ストーンストリート・エステート・ヴィンヤーズ
クリストファー氏の思い入れが強いワイナリー、ストーンストリート・エステート・ヴィンヤーズ。
https://www.stonestreetwines.com/video
こちらの、あるいはこの上のビデオで、クリストファー氏が語る話は感動的だ。
畑は、ソノマ・カウンティのアレクサンダー・ヴァレーというAVAの東側にある。標高は120メートルから730メートルまでと起伏に富み、敷地自体は5,100エーカーというから、2,060ヘクタール以上だ。20種類のことなる土壌、20種類のことなる気候条件がある、という。ブドウの育てられている区画は290に分けて管理されていて、それぞれ、台木、品種、クローン、育て方などを変えているそうだ。極めて手がかかっている。品種でいうと、シャルドネだけでなく、ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・ソーヴィニヨンも栽培されているけれど
「ブドウ畑があるのは、全体の約17%だけで、あとは手付かずの自然です。ストーンストリートは森の中にある畑なのです。ブドウを育てているのは、生態系に負荷をかけずに農業ができる場所だけです」
とのこと。とはいえ17%だとしても350ヘクタールはあることになるのだから広大だ。
「シャルドネの畑は標高120から550メートルのあいだにあって、霧がかかるところです。素晴らしいアロマが特徴だとおもっています。畑の周囲に育つ、木々や草の香りがすると感じます」
その森の香りを知らない筆者にとっても、ハーバルな香りが感じられるワインだった。口当たりはまろやかで、シャルドネらしい青リンゴやレモンの爽やかさに加えて、ほのかな甘みがある。
「プロのかたに、このシャルドネがピュリニー・モンラッシェに似ている、といわれることもあります」
シャルドネといえばブルゴーニュ。そのブルゴーニュでも、頂点のひとつ、ピュリニー・モンラッシェ。そんな名前が出てくるあたりで、その実力は推して知るべし。しかし、ふとおもってもみれば、そんなに自然豊かなところだったら、動物にせっかくのブドウを食べられちゃったりするのでは?
「たしかに、ストーンストリートの森には、たくさんの野生動物がいます。クマ、シカ、それにコヨーテも。私はさっき言ったように、子供のころ、このあたりに住んでいましたが、自分の子供がコヨーテに食べられたりしないように、いまは街のほうに住んでいます。とはいえ、動物が食べるというのは、美味しいブドウができている証拠ですし、自分の子供が訪れる畑、子供やそのまた子供に引き継がれていってほしい畑は、人の手で汚されていない、豊かな自然であったほうがいいとおもうんです」
というわけで、若干、質問と答えが噛み合っていないようにも感じるけれど、サステイナブルなワイン造りは、ジャクソン・ファミリーのワイン造りにおいては基本であって、その分野でも先駆的なのだ。
ちなみに筆者、このとき同じくストーンストリートのカベルネ・ソーヴィニヨンも飲ませてもらえた。先程のシャルドネともども2015年ヴィンテージ。こちらもやはり、ややスパイシーなハーブや木の香りを感じる。もちろん、これには、33%の液体が19ヶ月入れられていたフレンチオークの新樽の影響もあるだろうけれど、いずれにしても、ワインのもつ酸味とあわせて、まずピリっとしていると感じる。これも森のイメージ?
ミネラル、うまみ、シトラス系のさわやかさのバランスが絶妙で、フレッシュさと濃厚さを併せ持つシャルドネにたいして、カベルネ・ソーヴィニヨンは、その最初のピリッとした感じに、いわゆる黒い果実の味わいが続いて、タンニンとともに葉巻のような香りも感じる、なんともリッチな赤ワインだった。
「ソノマは私にとっては特別です。ただ、ナパ・ヴァレーと比べた場合、知名度も、評価もまだ劣っていると感じています。ソノマのシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンが評価されるまでにはまだ時間がかかる。私にとっては、だからこそ、やりがいがある。スートンストリートとヴェリテで、ソノマという土地のもつポテンシャルの高さを表現したいんです」
話はここから、ソノマのワインの最高峰銘柄「ヴェリテ」へと移る。