1096-1

今回のマリアージュは、銀座の老舗レストラン「銀座レカン」の姉妹店「ロテスリーレカン」にて、この季節に美味しい冬野菜のココット蒸しにワインと日本酒でペアリングを考えてみます。

寒くなってくると野菜が甘さを持ち始める季節、温野菜に仕上げる事でその甘みは一層増し、優しい美味しさが生まれます。数種類入っている野菜はすべてそれぞれに理想の火入れがされており、野菜各々の味わいも存分に発揮されています。

そしてソースには鶏のエッセンスの旨味とコクにジュラ地方のヴァンジョーヌを加えることで、酸味と香りをつけており、更にトリュフが入った贅沢なフランス料理の一品として仕上げられています。

今回のマリアージュを作るにあたって最も重要になるポイントは、温野菜の自然な優しさと甘みと、リッチなソースの風味の主に2点ですが、この料理の本質は脂質が少なく口中に残るような粘性がない事も重要になります。

まず選んだのは王道ジュラのワイン、ぶどう品種はヴァンジョーヌに使用されるものと同じサヴァニャンです。同じ品種から造られるものには、もちろん似たニュアンスがあるので、特にサヴァニャン特有の酸味や香りがよく同調し、よりお料理全体の風味の特徴を際立たせる事ができます。

更にこのジュラという地域だからこそ出せるミネラル感主体の味わいが、重さではなく軽やかさやエレガントさという味わいの特徴を持っている事が、今回のお料理との脂質バランスなどとも良く合っています。

もう一つのワインは日本のワインです。北海道余市からドメーヌ タカヒコのブラン ド ノワール 2013です。貴腐菌が着くことで得られる独特の蜂蜜のような香りに加え、キノコ、紅茶の茶葉のような風味を持ち、香りがリッチでやや甘やかですが、味わいは辛口なワインです。このフレーヴァーのリッチさがトリュフや、ソースの風味の豊かさと共存しあい、融合していきます。

またワインの味わいが辛口に仕上がっているので重さはなく、日本ワイン特有の柔らかなテクスチャーも持っているので、野菜の自然な優しい味わいに寄り添うような仕上がりです。

そして日本酒、福島県会津若松の高橋庄作酒造店 「無為信 五百万石」で作られるお酒の特徴はその軽やかさ、飲み心地の良さにあります。まさに今回の脂質の少ない野菜の料理にちょうど良い味わいの優しさが特徴の日本酒です。地元で取れた農薬や化学肥料不使用の五百万石のみで作られていて、他のお酒と比べても特にその風味の柔らかさが顕著に出ています。

お勧めは、ぬる燗にしてこのお酒の持つ旨味を解放し、お料理との温度感を近づけると口中での一体感が生まれ、日本酒でしか味わえないテクスチャーや旨味の同調感を楽しむことができます。日本酒は他のお酒では考えられないほどの、温度の違いでサービスすることができます。それぞれの日本酒に向き不向きはありますが、マリアージュにその味わいの違いと温度の違いも導入することで、より完成度の高いものになります。

今回は、主素材が野菜である事による軽やかさ、ソースの風味の強さや、料理の温度などが重要なマリアージュとなりました。このような味わいの構成は日本料理や中華料理にも多く見られるスタイルなので、もっといろいろな場所で活用できると思います。

今回の3銘柄

1096-2
  • ジャン-フランソワ ガヌヴァ コート デゥ ジュラ レ シャラス マルヌ ブルー シャルドネ 2012

    生産国: フランス
    地域 : ジュラ

    近年盛り上がりを見せるジュラ地方のワイン。その中でもトップ生産者の一人がこのGanevat。この地方は補酒をするかしないかで、そのスタイルが変わるが、これは補酒をしたサヴァニャン。クリーンな味わいに独特のクミンのような風味と旨味のある味わい。

    マリアージュ結果
  • ドメーヌ タカヒコ ナナツモリ ブラン ド ノワール 2013

    生産国 : 日本
    地域 : 北海道 余市町

    北海道で作られるワインも近年は注目度が高くなってきている。その中でもドメーヌ タカヒコの人気は高い。それというのも、余市の土地の個性を複雑に、そして軽やかに感じさせる味わいだからだ。このキュベは貴腐がついた事で、さらに豊かな風味となった辛口。

    マリアージュ結果
  • 無為信 純米特別酒 高橋庄作酒造店

    生産国 : 日本
    地域 : 福島県/会津若松市

    地元で取れた農薬や化学肥料不使用の五百万石のみで作られるお酒。五百万石の軽やかさと有機によることで得られていると思われる優しい味わい。旨味ののった味わいで、冷酒でスッキリ楽しむことも可能だが、ぬる燗で旨味をより引き出して楽しむのがお勧め。

    マリアージュ結果

大越メソッド 基本アプローチ5カ条

① 五味を合わせる
五味とは、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味のこと。料理とワインの2つの要素の中でバランスよく五味が整う時に、双方の風味が味わい深く感じられる。
② 味わいの同調
ワインと料理の五味の中でも特に酸味、甘味、うま味を同調させる。互いのボリューム感や強さに合わせて同じ風味同士を同調させ、一体感を出して味を引き立てる。
③ 味わいの中和
五味や刺激(渋味、辛味)の中でやや強い個性に対し、対の関係にある味わいを合わせて個性を緩和させ、中和することで、風味を心地よく残す。
④ フレーバーを合わせる
とても重要で、頻繁に使用される考え方。ワインと料理の双方が持つフレーバーや香りを合わせて一体感を生み出すことで、いずれも長い余韻、風味を楽しめる。
⑤ テクスチャーを合わせる
やわらかいワインにやわらかい料理、暖かい料理に冷やしすぎていないワインなど、温度や食感などでテクスチャーを整えると、マリアージュ効果がさらに上がる。

この記事を書いた人

大越 基裕
大越 基裕
1976年4月24日 北海道札幌市生まれ
バーテンダーからサービス業界に入る。ワインに魅せられて渡仏を決意、帰国後2000年にソムリエになる。ワインバーで勤めた後2001年に銀座レカンにソムリエとして入社。様々なコンクールや実践で経験を積んだのち、更にワインの奥深さを知るために、再び2006年より2年半渡仏。帰国後2009年より銀座レカンシェフ・ソムリエとなる。