ワインを選ぶ際のキーワードとして、「オーガニック」「サスティナブル」などの考え方が、急速に存在感を高めている。その背景には、美味しさやラベルのカッコよさ、コストパフォーマンスの高さなど、今までよしとされてきたワインに関する直接的な要素に加えて、地球環境の保全や人びとの間の不均衡の是正など、世界規模での広い視座がある。そうした消費者の姿勢をあらわす言葉が「エシカル」。 美味しいことは大前提。ワインを飲みながら世界を思う。生産者の取り組みやこだわりを知り、また自らも社会的責任の一環として、ワインをチョイスするのがこれからのカッコいい大人のスタンダードなのである。 というわけで、WINE WHATは、有名ワイナリーの取り組みをご紹介します。このページでお話するのは、地理的・気候的要因が、ナチュラルな有機的栽培を実現させているエル・エステコ(EL ESTECO)です。
エル・エステコ 

恵まれたぶどう栽培の適地アルゼンチン

ニューワールドのワインの中でも、アルゼンチンワインの「クリアさ」や「ピュアさ」は際立っている。

ぶどう畑の多くは、国土の西側の、富士山級の山々が連山となっているアンデス山脈の麓に位置している。冷涼で、乾燥し、灌漑の水は基本的に清冽な雪解け水……そんな気候的、地理的要因が、健やかなぶどうを育んでくれるのだ。

ワイン産地としてはメンドーサが有名だが、さらに北に1000キロメートルほどいったサルタ州はユニークな産地 として、世界のワイン愛好家が注目する産地である。

エル・エステコは、サルタ州のカルチャキ・ヴァレーに位置している。ここまで来ると、アンデス山脈も東の縁。ぶどう畑の標高は1700〜2200、2300メートルにもおよぶ。典型的な大陸性気候で、海からの影響がほとんどなく、昼夜寒暖差が大きく、時に25°Cにものぼるという。

周囲を見渡せば、集落の他はほとんどが砂漠・岩漠に取り囲まれており、年間晴天日が340日にものぼる砂漠気候の地。年間降水量もわずか200ミリ程度だ。

地理的、気候的要素の二重構造で「冷涼」と「乾燥」がここまで徹底すると、病害虫の禍がほとんどなく、あたり前のように有機的栽培が実現する。

今から20年ほど前、ワイン市場においてオーガニックや有機農法のワインが注目されはじめた頃、一部にはこれ見よがしの「オーガニックワイン」も横行した。そんな頃にアルゼンチンの造り手は、ナチュラルに有機的栽培を実践しているにも関わらず、「農薬が高くて買えないんだ」とほろ苦く自嘲していたのである。

エル・エステコ葡萄畑 

比類なきカルチャキ・ヴァレーのテロワールを表現

1892年に設立された老舗中の老舗、エル・エステコが今、めざすのは、カルチャキ・ヴァレーにさまざま存在するテロワールの表現である。数多くあるシリーズが、その姿勢を示している。

たとえば、フラッグシップワイン「チャナル・プンコ」シリーズは、標高2000メートル以上の畑で育まれ、高地特有の寒暖差、痩せた土壌豊富な日照量、低湿度などの特長があらわれた魅惑のワイン。わずか2250本の限定生産だ。

「オールド・ヴァイン」シリーズは、樹齢60年を超える古樹から造られ、人の介在を最小限に抑えて、ぶどう の個性をそのままに表現したもの。

「シクロス」シリーズは、「周期、サイクル」の意で、良質のぶどうを育む月と太陽をモチーフと、優れたワインを育むカルチャキ・ヴァレーのミクロクリマに敬意を表したもの。

「ドンダビ レゼルバ」シリーズは、熟成期間を長く設けた、エレガントな味わいで、その名は、ミッシェル・トリノ創始者の一人ダビ・ミッシェル氏へのオマージュである。

コストパフォーマンスに優れたオーガニックシリーズ「クマ」は、日本ではすっかりおなじみである。

ところで、ナチュラルに実現していた有機的栽培が、世界市場では大きなセールスポイントとなることを、エル・エステコの人びとに説いたのは、日本のインポーターさんであったという。そんなことからも、彼らの日本市場への信頼は厚く、「自分たちのワインを理解してくれる大切な友人と思っている」と、何度も聞かされた。

今や、日本市場に入るエル・エステコの65%がきちんと認証を受けた「オーガニックワイン」であるが、すべてのアイテムに「健やかな味わい」が共通していることは、かつての昔と変わりはない。

クマ オーガニック カベルネ・ソーヴィニヨン

クマ オーガニック カベルネ・ソーヴィニヨン


 

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「サスティナブルワインのある生活」