イタリアワインを語る上で最も重要なワイン評価誌ガンベロロッソにて、「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、イタリア最高の生産者に輝いたアレグリーニ。16世紀初頭からイタリア、ヴェネト州にてワイン造りを行い、名声を築き上げてきた家族経営の名門ワイナリーです。世界最高峰として高い評価を受ける偉大なアマローネや、独自に生み出した製法で造られる人気ワイン、パラッツォ・デッラ・トーレをはじめ、コストパフォーマンスが秀逸なヴァルポリチェッラなど、そのラインナップは個性豊かで芳醇なものばかり。モダンで美しいその銘品たちは、一度味わえばきっと虜になってしまうはずですーー

というのが、アレグリーニを輸入する「エノテカ」によるアレグリーニの紹介文言。筆者、アレグリーニ一族の6代目、マリリーザ・アレグリーニさんを囲んでのプレスディナーへのご招待を受けたのでした。

マリリーザ・アレグリーニさん。手にしているのは「ラ・グローラ」の限定ボトル

スーパータスカンの聖地から

かくして、おおいに期待してディナーへと赴いた筆者の前に最初に登場したのは「ポッジョ・アル・デゾーロ・ソロソーレ」という白ワインの2017年ヴィンテージだった。最初に酸味、追って酵母に由来するようにおもわれるとろりとして、ちょっとナッツのような香りがするまろやかさがやってきて、後味に甘みを感じる。なんとも、エレガントで上質な白ワインではないですか。エノテカのサイトでは4,000円だそう。高級品です。品種はヴェルメンティーノ。15haの畑を65人がかりで、一気に暗いうちに収穫してしまう……とマリリーザさんは話はじめた。

「私も、収穫に参加するんです。最近、忙しくてなかなか参加できていないのですが」

と、頭にライトをつけた自分の写真を見せてくれた。酸化しないように醸造し、バトナージュはちょっとだけ。ステンレスタンクで育てて、出荷の1カ月前にボトリングする。

さて、この白ワインは、ボルゲリというところで造られている。トスカーナ州の州都、フィレンツェから、西へ、ティレニア海の方にいくと、斜塔で有名なピサがあって、そこから南に75kmくらい下ったところだ。もっと短く言えば、ボルゲリは、「サッシカイア」があるスーパータスカンの聖地だ。「ポッジョ・アル・テゾーロ」というのは、マリリーザさんが2001年に設立したワイナリーの名前。

「ボルゲリは誰が行っても好きになるようなところ。楽園よ!」

と言う。

「4,200本の樹齢100年以上の糸杉の美しい並木があるの。自然が美しい、ワインが素晴らしいところです。でも、サッシカイアが有名にするまで、ボルゲリは世界的には無名でした。20km北でも南でもだめ。ボルゲリだけにある環境が高品質なワインを生みます。畑が集まっているのは海から5kmほどのところです。ボルゲリ街道という道があり、そこに重要なワイナリーがかたまっています。海岸、砂浜ときてすぐ丘陵。丘陵と砂浜の間のわずかなスペースが、一番いいブドウの生産地です。地中海には8つの風があるといい、常に風が吹いています。日当たりはよく、土はエレガント。丘陵には金属質が多く、川がそれをミネラルとともに運んできます。アレグリーニは街道から砂浜よりの15haの畑を買うことができました。サッシカイアは街道から丘陵側の畑。私たちの畑は、半分はすでに植樹されていて、土壌分析もされていました。おかげで、正しい品種を植えられました」

ソンドライエと呼ばれる「ポッジョ・アル・デゾーロ・ソロソーレ」の畑

「サンジョヴェーゼはあまりうまくできないけれど、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといった国際品種が成功している土地です。私たちにとって、発見だったのはカベルネ・フランもうまく育つことでした。そして、白が造りたいとおもっていたので、2004年に、ヴェルメンティーノを植えました」

「ヴェルメンティーノは多産な品種です。房も大きい。私たちは、そのヴェルメンティーノから、軽くて飲みやすいだけの白ワインではなく、凝縮したブドウから造られた、長期熟成しても酸味がしっかり残って、ミネラルもちゃんと感じられるワインが造りたかったんです」

「それが高望みなのはわかっていましたが、栽培責任者はそれでも頑張ってみようといってくれました。そのためにはヴェルメンティーノはコルシカクローンでないといけない、というアドバイスもあり、熟すと琥珀色になるコルシカクローンを植えました。酸味が不足したら、プティ・マンサンをブレンドして補おうと考えていたのですが、2007年のファーストヴィンテージで、そんな必要はなかった、とわかりました」

「ポッジョ・アル・デゾーロ・ソロソーレ」

ヴェルメンティーノ

「ヴェルメンティーノはボトリングしてすぐはソーヴィニヨン・ブランっぽい雰囲気なんです。でも、2007年ヴィンテージを残していますが、これは今飲むと、むしろリースリングのような雰囲気があります。熟成によって変化するのです」

