンのヴィンテージとノン・ヴィンテージ

モエ・エ・シャンドン ワイン クオリティ マネージャー アミン・ガネム氏に聞く

モエ・エ・シャンドンにおけるヴィンテージとノン・ヴィンテージ。ワンメーカーが語るその違いは「ソロ」と「オーケストラ」。『グラン ヴィンテージ』の新作からその理由を紐解いていこう。

モエ・エ・シャンドン
ワイン クオリティ マネージャー

アミン・ガネム

1981年、レバノン ベイルート生まれ。ワインに魅せられ、ベイルートのレバノン大学農学部でエンジニアリングの学位を取得後、フランスのランス・シャンパーニュ=アルデンヌ大学でワインとシャンパンの醸造学、品質工学、マネージメント、法律、マーケティングを修める。クオリティー マネジメントのキャリアを積み、2016年9月からワイン クオリティ マネージャーとしてモエ・エ・シャンドンの醸造最高責任者ブノワ・ゴエズ率いる醸造チームの一員に。

奔放な挑戦から生まれる変わらない価値

「夏の終わり。平原の古くて大きな家のテラス。そこから静かな風の中で揺れる黄金のすすきの穂たちを眺める。静謐で豊かな時間。座っているのは使い込んでいる革の心地よい椅子……。そんな光景が広がるようです」

モエ・エ・シャンドンの醸造最高責任者であるブノワ・ゴエズが率いる10人の精鋭醸造家チームの一人であるアミン・ガネムさんは少しの時間、その目を閉じた後、再び黄金に満たされたグラスを愛おしそうに眺めた。

『グラン ヴィンテージ 2009』、確かに感じたのは、収穫されたばかりの穀物のような香ばしいニュアンス、完熟した趣、ピノ・ノワールの落ち着いた大人の広がり。前のヴィンテージである2008年のシャルドネの爽快感、溌剌さと優美さのインテンスとは大きく変わった世界が広がる。

グラン ヴィンテージは「チャレンジ」だとアミンさんは言う。「ブノワ自身のカリスマの表現であり、果敢なソロワークともいえます」。もちろんそのソロワークで輝けるのはブドウの育成、選定から瓶詰め、世界へのディストリビュートまでを各パートで支える醸造家たちの働きがあってこそだ。

一方、モエ・エ・シャンドンのノン・ヴィンテージ『モエ アンぺリアル』は、その味、香り、色、泡はもちろん、哲学、歴史そのものを世界中、何時も変わらず提供し続けなければならない。ここでのワインメーカーたちの役割、姿勢は全く違うものとなるという。

7年以上の熟成期間を経て、2018年春からリリースされる新作『グラン ヴィンテージ 2009』(左)、『グラン ヴィンテージ ロゼ 2009』(右)。天候に恵まれ、ピノ・ノワールの豊かな表現、シャルドネの完熟が特徴となる2009年。包み込むような柔らかさから、力強さが静かに、豊かに広がり、甘美な余韻へと続く

モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ 2009
品種:ピノ・ノワール50%、シャルドネ36%、ムニエ14%

ドザージュ:5g/l

希望小売価格:8,950円

モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ ロゼ 2009
品種:ピノ・ノワール59%(うち19%が赤ワイン)、シャルドネ30%、ムニエ11%

ドザージュ:5g/l

希望小売価格:10,150円

「一言でいえば重圧ですね(笑)。チーム全員がシリアスなブラインド・テイスティングを何度も繰り返し、変わらない正解を目指していく。グラン ヴィンテージがソロだとすればこちらはオーケストラ」

以前、ブノワさんにインタビューした際に「ノン・ヴィンテージもヴィンテージもチームとしての力が必要。一緒にチャレンジし、一緒にリスクを覚悟する」と語っていたことを伝えると「そのために彼はヴィジョンも皆で共有することを望みます。このシャンパーニュからイメージすることを伝えあい、作り上げていくのです。特にグラン ヴィンテージは毎回違うヴィジョン。自由な発想を試されるグラン ヴィンテージにおけるチャレンジは私も楽しみです」

2009年の夏の終わりの風景、2008年の春から初夏への溌剌、2002年のカリブの孤島、2000年のブルターニュの海岸の朝……毎年変わる風景もグラン ヴィンテージの魅力だ。

『グラン ヴィンテージ ロゼ 2009』がグラスに注がれる。テーブルに運ばれた瞬間に広がる熟成し、華やかな魅力を発散する芳醇な赤い果実と花束。しかしグラスを傾けじっくりとテイスティングすると一転、かわいらしい世界へ。

「マシュマロやコットンキャンディのタッチ。子供たちが庭で心底楽しんでいる様子を眺めながら。そんな楽しい休日の午後にようこそ!(笑)」

変わらない価値と、変えていくという意志。

「伝統を作っていくためには新しいチャレンジが必要。現在、我々のチームには20年を超えるキャリアを持つ人から20代の若者、そしてフランス人だけではなくアメリカ人もいる。その多様な一人ひとりが、次の世代へのメッセンジャーでなければいけないのです」

ヴィンテージでの挑戦は、そのままノン・ヴィンテージの価値へと統合される。変化を恐れない挑戦があって守られていく。モエ・エ・シャンドンの伝統はその積み重ねなのだ。


お問い合わせ先
MHD モエ ヘネシー ディアジオ
URL|https://moet.jp/

電話|03-5217-9906

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