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ローラン・ペリエ ロゼ発売50周年記念テイスティング・ディナー

来日した現当主アレクサンドラ ペレイル ドゥ ノナンクール さんのスピーチより

シャンパーニュ・メゾン「ローラン・ペリエ」の当主が来日し、さる5月22日(火曜日)、「ローラン・ペリエ ロゼ」発売50周年を記念してのテイスティング・ディナーが東京・六本木の「六本木テラス フィリップ・ミル」で開かれた。このロゼ、ご存知の方はご存知のように、ちょっと変わったロゼ・シャンパーニュなのでした。

ピュア、フレッシュ、そしてエレガント

ディナーの舞台は、六本木ミッドタウンの4Fにあるフレンチ・レストラン「六本木テラス フィリップ・ミル」。モダンな内装の店内に入って行くと、名刺交換する列ができていた。

ホスト側の通訳の女性のすぐ隣が現当主のアレクサンドラ ペレイル ドゥ ノナンクールさん。ワインの勉強を始めたばかりだというお嬢さまのルーシー ペレイルさんを伴っての来日で、その美しいお嬢さまは美しいお母さまの隣で微笑んでいた。

1812年に創業したローラン・ペリエ社はイギリス王室御用達ということでも知られる名門シャンパーニュ・メゾンで、いまも家族経営を貫いている。会の冒頭の現当主さんのあいさつが愛娘の紹介から始まったのもごく自然なことだった。

アレクサンドラ ペレイル ドゥ ノナンクール
Alexandra Pereyre de Nonancourt
Membre du Directoire
Champagne Laurent-Perrier

「今回、娘と共にやってまいりました。彼女は初来日で、今ワインの勉強を始めたばかり。日本に来ることはとても経験になったのではないでしょうか。

私どものメゾンは若い。その歴史は200年を超えています。それなのに“若い”というのは1948年に経営を引き継いだ私の父、ベルナール ドゥ ノナンクールによって世界100番目から4番目のシャンパン・メゾンへと成長したからです。ここに至るまで40年。あっという間でした。

私どもの歴史はパイオニアの歴史です。シャンパーニュの新しいスタイルをつくってきたからです。ピュア、フレッシュ、そしてエレガントの3つキイワードがローラン・ペリエのアンバサダーになっています」

ここで記者は、昨年の同じ頃に東京・銀座のティエリー・マルクスで開かれたローラン・ペリエの新しいスタンダード「ラ・キュヴェ」のテイスティング・ランチのことを思い出していた。

うまかったなぁ……。

アレクサンドラさんによれば、キイワードその1のピュア、すっきり感というのは、ブドウという果物に大いに表現させることから生まれている。その2のフレッシュ、さわやかさはテロワールが表現されているから。そして、シャルドネというブドウ品種がアッサンブラージュによって、おおいに引き立っているから。その3のエレガントは、『絶妙のバランスを保ちたい』という絶え間のない探求のたまものであるアッサンブラージュによる。そして、長い年月をかけて熟成させること。それがきれいな泡立ちを生む。

シャンパンはシャンパーニュ地方のテロワールから生まれる。ブドウ畑の10%がメゾンの持ち物で、残りの90%はいまも農民が持っている。それゆえ、彼らブドウ栽培農家と長期にわたるパートナーシップを打ち立てて行くことが重要で、ローラン・ペリエは日本の“系列”に習って農家さんと結びついており、それこそが強みになっている、と語った。

「私どものブドウ畑は、北に位置しています。寒い、厳しい気候の地域で、土壌は、チョーク質。ここでパラドックスです。偉大なシャンパーニュは自然状況がよくないところでつくられているということです。父は言いました。いちばん苦しいところでこそ、いちばんおいしいブドウが育つ、と」

黒ブドウ品種はピノ・ノワールとムニエ。白ブドウはシャルドネを使う。ローラン・ペリエのスタイルは、60年前には、否、いまもマイノリティであるシャルドネを基礎にしていることにある。