ちなみにイタリアではワインはすぐ飲んでしまうのが国民性だ。何年も前のヴィンテージのワインをとっておく、という文化は一般的ではない。にもかかわらず、この日は2010年ヴィンテージの「ポッジョ・アル・デゾーロ・ソロソーレ」が登場した。こういうワインはイタリアでは名店のソムリエがセラーにとっておいて、通の要望に応えるべく、さっと出すのだろう。いやはや、恐縮です。いただきます!と口をつけようとしたら、むんむんと熟成したワインならではの香りがたちのぼってくる。周囲からはペトロール香などというワードも聞こえる。リースリングのような雰囲気とはそのことか。

「ガヤやサッシカイアのオーナー、ニコロ・インチーザ・デッラ・ロケッタも飲んでいるワインよ」

と、マリリーザさんがハードルを上げる。いよいよ、口に含むと、苦味を感じる。矛盾するようにも感じられるかもしれないけれど、2017年ヴィンテージの爽やかさとくらべると、なんだかほっとする温かみがある。すーっとさわやかな酸も心地よい。

はぁ、とため息をつく。敷居が高くて近寄りがたいワインというわけではないはずだ。でもこれは大人っぽい。筆者も十分におじさんだけれど、これは、もっと自分に似合うようになったら再会しよう。このワインが似合う人はかっこいいはずだ。

伝説的ブドウ産地の復活

マリリーザさんはとにかく、話したいことがいっぱいある。それはそうですよね。ワインを愛する人がそろっている夕食会なのだから。しかもマリリーザさんの馴染みの顔も、日本のワインメディアには何人もいるのだ。イタリアワインの展示会「ヴィニタリー」と『ワインスペクテイター』誌が、1万人の消費者を対象に、期待しているブドウ品種を聞いたところ、1位がピノ・グリ(ピノ・グリージョ)で2位がヴェルメンティーノだったとか、自分が考案した、ショウガ風味のスズキのラヴィオリがこのワインに合うとかいう話で盛り上がっているうちに、すでに1時間ほどが経過していた。

誰ともなく、そろそろ次にいきましょう、となって、今度はヴェネト州の西、ヴァルポリチェッラの赤ワイン「ラ・グローラ」がグラスに注がれた。ラ・グローラとは、畑の名前だ。ちなみにこれは、リミテッドエディション。ラベルデザインに芸術家を起用しており、最新のエディションは増山裕之氏という、デュッセルドルフ在住の日本人芸術家が担当している。グローラの畑の写真を日時を変えて複数枚撮影し、これらをモザイク状に組み合わせて一枚の絵にしたもので、ボトルの後ろから光があたると、グローラの丘に神様が降臨してきたかのように見える、と、マリリーザさんは言うのだった。

「ラ・グローラ・リミテッド・エディション」2016年ヴィンテージ

その、ラ・グローラは、伝統的なブドウ産地で、イタリア統一前は、ここのワインが一番関税が高かったそうな。つまり歴史的銘醸地。ところが、1950年代、60年代には、そんな伝説はすっかり忘れられ、イタリアワインは質より量。量産に向かぬ丘の畑などは忘れて、平地でじゃんじゃん造ろう、ということになっていたそうだ。

しかし、アレグリーニを、いや、イタリアワインの格をぐっと高いものとしたマリリーザさんのお父上、ジョヴァンニ・アレグリーニは、質の高いワインを造りたい。1978年に、グローラの畑が売りに出たと知ると、そこを買った。当時、ジョヴァンニは醸造所を建てたばかりでお金がなく、しかも、見捨てられても伝説的な土地だからか、グローラの畑はおもったよりもずっと高かったそうだ。

「当時はむちゃくちゃだと誰もがおもった」

とマリリーザさんも言う。しかしこの投資は、大きなリターンを生んだ。グローラは美味しい、売れるワインを生み出す地として再発見されたのだ。

畑は眼下にガルダ湖をのぞみ、南東に面する。日照は十分。さらにガルダ湖からの照り返しもブドウにエネルギーをもたらす。北には高い山があり、冷涼な風を送り込むと同時に、寒すぎる風はブロックしてくれる。土壌はカリウム、カルシウムを含む石灰質。

この地を再発見したことも、棚仕立てであるペルゴラではなく、ダブルギュイヨでブドウを育てたことも、陰干しをせず、凝縮感のあるブドウを育てたことも、革新的だった。ラ・グローラの9割、主調を成す品種はコルヴィーナ。まろやかな酸味、そしてタンニン。甘味のある後味。マリリーザさんは、コルヴィーナをヴァルポリチェッラでいちばん重要な品種で、ラ・グローラはコルヴィーナの特徴をすべて感じられるワイン、チェリーのトーンがとりわけコルヴィーナの特徴だという。

ラ・グローラからガルダ湖を望む。湖のそばの畑では、水面で反射した日光がブドウの育成にしばしば重要な役割を果たす

美しく整備された、ラ・グローラの畑

いよいよ、夜も更けてくる。そして、グラスには、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノが注がれる。サン・ポーロ。2013年ヴィンテージ。エノテカ価格8,000円の赤ワインだ。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部

つゆ来りなば 夏遠からじ


緑が空の青さに輝いて


夏のお嬢さん ビキニがとってもステキね


夏はこころの鍵を甘くするわ ご用心


誘惑の甘い罠


お酒はハタチを過ぎてから