• TOP
  • #WINE
  • カリフォルニアワインの新ブランド「スカイサイド」誕生

カリフォルニアワインの新ブランド「スカイサイド」誕生

ニュートンのレガシーを継承したカジュアルなワイン

ナパ ヴァレーのテロワールを表現する高品質ワインの造り手「ニュートン」から、日々の食卓を彩る、カジュアルなワインブランド「スカイサイド」が独立した。スカイサイドの若い女性醸造責任者アン・デンプシーに、カリフォルニア発の新ブランドについて聞いた。

アン・デンプシー|Anne Dempsey

スカサイドのワインメーカー。カリフォルニア大学デービス校でブドウ栽培とワイン醸造学の学位を取得し、その後ニュージーランドのマールボロと南アフリカのフランシュック ヴァレーで経験を積む。故郷のナパ ヴァレーへと戻ってからは「クロ ぺガス」でアシスタントワインメーカーとして2年間勤め、ソノマの「グンラック ブンシュー」でエノロジスト、後にワインメーカーとして10 年間働く。ソノマ州立大学で経営学修士号も取得している。
今回が初来日。「ウルフギャング ステーキハウス 丸の内店」にて。写真/阿部昌也

大空を舞う鳥のように、カリフォルニアを表現する

カリフォルニアのワイナリーのなかでも、ナパ ヴァレーの山肌でブドウを育てることで、精密なワインを造る、という発想の先駆者であり、またサステイナブルな農業でも先駆的な「ニュートン」。そのニュートンから、「スカイサイド」というブランドが独立した。

スカイサイドの原点は2007年の「ニュートン レッドラベル」にある。それが、赤ワインは2016年、白ワインは2017年ヴィンテージから「ニュートン スカイサイド」という名前になり、そして今年、ニュートンから独立して、「スカイサイド」というブランドとなった。日本でのスカイサイドのローンチにあたって、赤ワイン「レッドブレンド」の2017年、白ワイン「シャルドネ」の2018年ヴィンテージとともに、スカイサイドの醸造責任者、アン・デンプシーさんが来日した。

スカイサイドの最大の特徴は、ナパだけにこだわらないこと。ブドウは、ナパ以外にもメンドシーノ、ソノマ、レイク、ソラノとカリフォルニアの北部、ノースコーストの畑のものを使用する。

スカイサイドのロゴは畑の上を鷹が飛ぶ、というもの。広いノースコーストの上空を飛ぶ鳥のように、ノースコーストの各地から、これぞ、という優れたブドウを探し出して、ワインを造る、という「鷹の目」をもったワインのスタイルを図像化したものだ。

スカイサイドのイメージビジュアルとロゴ

「鷹のように空を飛べれば、この畑のブドウは素晴らしい、と下に降りて、ブドウを吟味して、ということもできるでしょう。でも、現実は、私が、各地の畑を訪れて、ブドウを探し回ったんです。」

結果、15から20ほどの畑、ブロックで言えば30から40のブロックからブドウを入手している。

アン・デンプシーさんは、それらのブドウからワインを造り、ブレンドする。その作業が楽しい、と言う。

「土地の個性、その年の個性が色濃く反映されたブドウを見つけてきて、様々な層をもちながらも、ひとつのワインとしてまとまったものにしてゆく。この構築的な作業が私は好きなんだと思います」

祖父がイタリアからの移民だというアン・デンプシーさんの家庭のテーブルには、常に美味しい母の料理と共にワインがあり、自然と、食に興味を抱いた。カリフォルニアの農業系名門大学、カリフォルニア大学デービス校に入学すると、サステナビリティの勉強をしはじめ、ワインに出会う。テクノロジーとクリエイティビティが融合するワインに魅了され、同時に、自分のファミリーのルーツがそこにあると直感したという。以来、ワインの造り手として経験を積み、直近ではソノマの家族経営のワイナリーでワインメーカーとして仕事をしていた。

「スカイサイドに関わりたい、と思った理由ですか? それは、家族や友達と、気軽に飲めるワイン、毎日の食卓を彩るワインを造りたい、と思ったからです。スカイサイドの前に仕事をしていたワイナリーは小規模でした。30種類くらいのワインがあり、1種類ごとの生産量は少なく、価格も、これはまちまちですが、200ドルするような高級なものもありました。気軽とは言いづらかったのです」

