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フランス名門レストラン「タイユヴァン」のペアリング、の初歩

フランストップソムリエ アントワーヌ・ペトリュス氏に聞く

9月25日に、日本橋高島屋本館8階にオープンした 「LES CAVES de TAILLEVENT TOKYO (レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京)」は、パリ最高峰のレストラン「タイユヴァン」お墨付きのワインが買える店。と同時に、タイユヴァンの「食とワインの調和」の片鱗を味わうことのできるカフェ・バーでもある。

先だって、パリのタイユヴァンの支配人アントワーヌ・ペトリュス氏が来日した。そして、レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京にて、タイユヴァン流「食とワインの調和」の手ほどきをしてくれるというイベントが開催されたのだった。ここでは、その模様をお伝えしたい。

アントワーヌ・ペトリュス氏 タイユヴァン

来日したアントワーヌ・ペトリュス氏が情熱的に語ります

フランスのトップソムリエ来日

アントワーヌ・ペトリュス氏は、2011年にソムリエとして、フランス国家最優秀職人章(Meilleur Ouvrier de France フランス文化の最も優れた継承者にふさわしい、高度の技術を持つ職人に授与する国家称号)を27歳の若さで受賞した人物。1973年から、33年間、三ツ星を守り続けたパリの名門レストラン「タイユヴァン」は、現在、この人物を支配人としている。

タイユヴァンの若きワインの守護者、ペトリュス氏。先だって、東京は日本橋高島屋本館8階の 「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京」にやってきて、ワインペアリングセミナーと題したイベントにて、ワインペアリングについて語ってくれた。そして筆者、そこに参加させてもらった。

それは筆者が想像していたペアリングとは、またちがったもので、ペアリングといっても、いろいろなやり方があるのだと気付かされる内容のものだった。

ペアリングとはなにか?

ペトリュス氏の話は、そもそもペアリングとはなにか、という問から始まった。その答えは、実に明快で、曰く、「すくなくとも、タイユヴァンでは、食とワインの調和はレストランのすべてです。食なくしてワインはなく、ワインなくして食はない」

アントワーヌ・ペトリュス タイユヴァン
レ・カーヴ・ド・タイユヴァン東京

1946年にタイユヴァンはうまれた。その使命は、よい食事の経験を提供すること、だという。そのためには、「おいしい食材とおいしいワインが不可欠です。これをフランスに受け継がれる調理にて提供します」

ペトリュス氏は、フランスを中心としたワインの産地をまわって、よい食、よいワインを探すのが仕事だ。

シャンパーニュからスタート

タイユヴァンが、1980年代から用意しているのが、タイユヴァンのプライベートブランドとなるワイン「コレクション・タイユヴァン」。ペトリュス氏曰く、ワイン産地をまわり、これこそは、という生産者とよい関係を築き、タイユヴァンのためにわざわざ、そのワイナリーの通常のラインナップとは別に、タイユヴァンのために仕立ててもらった「ワインのオートクチュール」だ。

今回のセミナーは、このコレクション・タイユヴァンから、シャンパーニュがまずサーブされた。生産者は、シャンパーニュ最良の生産者のひとつだ、とペトリュス氏が称賛するDeutz(ドゥーツ)。

collection taillevent champagne deutz brut

コレクション・タイユヴァンから、シャンパーニュ ドゥーツ ブリュット。レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京では、このシャンパーニュを含めて、約20種類の「コレクション・タイユヴァン」を販売中

「シャンパーニュと食事を合わせるとき、私が求めるのは、食を邪魔しないよう、デリケートであること、そしてドザージュ由来の甘みは少ないことです。そのうえで、ワイン同様に、強く、味わいに富むこと。特に、食事の満足感には、しっかりと後味にまでつづく、ミネラリティーと酸が重要です」

そして、食としてはグジェールが出てきた。グジェールはチーズを混ぜたシュー皮で、シンプルなフランスのおつまみ。

「グジェールはシャンパーニュに限らず、とくに発泡性のワインテイスティングの定番のおつまみです。ブルゴーニュやロワールなどでも出されます。このペアリングはシミラリティ(類似性)がキーワード。シャンパーニュの後味にグジェールの味わいが合う。グジェールもゴージャスで力強い味わいですから」

グジェール

こちらはタイユヴァンのものではなく、筆者がブルゴーニュのクレマンの造り手のもとを訪れた際に、山盛りで出てきたグジェール。定番なのです

筆者、あまりに定番すぎて、その相性を深く考えたことがなかった。言われてみればおっしゃるとおりである。酸の爽やかさでさっぱりしつつも、ミネラル感で美味しさが後を引く。もしかして、盛んに言われる天ぷらとシャンパーニュの相性の良さなんかもおなじ理屈? とおもっていたら

「日本食でいえば、天ぷら。特にその衣については同じことが言えます。ペアリングの初歩の初歩ですね」

とのこと。初歩でした。明快すぎて付け加えることがない。

「天ぷらの場合は、衣の中身がなにか、また油の具合にも影響を受けますが、サクサクとした食感や、温かさもまた、発泡性のワインとの相性が良いところだとおもいます」

ペトリュス氏、天ぷら大好きらしく、天ぷらの話になると顔がゆるむ。ワインのプロとしては「天ぷらは奥が深い」とのことです

「加えて言うのならば、シャンパーニュや発泡性ワインの場合、香りの相性にも注目していただきたいです。10度から12度の温度で楽しむこと。冷たすぎると香りがでません。あたたかすぎるとアルコールの香りが出すぎて、酸味も弱く感じられるようになります」

白ワインはロワールのソーヴィニヨン・ブランを

二つ目のワインはロワールから。パスカル・ジョリヴェの「プイィ・フュメ」2017年。ソーヴィニヨン・ブランのベンチマークみたいなワインである。合わせたのはガランティーヌとも呼ばる料理だけれど、ここではバロティーヌと呼ばれていた。フランスの伝統料理。色の白い肉のテリーヌみたいな料理だ。今回のものは鶏肉。

ガランティーヌあるいはバロティーヌ

ガランティーヌ、あるいはバロティーヌ

「ここでの狙いは、オポジット。反対です。定石で考えれば、リッチな食には赤ワインやボリューミーな白ワインを合わせます。でも、例えば、さきほど例に挙げた天ぷらにムルソーやシャトー・ヌフ・デュ・パプ、あるいは牛肉にオークの香りがきいた赤ワインというペアリングは、いささかやりすぎだとはおもいませんか? 今回選んだワインは、ロワールのシレックスと呼ばれる土壌で育つソーヴィニヨン・ブランから造られ、ノーオーク、ノータンニン。若く、ドライです」

バロティーヌにピスタチオをいれて、クリスピーな食感をあたえているのがタイユヴァン流。これが、歯ごたえのないバロティーヌと、ソーヴィニヨン・ブランのフレッシュな酸味とを接続するのであった。先のシャンパーニュと天ぷらの相性とも関係しそうだけれど、ワインの酸味とクリスピーな食感は合う、とおもっていてよさそうだ。

「こういった料理の要素は重要で、ほんのちょっと変わるだけで、ペアリングも変わってきます。ですから、私は、関わるレストランでは、料理を実際に食べますし、シェフとは緊密な連携をとります」

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WINEWHAT
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