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南半球格上ワイン(10) 南アフリカ(最新事情編)

フランスのクオリティ、イタリアの多様性、チリのコストパフォーマンス、そのすべてがある

南アフリカワインは、350年のワイン造りの伝統を持つ一方で、民主化した1990年以降に世界への扉が開かれたこともあって新しさも備えている。旧世界と新世界のいいところを兼ね備えているのだ。マスダの南アワイン専門店の三宅 司さんがわかりやすく解説する。

文・画像 : 三宅 司株式会社マスダ 南アフリカワイン バイヤー兼営業)

ブドウ畑が広がるステレンボシュ地区。シュナンブラン、シャルドネ、
カベルネ・ソーヴィニヨンほか、ボルドー赤品種が栽培されている。

旧世界と新世界の魅力を兼ね備えたワイン

南アフリカワインの歴史は、17世紀、当時オランダがアジアとの交易の中継地点として、アフリカ大陸の南、現在の南アフリカ共和国の南西に位置するケープタウンに港を開き、そこに移住した人たちがヨーロッパから持参したブドウの苗木を植えたことから始まった。正式には1655年に最初のブドウが植えられ、1659年に最初の南アフカワインが誕生している。

その後、17世紀後半には、ヨーロッパの宗教改革で迫害されたフランス人農民たち(ユグノーと呼ばれた新教徒)が南アフリカに渡ってきて、ワインの生産は更に発展していく。

その後も南アフリカワインは、ヨーロッパへ輸出されていたが、第二次大戦後のアパルトヘイト(人種隔離)政策により、一時期、国際市場から閉め出されていた。

それから1990年代に入り、民主化と共に南アフリカワインは再び世界に広がっていく。最近では日本でも多く、少なくとも600種類以上の南アフリカワインが流通するようになった。

次に南アフリカワインの魅力について語ってみよう。

実はワイン好きな人たちにとって、南アフリカほど魅力的なワイン生産国はないのではないか? あるソムリエは、「南アフリカワインを一言で表現するなら、フランスのクオリティ、イタリアの多様性、チリのコストパフォーマンス、そのすべてが南アフリカワインにはある」と。

カノンコップ・ポールサウアー。ステレンボシュ地区で造られている、南アを代表するボルドーブレンド。

最近、南アフリカワインにハマるファンが増えている。それもそのはず。南アフリカワインには沢山のアドヴァンテージがあるからだ。

まずは、土壌と気候から。

南アフリカの土壌は世界で最も古く、5〜10億年前に遡る。それだけ多くのミネラルや養分が含まれている。さらに、豊かな太陽の日差しに恵まれ、ブドウ栽培に適した地中海性気候で、丁度よい降水量に、美味しいブドウを作るために必要な昼夜の寒暖差も十分にある。大西洋から吹く冷たくて強い風は、ブドウ畑を冷涼に保ち、カビなどの病原菌を吹き飛ばしてくれる。その結果、防カビ用の農薬は少なくて済む。

また、ケープタウン周辺のワイン産地は、世界で最も植物が密集している地域(ケープ・フローラルキングダム)として、ユネスコの世界自然遺産に登録されている。南アフリカの95%のブドウ畑がこの世界自然遺産の中に入っている。その結果、南アフリカワイン産業界は、この豊かで多様性のある自然を守るために、厳しい農薬基準を設け、各ワイナリーは、減農薬、自然に優しいワイン造りを実践している。そのサステイナブル(持続可能)な農業を行っている証明として、南アフリカワインには必ずサステイナブル証明シールが添付されている(写真下)。

また、SO2(酸化防止剤)の使用基準(250ppm)は世界で最も低い国の一つだ。

味の面では、南アフリカのワインは「旧世界(ヨーロッパ)の酸味やエレガンス、新世界(南北アメリカ大陸やオーストラリアなど)のフルーティな果実味の両方を兼ね備えている」と言われている。フランスワインが好きな人にとっても、カリフォルニアワインが好きな人にとっても両方の人たちにも好まれるという「いいとこ取りのワイン」なのだ。

シャルドネとピノ・ノワールに強いワイナリー、ポールクルーバー(エルギン地区)。

ボルドー系もブルゴーニュ品種もワールドクラスの1級品

ブドウ品種においては、たとえば、カリフォルニアやチリならカベルネ・ソーヴィニヨンが有名。オーストラリアでは、シラーズが、ニュージーランドならソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールなど、それぞれに得意の品種がある。

南アフリカは、シャルドネもシュナン・ブランもソーヴィニヨン・ブランもスパークリングもピノ・ノワールもシラー(シラーズ)もカベルネ・ソーヴィニヨンやボルドーブレンド、ロゼや甘口のデザートワインに至るまで、単に揃うだけでなく、すべてワールドクラスの1級品が揃う。

その品質があって、更に価格面では、日本の小売価格で2000円台や3000円台の南アフリカワインは、フランスの5000円や6000円の品質の物と同等クラスの価値がある。

こうして、気候条件、自然に優しいワイン作り、味、品種の品揃え、品質と価格のコストパフォーマンスのよさなど、最初に述べたように、これほど条件が揃っているワイン生産国はほかにない。もちろん、これらのアドヴァンテージに、各ワイナリーの品質向上への絶え間ない努力も加わっているので鬼に金棒だ。

南アフリカワインを選ぶ際には、ラベルの表か裏に表記されている「Wine of Origin(WO : 産地呼称)」も参考になる。

まずは、どの品種もバランスよく平均点以上の質の物が揃う伝統的な産地「ステレンボシュ Stellenbosch」。特にカベルネ・ソーヴィニヨンほか、ボルドー系赤品種は優れたものが多い。最近注目されている新しい産地としては、シャルドネやピノ・ノワールなど、優れたブルゴーニュ品種を産出している「エルギン Elgin」や「ヘメルアンアード Hemel-en-Aarde」、シラーやシュナン・ブラン、ローヌ系品種が得意な「スワートランド Swartland」などがある。

南アフリカが民主化された1994年以降、これまでの20数年を振り返ってみよう。

南アフリカのワインは、以前より、テロワールにこだわる(その地域の土壌や気候を表現した)ワイン造り、天然発酵の増加やオーク樽の風味を減らし、ワインそのものの味を表現する造り、オーガニックやビオディナミ農業などの自然回帰、樹齢35年以上のブドウを「古木」として証明し、それらを保存する動き(前述のスワートランドほか)、よりエレガントなワインを造るために、大西洋岸や南方の冷涼な地域(前述のエルギン、ヘメルアンアードほか)、シダバーグやピーケニアスクルーフなどの標高の高い産地の開発が進んでいる。私も毎年現地を訪問しているが、南アフリカのワインは、以前より洗練され、綺麗なワインが増えている。

南アフリカワインの魅力を色々と述べてきたが、ワインなので最終的には美味しくないとダメなのだ。とにかく、まだ南アフリカワインを飲んだことのない方は、まずは店頭で2000〜3000円クラスからトライしてみてください。きっと貴方の見方も変わるはずです。

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