「スカイサイド シャルドネ」、「スカイサイド レッドブレンド」はいずれも日本での希望小売価格2,900円。どちらのワインも、気軽で、食事と合わせやすい、という個性をもっている。

懐深いシャルドネとレッドブレンド

「スカイサイド シャルドネ 2018」は、アルコールの香りとともに爽やかなライム系の香りがする。口に含むと、まろやかな酸味からハチミツやバターのような甘味と旨味へと味わいが移ろい、そのまま余韻へとつづいてゆき、食欲を掻き立てる。表情を変えてゆく層状の表現と、食事の味に負けない背骨の強さ。魚介や白い肉、クリーミーな料理……様々なペアリングが実現するだろう。

技術的な話では、バトナージュは週毎におこない、アンさんが、やりすぎるべきではない、と考えるマロラクティック発酵は、全体の30%ほどで留めている。樽の使用比率は65%ほど。フレンチオークで新樽比率は20%程度だという。4年程度の熟成によって、さらなる味わいの展開も期待できるそうだ。もちろん、今すぐ飲んでもいい。

スカイサイド シャルドネ 2018
メンドシーノ、ソノマ、レイク、ソラノ、ナパの5つのワインの産地のブドウを使用。ノース コーストの多様性を表現したシャルドネ。アルコール度数は13.4%。pH3.53、酸度5.6g/L。希望小売価格は2,900円(税別)

スカイサイド レッド ブレンド 2017
メンドシーノ、ソノマ、レイク、ソラノ、そしてナパの5つのワインの産地で栽培されたブドウを使用。メルロ 44%、プティ・シラー29%、カベルネ ソーヴィニヨン24%、カリニャン2%、シラー1%という品種構成。アルコール度数は14%。pH3.78、酸度5.2g/L。希望小売価格はこちらも2,900円(税別)

一方の「スカイサイド レッドブレンド2017」は、葉巻のような、甘くスモーキーな香りがある。干しブドウのように熟したブドウと樽、しっかりとしたアルコールによるものだろう。とはいえ、味わいはジャミーなものではいささかもなく、さっぱりとした切れ味とまろやかな暖かみが両立している。

「メルロを中核としたミディアムボディの赤ワインです。それが私の考えるスカイサイドの赤ワインの姿。暖かみがあり、食事に合わせやすいワインだと思っています。カベルネ ソーヴィニヨンやプティ・シラーを組み合わせていますが、それは料理でいえば付け合せやソースのようなイメージ。主役のメルロを引き立てる役割ですね」

除梗したブドウを14日から18日間かけて発酵させ、フレッシュさとフルーティーさのバランスを取るためフレンチオークの新樽を30%使い、10ヶ月間樽熟成する。出来上がったワインは5年程度の熟成が期待できるという。

グリル料理やタジンにも合う、とアンさんがいうように、ペアリングの懐が深いカリフォルニアの赤ワインらしさは、軽やかなスカイサイド レッドブレンドにもある。むしろ、重たくないがゆえに、より懐が深い、といえるかもしれない。

ニュートンの兄弟として、独立した新ブランドとして

カリフォルニアのワイン、特にナパ ヴァレーのワインの特長として、時代に左右されない伝統への敬意と、一貫性があるとするならば、スカイサイドのワインで期待させられるのは、新しいブランドゆえの現代性と自由な表現だ。

その一方で、スカイサイドは40年の歴史を誇るニュートンと兄弟・姉妹の関係。ニュートンの伝統から学ぶところも多いという。醸造家として16年もの経験を誇りながら、まだまだ勉強中と言うアンさんに、将来の展望を聞いてみた。

「私はソノマの州立大学で、経営学も学んでいます。ワイナリーの経営にも興味があるんです。新しく独立したブランドとしてスカイサイドを確立してゆくこと、そして、サステナビリティを学んだ一人として、ワイン業界をリードするニュートンの兄弟ブランドである、スカイサイドなりのサステイナブルなワイン造りを実践していくことは、私がやるべきことだと考えています」

豊かな学歴と経験を誇りながらも「自然が一番の教科書」というアン・デンプシーさん。カジュアルなワインだからといって、努力を惜しむことのない姿勢も、新ブランドを任された理由かもしれない。

この記事を書いた人

WINEWHAT
WINEWHAT
YouTubeInstagramでも、コンテンツ配信中!
フォローをお願いいたします。

Related Posts

PAGE TOP