キャンティの地位向上に貢献したキャンティの名門「カステッロ・ディ・アマ」のオーナー兼醸造家マルコ・パッランティさん。彼こそ、20年以上前、柳 忠之が感銘を受けたトスカーナのメルロー「ラッパリータ」の造り手だった。

左から順に、白ワインの「アル・ポッジョ 2016」。標高520メートルの北東向き斜面に植えられたシャルドネから造られ、ミネラリーでテンションの高いスタイル。
パープル・ロゼ 2017」はこの2017年から造りが変わり、一部樽発酵。濃いめの色調で厚みのある味わい。変わったことをアピールするためこのネーミングに。ラベルは草間彌生を意識している。
グラン・セレツィオーネの「サン・ロレンツォ 2014」。「サン・ロレンツォ畑のブドウでベストを造ることが最優先事項」とマルコはいう。サンジョヴェーゼ80%、メルロー13%、マルヴァジーア・ネーラ7%。エレガントで余韻が長く、ノーブルな雰囲気で満ちている。
2つのクリュものはどちらも2007年。「ベッラヴィスタ」は標高500メートルの南南西向き斜面のクリュ。土壌はガレストロ。凝縮感に富み、しなやかなテクスチャーだが骨格もしっかりしている。 「ラ・カズッチャ」は標高480メートルの西南西向き斜面。土壌は小石の多い粘土石灰質。ストラクチャーがより強く背筋がぴしっと伸びた味わい。 メルロー100%の「ラッパリータ」も2007年。しなやかでシルキーなテクスチャー。重みや緩みのない、エレガントなスタイルのメルロー。

銀座にエノテカ・ピンキオーリがあった頃、彼女と開けた1本

個人的な話題からスタートして申し訳ないが、カステッロ・ディ・アマは思い出深い造り手だ。まだ銀座にエノテカ・ピンキオーリがあった頃、トスカーナ出張前の彼女(ご心配なく。現在の家内です)とランチに行き、ふたりで開けた1本がカステッロ・ディ・アマの「ヴィーニャ・ラッパリータ(現ラッパリータ)」。ヴィンテージは1987年だった。

トスカーナのキャンティ・エリアで、これほどまでに素晴らしいメルローを造る生産者がいるのかと、心から感動した。

あれから20年以上の歳月を経て、ついにその造り手と出会えた。マルコ・パッランティ。カステッロ・ディ・アマのオーナーであり、1982年からワイン造りに従事している。







マルコ・パッランティ Marco Pallanti
30年以上にわたりカステッロ・ディ・アマのワイン造りを担うオーナー兼醸造家。2003年にガンベロ・ロッソ発行の「ヴィーニ・ディタリア」でワインメーカー・オヴ・ザ・イヤーに選出。2006年から12年まではキャンティ・クラッシコ協会会長を務め、グラン・セレツィオーネの制定に尽力した。

「カステッロ・ディ・アマは3家族によって所有され、私の妻の実家もそのひとつでした。1982年に私はアマに来て、ワイン造りに携わることになりましたが、当時、イタリア国内には最先端のワイン醸造を学べる大学はなく、フランスに渡り、ボルドー大学で学んだのです。

その時に、シャトー・ムートン・ロッチルドの醸造責任者だった故パトリック・レオンと知り合い、彼にこの土地に最も適した品種は何かと尋ねました。彼は即座にメルローと答えました」

メルローを植えたのは、標高490メートルに位置する粘土石灰質土壌の土地。それまでカナイオーロとマルヴァジーア・ネーラが植わっていたが、その根を残し、メルローの穂木を接いだ。

ラッパリータの初ヴィンテージは1985年。筆者がピンキオーリで味わったのと同じ1987年ヴィンテージはスイスのアカデミー・デュ・ヴァンが主催したブラインド・テイスティングで、ペトリュスやル・パンなど世界的なメルローを打ち負かし、一躍スターダムに躍り出た。そのテイスティングにはメルローの神様ことミシェル・ロランも審査員として名を連ねていたという。

キャンティ・クラッシコの素晴らしさを表現するために

いささか思い入れの強いラッパリータの話ばかりしてしまったが、アマの真骨頂はなんといってもキャンティ・クラッシコである。70ヘクタールのブドウ畑はガイオーレ・イン・キャンティの近郊、標高450~550メートルの高地に位置する。

キャンティ・クラッシコでは2013年に、従来のリゼルヴァの上に「グラン・セレツィオーネ」を設けたが、アマのそれが「サン・ロレンツォ」。1982年から14年かけてブドウ畑の区画を整理したマルコ。このサン・ロレンツォにはブドウが一様に熟す、およそ40ヘクタール分が充てがわれる。

さらに、「キャンティ・クラッシコの素晴らしさ、テロワールの違いを表現する」ために造られているのが、クリュ(単一畑)の「ベッラヴィスタ」と「ラ・カズッチャ」。

「当時はスーパー・タスカンとの葛藤があった。(DOCGを捨てIGTトスカーナを選んだ)『レ・ペルゴーレ・トルテ』や『チェッパレッロ』がキャンティ・クラッシコに戻ってくる受け皿になればよい」

と語るマルコの目には、キャンティ・クラッシコに対する愛情と矜持が溢れていた。

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WINE-WHAT!? 編集部
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