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ジャクソン・ファミリー・ワインズ

巨大なワイン企業にして家族経営のワイナリー

cardinal verite

クリストファー氏が笑顔で持っているワインの左がヴェリテ、右がカーディナル。いずれも世界最高峰のワインです

ヴェリテ

クリストファー氏の話で名が挙がった「ヴェリテ」はソノマの最高峰のワインを造るワイナリーだ。日本では一本5万円程度の値段がつくワインだけを造っているワイナリー、といえば話が早いだろうか。ヴェリテのブランドからは、「La Muse(ラ・ミューズ)」、「La Joie(ラ・ジョワ)」、「Le Désir(ル・デジール)」という3種の赤ワインがリリースされている。いずれも、ボルドーブレンド。メルローを主体としたボルドー右岸スタイルなのが「ラ・ミューズ」、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とした左岸スタイルなのが「ラ・ジョワ」、そして、カベルネ・フランとメルローが中心となるサンテミリオンスタイルが「ル・デジール」だ。

ワイナリー名もワイン名も、いずれもフランス語なのは、ヴェリテは、ジェス・ジャクソンが、フランス人ワインメーカー、ピエール・セイヤンを招聘しておこしたワイナリーだから。設立は1998年。

ピエール・セイヤンは、ガスコーニュのベルヴュという自分の家族のワイナリーからキャリアをスタートし、ロワールのシャトー・ド・タルジュを経て、ボルドーの有力ネゴシアン、「シュヴァル・カンカール」のもと、約20年間、ワインメーカーとして、ボルドーのシャトーをわたりあるいた人物。ここで、8つのアペレーションと向き合い、畑ごとのニュアンスの違いをみつけだした。その経験から、ピエール・セイヤンはマイクロクリュという哲学を導き出したという。マイクロクリュというのは、その名のとおりで、畑を特性に応じて小さく分割して考え、それぞれをクリュとして別々に醸造する、という考え方。その後、それらをアッサンブラージュしてワインを造りだす。

ヴェリテは、このマイクロクリュの哲学から造られるワイン。先のストーンストリートとおなじくアレクサンダー・ヴァレーのほか、ナイツ・ヴァレー、ベネット・ヴァレー、チョーク・ヒルのブドウを使う。

ソノマは無理やりボルドーかブルゴーニュかでいえば、ブルゴーニュ寄りの産地と考えられがちだけれど、ヴェリテはボルドー系。2007年に3種すべてが、ソノマのワインとして初めてパーカーポイント100点を獲得するという快挙を成し遂げ、クリストファー氏のいう「ソノマのポテンシャル」を世に知らしめた。

今回、クリストファー氏の来日のメインイベントのひとつが、このヴェリテの最新、2015年ヴィンテージのお披露目で、「ラ・ミューズ」が、90%メルローで、カベルネ・フラン7%、マルベック3%。「ラ・ジョワ」がカベルネ・ソーヴィニヨン75%、メルロー14%、カベルネ・フラン7%、プチ・ヴェルド4%、「ル・デジール」はカベルネ・フラン64%、メルロー27%、カベルネ・ソーヴィニヨン5%、マルベック4%という比率だそうだ。

いずれも、テイスティングさせてもらったのだけれど、まだ若いと感じられるところがまず面白い。このときのイベントにて登壇していたマスターソムリエのディミトリ・メナール氏は、ラ・ミューズは8から12年、ラ・ジョワは15から20年後に真価を発揮するだろうと評していた。ル・デジールは安定感があり、香りに関してはいまが一番よいだろう、とも。

それで実際、ラ・ミューズの2012年、2009年、2007年、2004年、2002年ヴィンテージをテストできて、ヴィンテージによる差と熟成を体験できたのだった。2002年はまさに今が飲み頃、というまとまりだった。16年熟成して、真価を発揮しているのだ。温暖な年だったという2004年は、そのとおり、熟した果実を感じさせるどっしりとしたワイン。グレートヴィンテージにして、パーカーポイント満点取得の2007年は、現在でも素晴らしいけれど、おそらくまだ先がある。2009年は涼しい年だった、というのが頷ける、ハーバルでスッキリとしたワインで、やはりグレートヴィンテージとされる2012年は、こちらもまだ待ちたいところ。

いずれにしてもカリフォルニアにはヴィンテージごとの差が小さい、とかいった話はこのレベルのワインになると通用しない。畑の個性と、その年の環境、そして造り手の理想が反映されて造り上げられた作品だった。それぞれのワインが個性的だ。

「ソノマは複雑です。土壌はもちろん、標高、海からの距離、多様な自然の条件がワインに影響します。また、ヴィンテージごとに、気候にももちろん差があり、それがワインに反映されることが好ましいとおもいます。多様性がソノマの特徴なのですから」

ワイン会社の経営者一家にして、ワインメーカー

ソノマの話ばかりになってしまったけれど、ジャクソン・ファミリーは、ナパ・ヴァレーではカーディナルというワイナリーを運営していて、ここは、カベルネ・ソーヴィニヨンのワインを一種類だけリリースする。ナパ・カベルネの頂点にして、ジャクソン・ファミリーのワインの最高峰。今回は、2015年ヴィンテージがお披露目された。

ほか、今回テストさせてもらったワインでは、こちらもカリフォルニア州ではあるけれど、南に下ってロサンゼルスのやや北、サンタ・バーバラのサンタ・マリア・ヴァレーにカンブリアというワイナリーをもつ。ここでは、シャルドネ、ピノ・ノワール、ヴィオニエ、シラーのワインを生み出している。

こういった、ジャクソン・ファミリーがかなり直接的に関わっているワイナリーのほか、「ラ・クレマ」のように、もともと存在したワイナリーのワインの品質向上を、ジャクソン・ファミリーとともにおこなったワイナリーや、例えば、フリーマークアビーのような、ナパ・ヴァレーでも最古に近い、そして、1976年のパリテイスティングでは、シャルドネでもカベルネ・ソーヴィニヨンでもアメリカのワインの代表に選ばれているワイナリーも、現在、ジャクソン・ファミリー・ワインズの一角を占める。そして、それぞれのワイナリーには、それぞれワインメーカーがいる。ジャクソン・ファミリー・ワインズといっても、一口にその総体を語れるものではない。クリストファー氏はそれを、「いいワインメーカーが集まってくる」のだと簡潔にまとめた。ジャクソン・ファミリーは家族経営のワイナリーだ。農業に、土地に、自然に、ワイン造りに敬意を払ってワインを造っている。経営者がそういう真面目なワインメーカーでもあるから、ワインメーカーにとっては居心地のよい環境、ということなのだろう。

これから、もっと大きなワインの家族をつくっていくのかもしれない。

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