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あの有名ワイナリーはどうサステイナブルか?

ライマット(RAIMAT)編

ワインを選ぶ際のキーワードとして、「オーガニック」「サスティナブル」などの考え方が、急速に存在感を高めている。その背景には、美味しさやラベルのカッコよさ、コストパフォーマンスの高さなど、今までよしとされてきたワインに関する直接的な要素に加えて、地球環境の保全や人びとの間の不均衡の是正など、世界規模での広い視座がある。そうした消費者の姿勢をあらわす言葉が「エシカル」。
美味しいことは大前提。ワインを飲みながら世界を思う。生産者の取り組みやこだわりを知り、また自らも社会的責任の一環として、ワインをチョイスするのがこれからのカッコいい大人のスタンダードなのである。
というわけで、WINE WHATは、有名ワイナリーの取り組みをご紹介します。このページでお話するのは、創業当初から「持続可能であること」を念頭に作りあげられたライマット(RAIMAT)です。

ライマットの葡萄畑 

「この砂漠は、やがてぶどうの海となる」

「ライマット」とは、カタルーニャ語で「ぶどう」と「手」の意。

1551年創業というスペイン屈指の歴史を誇る醸造家一族ラベントス家は、1914年にカタルーニャ州のある見捨てられた土地に注目する。それは、バルセロナの西、現在 のコステルス・デル・セグレ地区の一角で、当時は、スペイン継承戦争(1701〜13年)で破壊された城跡だけが残る砂漠の地であった。

しかし、長年のワイン生産で培った醸造家の眼力は、信じて疑わなかった。この不毛の砂漠が、やがてぶどうの海となることを――

ラベントス家は、アラゴン運河から60マイル以上にもおよぶ水路を引き、作業者とその家族のために100軒以上の家を建て、教会や学校、12の倉庫、家畜の檻や小屋を作ってコミュニティーを拓いた。彼らの言葉でいうところの「ヨーロッパで最初で唯一のワイン栽培コロニー」であったという。

つまりライマットは、創業当初から「持続可能であることを念頭に作りあげられたワイナリー」であった、というわけである。現在のようにサスティナブルがトレンドになるはるか以前から、サスティナブルでなければ、この土地に根差し、ワイン文化を育むことはできなかったのだ。

1917年、最初の収穫で採れたぶどうは、わずかに7つの籠に0.5トンであったという。しかしながら、およそ100年を経た今日では、2100ヘクタールを超える畑から年間4000トンものぶどうが収穫される。この軌跡こそ、サスティナブルであるといって過言ではあるまい。

現在、2100ヘクタールのぶどう畑には、異なる5つのマイクロクライメット(微小気候)が存在する。この地で一からワインづくりをはじめた、否、はじめざるを得なかったライマットは、近年さかんな適地適種の研究も、創業当時から取り組んできたのである。この100年にもわたる研鑽は、ライマットを、シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニョンといった国際品種の特長を引き出すエキスパートとして、世界的に認知させる所以ともなっている。

ライマットブドウ収穫 

サスティナブルに終り無し

むろんのこと、現在もさまざまにサスティナビリティーへの取り組みは続けられている。

CO2削減に関する自主協定に参加したワイナリーで、2011年以降、排出量を39%削減したという実績をもつ。エネルギー需要の70%は100%再生可能エネルギーを用い、また水利用も極力、合理的で無駄のないシステムに則っている。地域全体の環境を守るため、破壊的な殺虫剤を用いず、自然繁殖のメカニズムを利用した害虫制御をおこない、生物の多様性を守っていることなどはいうまでもない。

こうした取り組みは、「スペイン最大のオーガニック認証ワイン生産者のリーダーとなるため」のものではある が、それは過程であって、目的ではないのだ。サスティナブルのごとく、それは持続のための過程にすぎない。

おしまいに小さなエピソードにふれておきたい。

ラベントス家が何故この地のポテンシャルを信じたか……ということの要因のひとつに、砂漠の廃墟の城跡に残されていた紋章があったという。その紋章には「ぶどう」と「手」が描かれていた。おそらく、経験を積んだ老舗醸造家の末裔には、その紋章を見ただけで、かつてこの土地に繁茂したぶどうの海が見えたに違いない。そこから、持続可能な経済原理を見いだせるところが。才能の才能たる所以だろう。

ライマット

ライマット オーガニック ヴェンターダ 白


 

サスティナブルについてもっと知りたいという人はこちらをお読みください。
「サスティナブルワインのある生活」

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