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    ワイン会でも大活躍するピノ・ムニエの赤ワイン

オーストラリア ワインの旅 その6
ワイン会でも大活躍するピノ・ムニエの赤ワイン

首都キャンベラ近郊で見つけた感動ワイン その1

持ち寄りワイン会で喜ばれるワインといえば、ブルゴーニュの特級ワインをはじめとする普段はなかなか飲めない高級ワインだが、「そんな財力もないよ!」という人でも一目あびる方法がある!

空と大地ばかりの場所に、ポツンとワイナリーの看板が現れる

ワインラヴァーよ、キャンベラを目指せ

持ち寄りワイン会で一目あびる方法。それはマイナー産地の、ちょっと珍しくておいしいワインを持っていくことだ。そういうワインは質に比べて安価であることが多い。

オーストラリアに有名ワイン産地は数あれど、キャンベラ地区の名が上がることはまずないだろう。実際、日本の友人に「いまキャンベラでワイナリー巡り中」とLINEしたら、「キャンベラでワインなんて作っているの?」と驚かれたくらいだ。訪れてみたら、掘り出しものが豊富な楽しいエリアだった。

ハンター・ヴァレーからは、18人を乗せた小型旅客機「ペリカンエアー」で1時間強。キャンベラ空港は、ビジネスマンやハイヒールのキャリアウーマンが闊歩し、ハンターヴァレーとはうって変わって都会的だ。訪れた11月下旬は、オーストラリアでは春から初夏の季節にあたるが、Tシャツ1枚で十分なほど気温は高い。一緒に旅した寒がりのイギリス人ルーシーは、「暖かくて最高!」といいながらパーカーを脱ぎ、太陽に向かって伸びをしていた。

空港からバンに乗りこみ北へ50kmほど離れたワイナリーへ向かう。窓の外には、がらんどうの空と大地が広がる。やや黄味のつよい草の茂る大地にはタンポポに似た花が混じり、春と夏が共存しているようだが、ハンター・ヴァレーではもう少し緑も青々としていた気がする。

口数も減りうつらうつらしている私たちとは対照的に、ドライバーの女性は運転しながら大きな声で、キャンベラ地区の説明をしてくれる。キャンベラにあるワイナリーの数は33、ぶどうの栽培面積も300ha弱(ちなみにバロッサ・ヴァレーは189ワイナリー、13,871 ha)と規模こそ小さいが、リースリングとシラーズを筆頭に、カベルネ・ソーヴィニヨンやテンプラニーリョ、イタリア品種などの多様な品種から粒ぞろいのワインが揃うという。「クール・クライメット」という単語がなんども出てくるが、先ほど肌で感じた暑さと黄色い草地をみていると、「本当に冷涼産地なんだろうか……」と疑問が浮かんでくる。

さて、キャンベラの銘醸リースリングシラーズについては追って紹介するとして、説明に聞いたとおり、実にさまざまな品種のワインを飲む機会に恵まれた。キャンベラ地区は新興産地なので、どの品種が適しているのかまだ固まっていないらしい。「Time will tell」とキャンベラを代表する造り手ヘルム・ワインズの当主は言っていた。

赤い屋根が素朴な小さなワイナリー、コレクターズ

コレクターズのピノ・ムニエ

とくに印象的だったのは、まわりは畑ばかりの小さな村にある小さなワイナリー、コレクターズでの17種類の試飲だった。白はリースリングからはじまりオーストリアの白ぶどう品種グリューナー・フェルトリーナー、イタリアへ飛んでサンジョベーゼ。不意打ちはピノ・ムニエ(最近では「ムニエ」と表記されることも多いが、ここではラベルどおり「ピノ・ムニエ」で統一する)の赤。期待が高まる。というのも、少し前、熟成したピノ・ムニエの赤ワインを日本で飲んで感激したからだ。ちなみにそれもオーストラリア産のものだった。

日本で飲んで感激した熟成ピノ・ムニエ、「Great Western Old Vine Pinot Meunier」

ピノ・ムニエといえばシャンパーニュの三大品種のひとつだが、シャルドネやピノ・ノワールに比べると、やや軽視されがち。正直ちょっと野暮ったいイメージがある。ピノ・ムニエを多くブレンドするクリュッグは長熟する偉大なシャンパーニュをつくるが、一般的にはピノ・ムニエ比率が高いシャンパーニュは早飲みに向くとされる。だからその1991年のピノ・ムニエの赤ワインを飲んだ時は、まずピノ・ムニエが熟成することに驚き、さらにその滋味深さに衝撃をうけたのだった。

いたるところに和の雰囲気を感じたコレクターズのセラードア。白いラベルに余計な飾りは一切廃したシンプルなラベル、吐器の代わりに花器を利用していた。

コレクターズのピノ・ムニエは、2015年と若かった。ちょっとガメイを思わせるチャーミングな魅力があり、かといって軽薄ではなく、すなおな軽やかさが楽しいワインだった。

「それ、2日前に抜栓したものなんだけど、まだ大丈夫かしら?」と案内してくれた女性は心配そうにしている。大丈夫、と答えるも、不安になったのか、新しいボトルを開けてくれた。開けたては、フレッシュさが増して、ワインが5歳は若返ったよう。だが、2日前抜栓のもののほうが、こなれておいしいと思ったのは、まわりの反応を見ても私だけではなかったようだ。これでたったの34豪ドル……。それまで財布の紐を固く閉じていたのを、ようやく解放して1本購入した。さていつ飲もう。ワイン会でみんなでシェアするのもいいが、家でこっそりちびちび飲んで、2、3日かけて楽しみたい気もする。あと2本くらい買っておけばよかったかな、と早くも後悔しはじめるのであった。

この記事を書いた人

水上彩
水上彩
シャンパンと日本ワインを愛するライター。ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身した。最近は、毎日着物生活をめざして「きものでワイン」の日々を送っている。ワインの国際資格WSETのDiploma取得に挑戦中。

ブログ:余韻手帖 |きものでワイン http://muse-bacchus.com/

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