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定説「牡蠣に合うワインはシャブリ」を さらに深堀りしてみよう

あなたの知らないかもしれないシャブリ

10月27日、ワイン業界関係者向けの「2020シャブリワインWeb セミナー」が開催された。講師役は「THE THOUSAND KYOTO」シェフソムリエ、岩田渉さん。「シャブリとプティ・シャブリ」をテーマに、シャブリへの見識が広がるトークを繰り広げた。ここでは、そのWebセミナーの内容を紹介。行っても飲んでもわからないかもしれない、シャブリって、実は、こんなところなのです。

とんかつ、地鶏のフリカッセ、ジャンボン・ペルシエ(ハムとパセリのゼリー寄せ)……これらは第8回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝者であるソムリエ、岩田渉さんが「シャブリに合う」として挙げた料理だ。

誰もが知るシャブリとの王道ペアリングは、言わずもがな「牡蠣」。ただ、当たり前ながらついつい忘れがちな事実がある。シャブリってのは、とどのつまりブルゴーニュのシャルドネ。ブルゴーニュのシャルドネと聞き、合う料理や食材をあれこれ思いつく人であれば、「ならシャブリとのペアリングだって、牡蠣だけにとどまるわけないか」とすぐ気づけるだろう。

ペアリングなんてワードが日本に定着していなかったン十年前から、「牡蠣にシャブリ」のフレーズはワインラバーたちに遍く知れ渡ってきた。覚えやすい名前のシャブリは、世界中の白ワインのなかでもズバ抜けて知名度が高い。そして、ワインショップに行けば容易に入手できる。

日本に輸入されるブルゴーニュ白の約40%超はシャブリが占めており、世界的に見るとイギリス、アメリカに次ぐ輸入国が日本だとか。加えて、キンメリジャンと呼ばれるシャブリ特有の土壌には、古代の牡蠣の殻が豊富に含まれる。「牡蠣入りの土で育ったブドウから、牡蠣に合うワインができる」との明快なストーリーも、「牡蠣にはシャブリ」をさらに印象付ける。

ここからはシャブリにまつわる固定観念を崩していこう。

1億5千年前、シャブリのキンメリジャン土壌は海で生成されたが、当時はどんな海だったのか。「牡蠣が育つなら、牡蠣の産地である広島や宮城のような深い藍色の海?」と想像したなら残念!

岩田渉さんによると、「水温が高い浅瀬の海で、サンゴ礁や貝が存在。南国の沖縄を想像して」

また、シャブリが温暖なのは古代だけではない。ブルゴーニュ北部に位置するシャブリは涼しい地域と思われがちながら、夏の平均最低気温は南のボーヌのほうが低い。

つまり、ブルゴーニュの他エリアのシャルドネワインとシャブリとの味の違いは、気温より土壌構成や造り手の影響が大きいという。その土壌だって、キンメリジャンにとどまらない。AOCシャブリは4つのランクに分類され、上からシャブリ・グラン・クリュ、シャブリ・プルミエ・クリュ、シャブリ、プティ・シャブリの順となるが、プティ・シャブリの代表的な土壌はポートランディアンだ。キンメリジャンより、化石が少なく石灰分の多い土壌である。

加えて、斜面の角度や向きの違いによってブドウの熟度も変わり…… とバラエティに富むシャブリであるから、ペアリングにもっと広がりを持たせるべき。

「プティ・シャブリもシャブリも生牡蠣に合いますが、少し加熱した牡蠣もいい。牡蠣フライなら、シャブリのクリスプな酸がフライのカリッとした食感を引き立て、牡蠣のフレーバーを余韻まで引き伸ばしてくれます。格や複雑性の増したシャブリなら、ヴルーテ・ソースを使いキャビアを添えた牡蠣料理も。なおシャブリの地元ではジャンボン・ペルシエと楽しまれています。飲み応えのあるプティ・シャブリなら塩とレモンを添えたとんかつなど白身のお肉と。樽を使いシュールリーの旨味あふれるシャブリは、地鶏のフリカッセなどクリームソースの料理が合います」(岩田さん)

ちなみに、2021年1月号のWINE WHAT「3000円以下バリュー・ワイン・コンクール」読者テイスターが「ウィリアム・フェーブル シャブリ2018」をブラインド試飲したところ、「シャブリだったとは! ナッツの香りと味わいが特徴的で、酸味もほどよく餃子に合いそう」(野口賢太郎さん)、「シャブリにしてはふくよか。酸がしっかりして、ヨードや塩気も感じます」(志田渉さん)。抱いていたイメージと異なるワインやペアリングとの遭遇は楽しいもの。これを機会に、シャブリをベースとしつつ牡蠣からさらなる飛躍を図りたい。


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