あたらしいシャンパンのカテゴリー

シェフ・ド・カーヴが、どこの区画のどの品種がいちばんいいのかを選び抜き、畑ごとに、温度管理ができるステンレスタンクで醸造する。木樽は使わない。だから、畑それ自体が表現してくれる、ピュアなものができあがる。

「私どもはクオリティという部分でものすごくハードルの高いものをつくり続けるという意思を持っている。私の妹と私自身としては、父がつくり上げたものを引き継ぐ形で、継承と独立を維持しながらやって行く」

そう決意を語る現当主なのだった。

ゲストのテーブルのグラスにピンク色のロゼ・シャンパーニュが注がれ、シャンパーニュ地方に住むスターシェフ、フィリップ・ミルが考案したメニューを、「六本木テラス フィリップ・ミル」のスタッフがつくりあげた。それは、こんな色あざやかな料理だった。

グロゼイユでマリネした鮪のタルタル
ロゼ色の様々な大根パレット ピンクペッパーのアクセント

ブルターニュ産オマール海老のロティ バスク唐辛子のポアン
バーベーリー香るビスク 
ロゼ色のシャンパンソースを纏ったカッペリーニ キャビアを添えて

香ばしく焼き上げた鴨胸肉と赤玉葱 ビーツで彩った小蕪 
苺とリュバーブのコポーを添えて

ミルフィーユしたフィーユ チェリーの香り

メインのカモが出た後、アレクサンドラさんが立ち上がって、今宵の主役であるローラン・ペリエのロゼについて語り始めた。

「ここでちょっとお話を。よくご存知の方もいらっしゃると思いますが、聞きたい方もいらっしゃると思ったからです。

それは1968年のことで、当時はシャンパーニュのプロフェッショナルの人たちが、ロゼなんて将来性はないよと言っていた時代です。

Laurent-Perrier CUVÉE ROSÉ BRUT

ローラン・ペリエとしてはなんとしも違ったシャンパンをつくりたい。ノンヴィンテージのロゼ・シャンパンは、シャンパンとして素晴らしく美味しいものであることを世にあかしたいと思いました。

もともとは、赤い果実の香り、アロマというものを追求しよう、それをそれぞれの過程において目指し、香りのブーケのような表現をしたいと考えたのです。

そこで、どんなメソッドを使ったか? 最初からピノ・ノワールのマセラシオンだったのです」

そう、ローラン・ペリエのロゼは、シャンパーニュ地方ではちょうど200年前に誕生して現在一般化している白と赤のブレンドではなくて、マセラシオン(色素やタンニンなどの成分を抽出させるために、種や果皮を漬け込むこと。日本語では「醸し」と呼ばれる)でつくられている。スッキリさが信条の「ラ キュヴェ」に比べると赤ワインの複雑さを持っているのはそれゆえだったのだ……。

アレクサンドラさんの話を続ける。

「スタートはブドウの木、ブドウ畑です。いちばんいいブドウの木、いちばんいい畑、モンターニュ・ド・ランスのしっかりと南に向いている丘陵に植えられたピノ・ノワールを選んでくることでした。完璧に熟しているブドウだけを手摘みで収穫し、摘んだカゴごと、ローラン・ペリエのロゼ専用設備に持ってまいります。

そして、手でひとつひとつ選んで、除梗する。ブドウの実から出てきた果汁がブドウの皮から出てきた色に浸っている。ピノ・ノワールの新鮮な香りでそこが満たされてきます。

マセラシオンは、クリュ、つまり畑ごとに行います。48〜72時間かけて、重点的に豊かなアロマを引き出して行く。そして、ピノ・ノワールの持つ絶妙の色あいを抽出するのです。

マセラシオンが完了すると、そのあとアッサンブラージュによって、新鮮さ、さわやかさを、ワインのなかにしっかりと保ちながら、赤い果実のアロマを十分に表現させるようにします。

それを5年間熟成させる。すると、求めていたしなやかさが出てくる。それでいて、ハツラツした感じは維持できる。マグナムボトルだと、プラス1年熟成期間をのばしています。

