春霜、雹、育成遅延、ベト病、猛暑を経て、今年のブルゴーニュの畑はどうなっているのか….…。収穫を直前に控えた葡萄畑の現地リポート。

写真・文/染谷文平

苦渋の決断

毎年、収穫間近の時期に、ブルゴーニュ(Bourgogne)を廻る事にしている。その時期の葡萄の状態が、その年のワインの味わいのヒントになるからだ。

とりわけ、今年の作柄は非常に興味深いものがある。前回のリポート「フランスワイン、ヴィンテージ2016年の春の状況。」で見た通り、4月の霜によって、多大な被害を受け、収穫量はかなり減少。さらに追い打ちをかけるように、雹の被害が重なったアペラシオンもある。そして雨がちの春の天候は、葡萄の成長を大幅に遅らせ、ベト病(Mildiou)の蔓延を許す事になった。

最後の最後に、ブルゴーニュを襲った恐るべき災厄は、このベト病であった。葉に感染するだけでなく、房にまで感染したこの病気に対抗するためにはボルドー液を蒔くしかないのだが、減農薬をかかげる生産者にとっては辛い選択肢である。畑を守るために、ビオ認定を捨てて、ホスホン酸(Phosphonate)を蒔いた生産者もいる。2016年のブルゴーニュの多くの生産者にとって、苦渋の決断を要するヴィンテージとなった。

今回は、9月12-13日の2日間で、ブルゴーニュの畑を観察した事を、写真を中心に考察してみた。 

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ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ(Beaune Clos des Mouches)。それほど悪い状態ではなく、もっぱらここ数年よりも多いくらいの房がついていた。とはいえ、ベト病(Mildiou)の影響が多く、葉だけでなく、実にまで被害が及んでいる。

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ヴォルネ・サントノ(Volnay Santenots)。腐敗が始まるほど、糖分の熟した房と、まったく色付きが終わらない房が同じ枝で見られる。春の霜が降りたタイミングによって、葡萄の成熟度にばらつきが生まれた一つの例。

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霜の影響があまり見られない、オーセイ・デュレッス・クロ・デュ・ヴァル(Auxey-Duresses Clos du Val)の畑。標高の高い産地の方が、基本的には霜害はなかった(例外はあるが)。

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ウドンコ病(Oidium)にかかった畑。今年はベト病が大量発生したが、並行して、ウドンコ病もチラホラ。この写真からは同時に、雹の被害も見て取れる。

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ムルソー(Meursault)の中でも最も霜害の酷かった、一級畑ポリュゾ(Poruzot)。ピュリニー・モンラッシェ(Puligny-Montrachet)側と、オーセイ・デュレッス(Auxey-Duresses)側の高地は比較的大丈夫だったが、村の中心部は壊滅的な被害がある。房のない樹が多く見られた。

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今年はピュリニー・モンラッシェ(Puligny-Montrachet)のためのヴィンテージかもしれない。ムルソーやシャサーニュ・モンラッシェと異なり、葡萄畑はいずれも健全。ミルランダージュも少なく、春の開花は無事に済んだようだ。酸味と甘味のバランス良く、期待が持てる。写真は一級畑のクラヴォワイヨン(Clavoillon)。

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モンラッシェ(Montrachet)の二つの村(北のピュリニーと南のシャサーニュ)の境界線の区分は、本当に良くできている。アペレーションに制定されている境界線上で命運が分かれ、壊滅的だったシャサーニュ側と違って、ピュリニー側の被害は軽微だった。

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南側のモンラッシェ。4月27日の霜害の直撃を受けて、壊滅的な状態。葡萄の房を探すのが難しい。サン・トーバン(Saint-Aubin)の丘から扇状になったゾーンに霜害が集中していて、特級畑(モンラッシェ、バタール、クリオ・バタール)ですら、その例外ではなかった。

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シャサーニュ・モンラッシェで最も優美な赤ワインを産する一級畑、クロ・サン・ジャン(Clos Saint Jean)。ピノ・ノワールの状態はとても良いが、すぐ横のシャルドネの畑はあまり芳しくない。霜が降りた時期に芽吹きした品種に被害があったのであり、両品種による格差が見て取れる一例である。

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霜の被害の酷い北側の区画に比べ、シャサーニュ・モンラッシェ南部の畑の状態は平年並み。

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サントネ(Santenay)は他の生産者が羨む程、被害が少ないようだ。今年のサントネは買い、である!

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リュリー(Rully)。健全で、平年並みの生産量を維持している。隣のブーズロン(Bouzeron)のアリゴテ(Aligoté)の房の量が少なかったのと対照的。

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サヴィニー・レ・ボーヌ(Savigny-lès-Beaune)のビオ生産者の畑。6月13日にベト病の被害が、葉だけでなく房にも及んだとき、多くのビオ生産者は、ラベルを捨てるか、生産性を維持するかの苦渋の決断を強いられた。この畑では、苦戦を強いられている様がみてとれる。

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コルトン(Corton)の丘の上にて。春の霜害はもちろん、雹などの影響もあって、収穫量の減少が見て取れる。

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春の雨がちな天候は、葡萄の成熟を大幅に遅らせている。去年、8月末に見に来た時に、完熟していたこのニュイ・サン・ジョルジュ(Nuits-Saint-Georges)のピノ・ノワールも、今年は9月中旬の時点で色付きが終わってすらいない。

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コート・ド・ニュイで特に被害が多かった感じがするのは、ニュイ・サン・ジョルジュ。葡萄のなった樹があるかと思えば、その横はまったくなっていなかったりと、被害の深刻さが伺える。

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ヴォーヌ・ロマネ(Vosne-Romané)のある特級畑。霜の被害はあまりなかった模様だが、良い葡萄もあるかと思えば、ベト病に冒されていたりするのがチラホラ見当たる。

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ヴォーヌ・ロマネの一級畑。近年の低収量を補うために、量を残そうとする生産量もいれば、グリーンハーヴェストを敢行する生産者もいる。

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クロ・ヴージョ(Clos Vougeot)。葡萄の状態は素晴らしい。良いヴェンテージが期待できる。クロ(Clos)に囲まれている畑は、冷たい風から保護され、太陽も集中的に当たるために、被害が少ない。

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シャンボール・ミュジニー・レ・ザムルーズ(Chambolle-Musigny Les Amoureuses)。とても綺麗な畑だ。「ミュジニー(Musigny)より良い状態」と通りすがりの生産者が言っていた。収穫はもう間もなく近いのだろうか。

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良好なシャンボールと打って変わって、いつもより葡萄の房が見つからないのが、モレ・サン・ド二(Morey-Saint-Denis)。シャルドネの植えられているモン・ルイザン(Monts Luisants)にも行ってみたが、いつもより房は少ない。

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ジュヴレ・シャンベルタン(Gevrey-Chambertin)は良いと聞いていたが、それでも葡萄の房の状態はまばら。

この記事を書いた人

染谷 文平
染谷 文平
こんにちは、フランスに滞在中のソムリエです。現在、パリの一つ星レストラン、Neige d’été(ネージュ・デテ)にてシェフ・ソムリエの職についております。レストラン業を続ける傍ら、ワイン造りをより深く知るために、Bourgogneと Alsaceにてワイナリー勤務も経験しました。ワインが生まれる風土、環境、歴史に強く関心があり、ブログ(http://fwrw.blog137.fc2.com
も綴っております。Wine Whatでは、生産者の生の声や、ホットな情報をいろいろと書いて行きたいと思います。