ワインを選ぶ際のキーワードとして、「オーガニック」「サスティナブル」などの考え方が、急速に存在感を高めている。その背景には、美味しさやラベルのカッコよさ、コストパフォーマンスの高さなど、今までよしとされてきたワインに関する直接的な要素に加えて、地球環境の保全や人びとの間の不均衡の是正など、世界規模での広い視座がある。そうした消費者の姿勢をあらわす言葉が「エシカル」。
美味しいことは大前提。ワインを飲みながら世界を思う。生産者の取り組みやこだわりを知り、また自らも社会的責任の一環として、ワインをチョイスするのがこれからのカッコいい大人のスタンダードなのである。
というわけで、WINE WHATは、有名ワイナリーの取り組みをご紹介します。このページでお話するのは、産地のアイデンティティーを確立し、また伝統に囚われない新しい商品開発で地域のワイン産業を牽引する「マァジ(MASI)」です。


伝統と革新から生まれたスーパーヴェネシアン

マァジ社は、18世紀末、ヴェネト州ヴァルポリチェッラのネグラール地域に、ボスカーイニ家が畑を取得したことからはじまる老舗ワイナリーである。

ヴァルポリチェッラのワインといえば、親しみやすく、食事にも合わせやすく、チャーミングで優しい、フルーティーな若飲みタイプーーゆえに一名を「ヴェローナの王子」という。

しかし、ヴァルポリチェッラという土地が秘めた力は、そんな一面的なものではない。

古代ローマ時代には、濃厚で力強い甘口ワイン「レチョート」の産地として知られていた。レチョートは、収穫したブドウを陰干しし、糖度を高めてから醸造する「アパッシメント」という技術を用いた甘口ワインだ。

この技術を応用し、凝縮感の高い陰干しぶどうを用いて濃厚な辛口ワインに仕上げたものがアマローネ。「ヴェローナの王子」と対極に位置する重厚なワインとして、18世紀頃に造り出されたと考えられている。マァジ社は、近代になって、生産量が減少していたアマローネを復活させた立役者のひとりでもある。

創業以来、「伝統と革新」を社是としてかかげるマァジ社は、「ヴァルポリチェッラのスタイルを持ち続けながら、いかにスーパーなワインを造りだすか」を常に問い続け、その答えのひとつとして1964年に「カンポフィオリン」を生みだした。

ヴァルポリチェッラには古来、発酵したワインにアマローネの絞り滓を加えて二次発酵をうながす「リパッソ」という手法があった。マァジ社はこれを進化させ、一次発酵したワインに陰干しぶどうの果汁を加えて二次発酵をうながす「ダブル・ファーメンテーション」を完成させた。この技術の賜物が「カンポフィオリン」で、これは伝統と革新を融合させた新たなワイン「スーパーヴェネシアンはかくあるべし」の姿そのものとして、地域全体のワインの価値観を高めたのである。

いかなる状況にも対応する「持続可能」志向

また、「未来のために、すべてのアクティビティにおいて社会的、道徳的、そして環境価値をベースに」として、サスティナブルへの取り組みにも熱心だ。ブドウ栽培においては、環境に配慮し、微生物の存在を促し、生物多様性を守る「クオリティー・グレープ・プロジェクト」を始動。生産ラインやパッケージにおいても、さまざまな配慮で社会的責任を果たしている。

またマァジ社には、マァジ・テクニカルグループ(MTG)というヴェネツィア地方のプレミアムワインとブドウ裁培の研究をおこなう部門がある。複数の大学や研究機関と連携し、様々な研究計画を共同作業推進。イタリア内外で研究結果を発表し、結果を共有することで自社のワインの質を高めるのみならず、ヴェネトのワインの品質向上に貢献するものである。

こうした流れは、ヴァルポリチェッラのみならず、他の地域へも広がっている。

ヴァルポリチェッラにおいて育んだノウハウをもってアルゼンチンでのワイン生産に挑戦し、一方では長年の協力関係にある文豪ダンテ直系の末裔セレーゴ・アリギエーリ伯爵と共にトスカーナ進出する。これには、政争によってトスカーナを追放されたダンテにとっては、里帰りという文化的意味合いもある。

このような広範囲の活躍はいずれも、どのように時代が変わろうとも、経済的にも、文化的にも持続可能であろうとするフィロソフィーのあらわれといえよう。

マァジ カンポフィオリン


 

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「サスティナブルワインのある生活」