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伝統と革新の現場 ルクセンブルク

ルクセンブルクワインを発見しにいこう

ドイツ、ベルギー、フランスに挟まれた小国、ルクセンブルク大公国は、人口は60万人ほどなるも、国民一人あたりのGDPが世界最高。国外からビジネスでルクセンブルクに入る人が多く、ファンドやプライベート・バンキングでは突出した、欧州有数の金融の中心地。経済的に豊かな国だ。

それゆえか、ルクセンブルクは美食とワインの国でもある。国民一人あたりのミシュランの星の数は世界一。2015年にバチカンに抜かれるまでは、国民一人あたりのワインの消費量も世界一だった。

そして、この国は、日本ではまだほとんど知られていないけれど、自国でワインを造っている。そのルクセンブルクワインが、この数年、とてもおもしろい。WINE-WHAT!?は今回、ワイン産地としてのルクセンブルクを取材した。

公用語の時点で、フランス語とドイツ語、そしてこのふたつの言葉のミックスのようなルクセンブルク語というトリリンガルのこの国は、多様な言葉が通じ、ライフスタイルもフランスとドイツのミックス。両国の「いいとこどり」をしたようなそれは、安全で快適だ。日本からの直行便はないけれど、いま日本人観光客増加中。パリかフランクフルトからなら飛行機で1時間程度。電車ならばパリから2時間、ブリュッセルから3時間。小さな国なので、欧州を旅する途中に訪れるのもいい。ルクセンブルクとせっかく行くならそのワインを、発見しに行こう!

ルクセンブルク市の中心街

ルクセンブルク大公国の首都、ルクセンブルク市。ペトリュス川がモーゼル川の支流のアルゼット川に合流する位置にあり、市内を流れる川へ向かう崖が方ぼうにある。その上と下に、成り立ちの歴史をもった街があり、ダイナミックな高低差は見どころのひとつ。建築は、ルクセンブルクの歴史を反映して、この地を領有したスペインやフランスの様式がモザイク状に現存する。

ルクセンブルクワインの基礎知識

1.なんでルクセンブルクが面白い?

ルクセンブルクは現在、変革期にある興味深い産地だ。

ワイン造りは遅くとも4世紀には始まっていたという伝統的産地で、産業化してからも、小さな農家がブドウを造り、それを共同の醸造所にてワインにしていた。冷涼な産地ということもあって、スパークリングワインと白ワインが主。品種は、ドイツ、アルザス系である。軽やかで、ほんのりキャンディのような甘い香りがする辛口のワインが、もっともベーシックなスタイル。この伝統はいまもルクセンブルクワインの基調をなしているけれど、いま、より高品質なワイン造りへと舵を切りつつある。2014年ヴィンテージから、格付けの方針を変えたことが、その顕著なあらわれで、趣旨は、収穫量を少なくすることで、より、品種の個性、畑の個性、造り手の個性を表現してゆこう、というもの。

ルクセンブルクワインはいま、何がルクセンブルクらしいワインなのか?を自問している。それゆえに、様々な表現のワインに出会える。いままさに起きている変化。それが、面白い。

2.どこでワインを造っているのか?

ブドウが栽培されているのは、ルクセンブルクの首都、ルクセンブルク市から東に約20km いったところを流れる、ドイツとの国境になっている河川、モーゼル川の西側だけ。フランスと国境を接するシェンゲンの村から、川沿いに約42km、北に向かう道の真横に、うねってつづく丘を、栽培面積約1,300ha というブドウ畑が埋め尽くしている。ときに斜度40%を越える急峻な斜面にもブドウ畑があり、標高は150 から200m。ワイナリーもここに点在する。ブドウ栽培の北限ともいわれる冷涼な産地だけれど、現在は冬でも2、3℃。夏でも30℃以下が基本であり、寒すぎず暑すぎず。しかし寒暖差は十分にある環境は、ブドウ栽培に適している。

 

モーゼル川を挟んで向こうがドイツ

モーゼル川を挟んで向こうはもうドイツ。川に沿う、ルクセンブルク側の道のすぐそばをブドウ畑が埋め尽くす。

ルクセンブルクワインマップ

地図では一番左、方角では南に位置するのが、EUの原点となったシェンゲン協定で有名なシェンゲンの町。そこから42kmにわたって、小さな町とブドウ栽培区画がつづく

ブドウ栽培農家は340 軒、ワイナリーは約60 軒。年間生産量、約125,000hl。90%が白ワインで10%が赤ワインかロゼワイン。そして全体の25%を「クレマン・ド・ルクセンブルク」が占める。フランス以外で、クレマンと名乗ることができる、珍しいスパークリングワイン「クレマン・ド・ルクセンブルク」は国際的にも国内的にも評価が高く、ルクセンブルクワインを牽引する存在だ。

