過去掲載では、レシピと合うワインをお店に提案していただいていた本企画だが、今回は変則実施! 担当エディターが「タコムマサラ」のスパイスたこ焼きを想定し、チョイスしたアイテム3本を(勝手に)持ち込み、代表の藤田一也さんに総当たり検証を依頼。まるで錬金術のようにスパイスを使いこなす藤田さんに、このセレクトは通用するのか?
Photos:Hiroaki Shinohara Text:Chinatsu Kimura
2021.12.12
過去掲載では、レシピと合うワインをお店に提案していただいていた本企画だが、今回は変則実施! 担当エディターが「タコムマサラ」のスパイスたこ焼きを想定し、チョイスしたアイテム3本を(勝手に)持ち込み、代表の藤田一也さんに総当たり検証を依頼。まるで錬金術のようにスパイスを使いこなす藤田さんに、このセレクトは通用するのか?
Photos:Hiroaki Shinohara Text:Chinatsu Kimura
写真右から
カタシモワイナリー
『たこシャン』(大阪)
1920年より「葡萄酒」の製造・販売を行う大阪府柏原市のワイナリー。「たこ焼きに合う!」をコンセプトとし、デラウェアを使用して造った瓶内発酵のスパークリングワイン。
担当エディターコメント
ラベルには、たこ焼きに狙いを定めたピック(楊枝?)の図。ここまではっきり料理を逆指名したワインも珍しく、その潔さに完敗。大阪人の粉もんカルチャーへのこだわりに敬意を払ってセレクト。
ヴァジアニ・ワイナリー
マカシヴィリ・ワイン・セラー
『ルカツィテリ』(ジョージア)
約8000年の歴史を持つジョージアで、伝統的手法を用いて造られるアンバーワイン。ユネスコの無形文化遺産に登録された、クヴェヴリ(素焼きの甕)で土着品種を醸した1本。
担当エディターコメント
多種多様なスパイスを使用したたこ焼きだが、特にクミンシードを噛み当てる率が高いと予想。クミンをきかせた小籠包のような「ヒンカリ」という伝統料理があるジョージアのワインなら、外れようがない。完全にクミン狙い。
A.A.バーデンホースト
『カペリティフ』(南アフリカ)
シュナン・ブランをベースに約35種類のボタニカルや果実を漬け込んだヴェルモット。1800年代後半、金やダイヤモンドの発掘で富を得た南アフリカで親しまれた味を復活させたという意欲作。
担当エディターコメント
このたこ焼きは紅ショウガの風味がほかのスパイスに負けじと余韻に伸びる。辛みと果実感にも似た甘みに照準を合わせて。ちなみにこのヴェルモット、味わいがバイオダイバーシティそのもので、あらゆる植物由来の風味に対応できるものすごい包容力がある。
藤田さんの評価は?
スパイスたこ焼きのレシピはこちら
たこシャン
出汁とスパイスのきいた粉もんに、スパークリングは絶対合う! すっきりドライながら、ほのかにデラウェアの甘みがあるワインなので、橋渡し役として、ソースがあったほうがより風味が同調します。
ルカツィテリ
一口味わった瞬間、シルクロードがイメージできそうなオリエンタル感! これはDNAレベルで間違いない。ブドウ果皮に由来するほのかなタンニンがスパイスによく合う。クミンと好相性なので、ソースなしがいいですね。
カペリティフ
紅ショウガに照準を合わせたという意図だそうですが、今回一番驚いたのはこのヴェルモット。スパイスやハーブ香、アルコールのボリュームがたこ焼きにマッチ。お酒の方にしっかりした個性があるので、ソース有のほうがバランスが取れていい!
牡蠣のアチャールのレシピはこちら
たこシャン
料理の辛みがしっかりしているため、たこシャンだとちょっと負けてしまうかも……泡の刺激とデラウェアの風味がスパイシーさを中和してくれ、次の一口へ向かう、リフレッシュ効果としてはいいと思いました。
ルカツィテリ
「牡蠣のアチャール」の辛みが勝ってしまう。このワインは、辛みではない香りのスパイスのほうがより合う印象です。ただし、作り立てでなく一日置いて風味をなじませたアチャールだとかなり印象が変わります。磯の香りを強調しすぎない点も◎です!
カペリティフ
「してやられた、カペリティフ強し!(笑)」出来立てで辛みや塩味が立った状態のアチャールと合わせると、複雑味と甘み、まろやかさで包んでソースのように作用してくれて、余韻まで魅力的。「この料理は相乗が難しい」と予測していましたが、見事に裏切られて楽しい発見になりました!
まさか、うちのスパイスたこ焼きにワインという切り口で挑まれるとは(笑)。多くのスパイスを重ねる料理2種をご提案したので、全体像ではなく、ピンポイントで狙ってくるという手法には「なるほど!」 粉もんやスパイス使いは自由ですが、ペアリング発想もしかり。ワインとももう少し向き合ってみようかなと、いい刺激になりました。
代表取締役の藤田一也さん
大阪の人気スパイスカレー店『旧ヤム邸』から独立し、関西在住経験に由来する粉もん愛とスパイスへの深い造形を融合させた「スパイスたこ焼き」を提案。2021年下北沢に『タコムマサラダイナー下北沢』、『タコムマサラ日比谷』をオープン。