テクニックはとても重要です。だけど、どんなシャンパンをつくりたいのか、そのためにどんな技を使うのか、それぞれの工程でビジョンをしっかりと持っていることが基本の基本で、いちばん大事なことになります。

今回、ローラン・ペリエのロゼが料理の一皿一皿に完璧な形で調和していたか、ご体験いただけたと信じています。最初のお皿は、さわやかさとハツラツとした感じをしっかりと与えてくれた。オマールとパスタのお皿は、すべてがステキな形にミックスしている。そしてカモは、ロゼの持つ深みで、料理を包み込んでくれた。そんな感じがします」

1982年の特別な収穫

デザートが配られ終わった頃、アレクサンドラさんは三度立ち上がった。いよいよサプライズ・ワインの登場か、とテーブルがザワついた。現当主のお話はそのざわつきをピタリを抑えるものだった。

「私どもローラン・ペリエは、自然界が特別な収穫を与えてくれた年には、もっともっといいものをつくりたいという思いに駆られます。それが1982年のことでした。その年の収穫により、私ども最初のヴィンテージロゼ・シャンパンをつくることができたのです。それはずば抜けたロゼで、信じられないことから生まれました。

1982年の収穫の時、あのグランクリュのピノ・ノワールとシャルドネのグランクリュのブドウが一斉に熟したのです。こんなことはシャンパーニュ地方では滅多にないことです。ピノ・ノワールとシャルドネを一緒に収穫できたことで、やろうとしてもできなかった、ピノ・ノワールのマセラシオンの技術を一歩進化させる絶好の機会を得ました。

それは、ピノ・ノワールでマセラシオンをやっているときにシャルドネを20%ほど加えることです。

シャルドネを加えることによって、もっと長く熟成できる能力を与えることができるのではないか。父とシェフ・ド・カーヴは、ピノ・ノワールのシルキーな赤い果実の持つ特徴に、シャルドネのさわやかさからくるしっかりとしたストラクチャーが溶け合う、と構想したのです。こうして初めてつくられたこの特別なワインはボトルに詰められてセラーで眠りにつき、開けられる日を待っていました。

私が父に、自分の結婚のことを告げたのはその頃のことです。私は1987年の10月に結婚します。当時の私は父の会社で仕事をしていなかったので、セラーで何が準備されているのか知るよしもありませんでした。結婚披露宴の席では花嫁の父がステキなスピーチをするというのがフランスの伝統で、私はそのスピーチのときをいまかいまかと待っていました。そして、現れたのがこの『アレクサンドラ』のロゼのボトルだったのです。

Laurent-Perrier ALEXANDRA ROSÉ 2004

父のスピーチのメッセージは、このすばらしいボトルのなかに込められていました。

私はシャンパンをつくる父と父のチームの情熱と技を感じ取りました。私の心を揺り動かす、人生の重要な時となりました。この時、私は決意したのです。ローラン・ペリエの仕事をしよう、と。

今日、みなさまに召し上がっていただく『アレクサンドラ ロゼ 2004』は、凛とした強いものと繊細さを併せ持つロゼの銘醸だと思ってます。セラーで10年以上寝かせていますし、凝った料理にも合わせられます。

そのいろどりは、何を思わせるでしょう。確かめていただくためには、シャンパーニュ地方におこしいただかなければなりません。冬のシャンパーニュ地方の夕暮れの空に広がる、炎立つようなあの赤い色、少し琥珀色を持ったあの夕焼けの色です。

アレクサンドラ ロゼは、82年ヴィンテージを87年に初めて発売して以来6回しかつくられていません。2004年は、7回目のアレクサンドラ ロゼになります。では、乾杯!」

「アレクサンドラ ロゼ」がグラスに注がれると、WINE-WHAT!?記者の左隣の女性ジャーナリストの方がこう呟きました。「すばらしいストーリーですね、書きたくなるような」

花嫁と父、家族の物語にカンパイです。

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