3.アペレーションと格付け

アペレーションは「AOP モーゼル・ルクセンブルク」。認定ステッカーはボトル背面に添付される。

luxembourg aop

このステッカーが貼られている

格付けは、これまで、ワインがまだ若い段階でのテイスティングによって、点数をつけ、上位のものにグラン・プルミエ・クリュ、プルミエ・クリュという称号を与えていたけれど、2015年、収量と栽培地域によってワインを格付けする仕組みに切り替え、2014年ヴィンテージから適用した。

100hl/ha 以下の収量のものを「コート・ド・○○」、75hl/ha以下のものを「コトー・ド・○○」と呼称する。「コート」が全生産量の半分弱、「コトー」が20%程度を占める。75hl/ha 以下の収量かつ単一畑の場合はその畑の名前、リュー・ディを名乗ることができ、リュー・ディのワインは、現在全体の10%程度ある。

このほか約25%をクレマンが占める。

クレマンについても、「クレマン・ド・ルクセンブルク」 を名乗るには、搾汁、醸造、熟成において品質基準がある。品質に関しては、農務省内の組織「国立ブドウ・ワイン機構(I.V.V.=institut viti-vinicole)」が管理し、I.V.V. はこのほか、新品種の開発、栽培や醸造にあたっての技術指導、支援、試験醸造等をおこなっている。

4.主な栽培品種とその特徴は?

スティルワインにおいては、伝統的に単一品種100%。ことなる品種のアッサンブラージュをしない。リリース後は、すぐに飲んでしまうのが一般的だけれど、現在は評価基準の変更も後押しして、熟成、長期熟成も視野に入れたワイン造りがなされつつある。

リヴァネール(リヴァーナー、ミュラー・トゥルガウとも)
全生産量の25%程度を占める。樹勢が強く多産な品種。そのため、低価格ワイン用のブドウとみなされがちだった。ピンとした酸の刺激に、ほのかな残糖を感じられるワインである場合が多く、青リンゴ、アプリコット、モモのイメージがある。

オーセロワ
ロレーヌ地方などでは補助品種として扱われ、特徴に乏しい、とされることもある白ワイン用ブドウ。ルクセンブルクはオーセロワ単一のワインが造られる唯一の産地であり、また、造り手の考え、テロワールを反映した複雑なワインを生み出す。とはいえ、軽やかなワインで、穏やかな酸味が基本。アペリティフに向く。メロンのような味、オレンジフラワーのような香りをもつこともある。熟成にも向き、熟成させることで、酸味はよりまろやかになり、カリンやハチミツのような風味があらわれる。全生産量の14%を占める。

ピノ・グリ
食事との相性の良さから、若手生産者を中心にルクセンブルクで人気上昇中。また国内外の評価も高い品種。全生産量の15%を占める。はつらつとした酸味と可愛らしい甘い香りが基本的な特徴。栽培年や熟成によって、酸味が弱まり、ミネラリティや苦みを感じさせる。残糖を少し多めに残すルクセンブルクならではのスタイルもあり、熟成させると厚みのあるまろやかさがうまれ、ハードチーズなどにも合う。

リースリング
ルクセンブルクの伝統的な高品質ワイン用ブドウ品種。全体の13%程度の生産量を占める。栽培年の気象的特徴、土壌を反映しやすく、辛口にも甘口にもなる。レイトハーベストやアイスワインで本格的なデザートワインも造られる。

ピノ・ノワール
生産量はごくわずかで、おもにクレマン用に使われ、味わいにスパイシーさを加える。スティルワインの場合、タンニンが非常に弱く、酸味のはっきりとした、透明感のあるワインとして仕上がる場合が多い。

ルクセンブルクでは誰がワインを造っているのか?

ルクセンブルクでは、ブドウ農家は多品種栽培で小規模なため、醸造所にブドウを売るのが伝統。現在も全生産量の半分強が、ブドウ農家の協同組合である「ヴァンモーゼル」にて醸造される。

次いで大規模なのが、ブドウを買って、醸造・販売をおこなうネゴシアンを兼業する5軒のワイナリー。残る50 軒あまりが栽培と醸造をともにおこなう、ドメーヌスタイルの独立したワイナリーである。

今回は、この3分類からルクセンブルクワインを紹介したい。

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