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ドメーヌ・ヴァンモーゼル

ルクセンブルクのワイナリー巡りはここから

協同組合、ネゴシアン兼業ワイナリー、独立系ワイナリーの3つ分けてルクセンブルクワインを見たとき、生産量の半分以上を占める最大手が、協同組合ドメーヌ・ヴァンモーゼル(Domaines Vinsmoselle)だ。

代表のジョズィ・グローデンさん。背後は巨大なパッキングヤード

ワインの種類は240

ルクセンブルク唯一にして最大の協同組合「ヴァンモーゼル」。

1921年にポール・ファベル(Paul Faber)という人物が中心になって設立した組織で、現在、240軒の農家のブドウを4つの醸造所でワインにしている。総栽培面積は796ha(ヘクタール)でルクセンブルク全体(約1300ha)の半分以上。年間生産本数で言うと、不作だった2016、2017年でも800万本。平均は1000万〜1100万本。2018年は質、量ともに恵まれた年になり、さらに増える見込みだ。

ワインの種類では240種類ほどがあるという。

ルクセンブルクは、品種ごと、区画ごと、醸造方法ごとに、それぞれ別々のワインとして造り、そのなかにはクレマンもデザートワインも含まれる。さらにヴァンモーゼルのラインナップには若手の栽培醸造家が造るワインのシリーズや、デザイン性に富んだパッケージに合わせて醸造されたシリーズ、ヴィンテージ違いまで加わるので、この数になるのだ。

量を下支えするテーブルワインと、少量生産のキュヴェを造り分けられるよう、醸造所には1.6トンのブドウを一気に搾汁できるプレス機もあれば500㎏までのプレス機もある。タンクも10万リットル入るものから120リットルのものまで用意する。ヴァン・ド・パイユのような、手間のかかるワインも造る。

ずらりと並んだプレス機

巨大なばかりではなく、小さなステンレスタンクや樽もある

ルクセンブルクの「クレマン」のリーダー

試飲したのは、ヴァンモーゼルの特別なワイン。

といっても種類は豊富で、品種違い、ヴィンテージ違い、さらに栽培区画の違いもあるので、とても短時間で試しきれるような量ではない。

試飲できたなかで印象的だったのは、「ヴィエイユ・ヴィーニュ」とそのままの名称で樹齢40年以上の樹のブドウを使うシリーズの白ブドウ品種「オーセロワ」2016年ヴィンテージ。甘く華やかで、酸味はあまり強くない。

ピンとした酸味やとろりとした舌触りを求めるなら、同じヴィエイユ・ヴィーニュの2017年ヴィンテージのピノ・グリ。樽を使ったシリーズで、そのまま「フュ・ドゥ・シェーヌ(オーク樽の意)」というラインではエンシュベルグというリュー・ディの「ピノ・ブラン」が上質だった。わずかについた樽香は上品で、酸とミネラルのバランスが優れている、高級感のあるワインだ。

白ワインにわずかに樽香をつけるのは最近のトレンドで、「スピリッツ・オブ・シェンゲン」という、国際的な舞台で勝負を賭けているシリーズの「ピノ・グリ」においても樽が使われている。とはいえ、こちらは樽香はほぼ感じず、2016年ヴィンテージは、むしろまろやかに落ち着いて熟成したワインといった印象だった。

今回試飲できたワイン。通常の辛口だけでなく、ヴァン・ド・パイユ、レイトハーベストといった甘口もある

そして、「私達はクレマンにおいてもルクセンブルクのリーダーだから」というクレマンも豊かなラインアップを誇る。

ルクセンブルクのスパークリングワインの歴史は19世紀、シャンパーニュメゾンがルクセンブルクでスパークリングワインを造ったことに直近の原点がある。当時のそれは、シャンパーニュとして流通した。

その後、フィロキセラ、第一次世界大戦と、ワイン業界の苦難の時代をルクセンブルクも経験したけれど、ヴァンモーゼルの創業者、ポール・ファベルは、その名にちなんだ「ポル・ファベル(Poll-Fabaire)」というスパークリングワインで、戦後のルクセンブルクワイン業界を再興、牽引したのだった。

1991年、フランス以外で唯一、「クレマン」の呼称を使うことを許されるにあたっても、ヴァンモーゼルは主導的な役割を果たし、ポル・ファベルは、いまもルクセンブルクワインを代表し牽引するクレマンのブランドだ。

ルクセンブルクで、クレマンの基本となる品種は、オーセロワ、ピノ・ブラン、リースリング。

ヴァンモーゼルでは、ピノ・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、それぞれの単一のクレマンも試すことができる。

父はシャンパーニュとはいえ、たとえばシャルドネ100%のクレマンは、ミネラル感、にがみ、など、シャンパーニュのブラン・ド・ブランのイメージよりも、ブルゴーニュなどのシャルドネのスティルワインのイメージにちかい。

またクレマンにおいてピノ・ノワールは、ピリッとスパイシーである。

最上級は「スピリッツ・オブ・シェンゲン」のクレマン。オーセロワとピノ・ブランを主体に、リースリングとピノ・ノワールをくわえたルクセンブルクブレンドだ。ルクセンブルクのクレマンの規定である9カ月の倍、18カ月間の瓶内熟成で、これは、シャンパーニュのスタイルの上質にして素直なフォロワーだった。

「スピリッツ・オブ・シェンゲン」のようなアプローチは、国際的な舞台で勝負できるだけの実力がルクセンブルクにあることの雄弁な証明ではあるけれど、ルクセンブルクワインに馴染みのない我々は、むしろ他産地にはない個性的なワインを発掘するのが楽しいはず。

ルクセンブルク観光で、時間が限られているならば、ワインはここだけ、ワイナリー巡りをするならば、ここから。ヴァンモーゼルに来れば、ルクセンブルクのワインの輪郭を把握できる。

 

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