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南半球格上ワイン(5) アルゼンチン(最新事情編)

なんといってもアンデスの恵みがメリット

南半球格上ワイン特集は、2016年のワイン生産量世界第5位、消費量第8位アルゼンチン。南米では、お隣のチリと並ぶワイン大国です。アンデスの恵みがプレミアムレンジにも広がり始めている。ワインナビゲーターの岩瀬大二さんが紹介します。

文 : 岩瀬大二 画像 : Wines of Argentina

標高900〜1800メートルでのワイン造り

生産量、消費量ともに世界有数のワイン大国であるアルゼンチン。しかし、輸出に力をいれはじめたのはここ20年。ということで日本ではまだ知名度が高いとは言えないのが現状だろう。

生産地域は全土に広がるが、約8割と大多数のワインを生み出す中心的な産地は、メンドーサとサンファンなどその周辺地域。大西洋岸の首都ブエノスアイレスから直線距離で約1000㎞、アンデ
ス沿いに南北に広がる地域だ。ここでは世界標準をはるかに超える標高900〜1800メートルという高地でワイン造りが行われている。

メリットはなんといってもアンデス山脈の恵み。

海からの影響を全く受けないため、基本的には乾燥地域だが、アンデスの万年雪、銀嶺からの風、豊富な水により適度な湿度がある。この適度な湿度は日照量の多い夏、寒い冬との温度変化を安定させ、さらに健康的なブドウ育成にも寄与する。

メンドーサで使用される主なブドウ品種は、白ワインでは、トロンテス、シャルドネ、赤ワインでは、アルゼンチンを代表するマルベックのほか、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーなど多彩だが、近
年ではカベルネ・フランも注目されている。

メンドーサ地域は、大資本を生かした先進的で大規模なワイナリーも多いが、一方で昔ながらの職人的な造り手やブティックワイナリーも多い。そのため醸造、熟成については、オークのほか、ステンレス、コンクリートタンクなど多彩なスタイルが用いられている。

評価が高まっているパタゴニア地域

アンデス地域ではメンドーサのほか、サルタやラ・リオハも注目エリア。北西部に位置し、昼夜の寒暖差が激しい乾燥地域で、アルゼンチンを代表する白ワイン品種トロンテスが主要なブドウ。

アンデス以外に目を移すと、近年評価が高まっているのがパタゴニア地域。首都ブエノスアイレスから南へ。南半球にあるアルゼンチンは当然、南に下れば寒くなる。高地メンドーサと比較してこちらは低地だが、冷涼地であり、美しく豊かな酸を持つワインが生まれるという強みがある。優しくも芯がしっかりしたピノ・ノワール、エレガントなタイプのマルベックなど様々な可能性を持つなか、フランスのジュラやサヴォワといった地域で知られる品種トゥルソーをはじめ、新たな挑戦も始まっている。スパークリングワインの名産地としての将来もありそうだ。

 

直近の話題ではブエノスアイレスにほど近い大西洋岸のマル・デル・プラタ近郊。まだこのエリアのワインは、日本はもちろん、世界でも知られていないということで、今後の動きに注目したい。

 

現況としては、ワインをある程度知っている方には「メンドーサ×マルベックという組み合わせ」であったり、「ビッグBBQに合う、豪快で大らかな昔のイメージのワイン」というイメージがあるが、「メンドーサ以外の地域への広がり」、「多様なブドウ品種への広がり」、そこから生まれる「美しさや優しさ、一方で冷涼なエレガンスなどテイストの広がり」、さらに「格上を感じさせるブレミアムレンジへの広がり」など、ここ10年のアルゼンチンは、従来のイメージだけでは語れない面白さを持っている。

 

その一方で、アルゼンチンではかなりの収穫量を持ちながらも日本では無名といっていいボナルダを使った飾らないワインから、アルゼンチンの国民食アサード(牛肉の炭火焼きなどの焼肉・ステーキ料理)と合うワインまで、まだ日本ではその真髄が知られていないだけに、日本においては、伝統も新進もどちらも存分に楽しめるだろう。

 

 

 

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