余市・仁木ワインツーリズムのプロジェクトにもかかわる「NPO法人 ワインクラスター北海道」の阿部眞久代表による特別寄稿。北海道初のワイン特区はいかにして生まれたのか?

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 写真:浦島英希

「NPO法人 ワインクラスター北海道」代表

 阿部眞久さん特別寄稿



親子2代で管理する弘津 敏さんのヒロツヴィンヤード。

余市は「良い地」

余市は住民自ら「良い地」と口をそろえる土地。

海に面して温暖で、市街地と余市川の両岸には平地があり、内陸部にはなだらかな丘陵地が広がる景観が美しく、冬の積雪も少なめだ。

ニッカウヰスキー余市蒸留所の存在や、その経営初期をリンゴが支えたことはNHKの朝の連続ドラマ『マッサン』でも紹介され、余市の名前は全国に知られている。そして、その隣にある仁木町は、さくらんぼやプルーンの一大産地の果樹の町として、ブドウ栽培も盛んである。

このふたつの町は古くからの産業に加え、近年、北海道のワイン産地として大きな注目を集めている。北海道はワイナリーが急増しており、現在35ある醸造所のうち、余市町には10軒、仁木町には2軒のワイナリーがある。近隣の小樽市やニセコ町などを含めた「後志(しりべし)」地域は北海道最大のワイン生産地帯となっている。

余市は小樽からバス、クルマ、電車で各30分。

北海道のワイン産地のなかでも、ワイナリーやブドウ畑が集中し、札幌から近く、JRや高速バスなど交通の便もいい余市・仁木エリアはワインツーリズムに最適である。近年はワイナリーだけでなく、新しいレストランがオープンし、さまざまなイベントも増えてきた。日本で注目されるワイン産地「北海道」の最新の勢いを体感するなら、ぜひ余市・仁木を訪れてほしい。

そもそも両町では古くから丘陵地で果樹栽培が行われてきたが、特にリンゴに代わる作物として1980年代に余市町の農家たちが考え、導入したのが欧州系ブドウ品種であった。

果樹栽培で培った経験と温暖で広大な余市仁木の土地とはいえ、北海道でも実際に試験栽培が行われたばかりの欧州系ブドウ品種が育つのか、模索するところから始まり、ブドウを継続して買い支えるワインメーカーを自ら探さなくてはならないなど、7軒の農家は大きな覚悟と決断のなかで挑んだ。

パイオニア7軒のうちの1軒、田崎ヴィンヤードの田崎正伸さん。余市でもっとも規模の大きなブドウ園を営む、「ぶどう作りの匠」。

当時は日本のワインへの注目も評価も皆無に近かったから、スタートは地味だった。不安もあったし、困難もあっただろう。しかし、それでも農家はブドウに賭け、愛情と誇りを持ってブドウ作りを継続した。

転機は2003年のJapan Wine Competitio 第1回「国産ワインコンクール」(のちに「日本ワインコンクール」に改名)だった。

このコンクールによって、北海道のワイン、特に余市・仁木産のブドウを用いたワインの品質の高さが際立っていることが明らかになり、全国の注目を集めるようになった。

このエリアには1974年設立の「余市ワイナリー」1軒しかワイナリーがなかったが、2008年以降に新たなワイナリーが設立され、いまは前述のように10軒のワイナリーが存在する。余市町は道内で初めて内閣府から「ワイン特区」の認定を受け、「ワインの町」へ未来の方向を明確にした。

一方の仁木町では、有機栽培のブドウでワインをつくる「ベリーベリーファーム」、そして大規模なワインリゾート計画を持つ「NIKI Hills」がワイナリーを設立。

東京の広告会社が地方創生事業として手がけるNIKI Hills ヴィレッジ。

両町ともに、若い人たちがワイナリーやブドウ畑をやりたくて移住して来るようになっており、今後もワイナリーの増加が見込まれている。

地域活性化のためのワインツーリズムとは?

もともとの地理、気候に加え、時代の流れを反映し、ワインは両町の地域資源を結び付ける産業として期待されている。地方創生事業として、2015年度から「余市・仁木ワインツーリズム」プロジェクトが採択され、私も大きく関わっている。

私の考えるワインツーリズムとは、ブドウ畑やワイナリーへ行くことだけを指すのではない。ワインやワイナリーをきっかけにして旅行者を呼び込み、地域の魅力や資源を掘り起こし、それを活用して住民みんなが活性化することが重要なテーマだ。

もちろん、ワインに隣接する産業との連携や機能分担が欠かせない。また、ワイナリーが常時来訪者を受け入れられるかというと、人や設備の面から困難なのが現状である。

そうした視点から、このプロジェクトではモニターツアーやタクシー利用のワインツーリズムの推進、地元の飲食店で地元のワインを取り扱う取り組みを進めている。

たとえば、2018年2月に実施した「余市・仁木ワイン&フードフェア」は、地域でのワインの定着とワインツーリズムへの期待を実感するものとなった。これは余市・仁木産ブドウを使ったワインと地域食材の料理1品をセットにして手頃な共通価格で提供するもので、今回は余市駅前を中心に11店舗が参加してくれた。

フェアをきっかけに新しいお店を知ったという参加者の声や、フェア終了後もワインに力を入れるというお店の声が届くなど、現地からの反響が嬉しい。

ワイナリーの設立だけではなく、新しいレストランやオーベルジュが誕生するなど、ワインをきっかけとした地域の活性化が目立つようになってきた。近年では、農家主体で25年以上前から始まった「ワインを楽しむ会」(2月)や、「La Fête des Vignerons à YOICHI(農園開放祭@余市)」(7月)も、首都圏等からも人が押し寄せる大盛況のイベントとなっている。

現在の余市・仁木エリアを取り巻く動きは、ワインによる地域活性化のモデルケースとなりつつある。毎年のようにワイナリーやブドウ畑が増え、ワイン関連の施設や飲食店が増えている余市・仁木。ワイナリーが日常的に訪問や見学、直売を受け入れる体制が整っていないところが多いのが実際ではあるが、こうしたイベントなどを契機に産地に足を運んでみてはいかがだろうか?

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
我輩は「WINE-WHAT!?」である。名前は「WINE-WHAT!?」である。誰がつけたかとんと見当がつかぬ。

ワインホワット?

「WINE-WHAT!?」である。にゃ〜。