パオロ・バッソ|Paolo Basso

考えずに飲むことなかれ

爽やかな酸味、ほのかな甘味、泡立ちの楽しさ、なんでも詰まっているシャンパーニュ。

泡はどんどん消えていくけど、また次々とグラスの底から生まれていく。ほかのスパークリングに比べ、シャンパーニュはとくに泡が長く残ります。そして外観を愛でる以上に、泡が味覚にどう働きかけるかが最も大事なところ。酸やアルコール、余韻、凝縮感といった全体の味わい構成とうまく調和してなければ。その技術的な部分に、あとは精神的な部分が加わってくるんです。泡の楽しさで人を幸せにするパワー、ありそうですよね。

シャンパーニュは、どんな場面でも飲めます。しかし「何も考えず口に運ぶ」という飲み方はお薦めしません!

5万円のシャンパーニュを買ったら、その味がどんなものだったか理解しないままではもったいない。手頃な価格のシャンパーニュが登場し、ひと昔前にくらべてだいぶ大衆化された感もありますが、それでも理解しようとする姿勢が大切です。これはソムリエだけの話でなく、一般のワイン愛好家の方々も同様。正直なところ、理解も評価もできない人なら、そのシャンパーニュを飲んでも仕方ないじゃないですか。

味であり理性の活動である

日本の方々は香りを大切にされているけど、私はやっぱり味なんですよ。この液体は、口に入れて飲むために存在しているから、飲まないと理解のしようがない。そういえば先日、ずーっと口に入れないで、ただただ語っていた人と会ったなぁ……

考えながら口に入れて、その味を分析しながら飲むという行為は、やっぱり意味があると思うんです。先ほど「どんな場面でも飲める」と言いましたが、悲しい気分のときには、味わいを理解しようとすることで、一瞬悲しみを忘れることができるかも。最高に嬉しく理性を失いそうなときには、分析しながら少し冷静に。これはシャンパーニュに限った話ではないですけどね。

ただ私は、理性を失うことがないんです。ええ、現実主義者なもので。理性を失わないのが、人生にとって楽しいかどうか人によって考え方は異なるでしょうが、私はそう生きていく人生を大切にしています。

世界最優秀ソムリエになった瞬間?

もちろん、理性は保たれたままでしたよ。だって、そこに至る道はあまりにも険しくて、心の準備がキッチリできていたから。目的に向かって努力すると、動じない強さが生まれてくるものですよ。優勝のお祝いはシャンパーニュで乾杯しましたけれど、常に味わいを分析。酔わない。酔ったら分析ができなくなるので、酔ったところで飲むのはストップします。 パオロ・バッソ|Paolo Basso

2013年3月29日に、有楽町の東京国際フォーラムで行われた第14回世界最優秀ソムリエコンクール。パオロ・バッソ氏は、スイス代表として出場し優勝をはたした

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部

人生がうまくいかない時は「神様がくれた休暇」だと考えよう。



by 1996年のテレビドラマ「ロングバケーション」(北川悦吏子脚本)での木村拓哉演ずる主人公のセリフより。



10連休でロンバケって短くないですか。