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仔イノシシ・コートレットのグリエに合うワインとは?

料理から探るマリアージュ・メソッド vol. 9 【SUGALABO】

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今回は、話題のお店「SUGALABO」の須賀洋介氏のお料理でマリアージュの検証をいたします。

メイン素材は、ジビエのウリ坊と呼ばれる仔イノシシ。これをシンプルにグリエして、ジュのソースに塩と生の胡椒の塩漬けを添えて、付け合せにサラダとマカロニグラタンという組み合わせです。

まず種素材であるジビエの仔イノシシですが、ほのかな野性味もそれと気づかないほど洗練されていて、まだ乳飲みなのでミルキーな風味もあり、肉質もキメが細かくてとてもシルキーな肌触りです。「コートレット」と呼ばれる骨つきの背骨は、1本ずつグリエされており、それにより繊細な味わいのお肉に丁度良いグリエのニュアンスやメイラード反応によって生まれる香ばしい風味をバランスよく纏っています。

お料理自体の脂質はそんなに多くありませんので、ワインはタンニンというよりは、肉質に合わせたテクスチャーを重視していければと思います。また、少し熟成感があると余韻に残るお肉の野性味にも寄り添うことができます。

まずお勧めのワインは、フランス・コート・デュ・ローヌより、シャトーラヤスのピニャン、シャトーヌッフ・デュ・パプ 2006年です。大きな岩を表土に持つことが多いシャトーヌッフ・デュ・パプというAOCですが、シャトーラヤスのピニャンは砂地に存在しております。そのため熱の保有率も低く、甘い果実感というよりは、繊細でバランスよく、エレガントな甘さのグルナッシュを得ることができます。

シャトーラヤスのピニャンはその恩恵でグルナッシュ100%でつくられています。暖かい産地が与える柔らかな味わいと、タンニンが少なくスパイシーでバランスのよさがウリの品種、テロワールの影響でエレガントになることで、今回のお料理とは、そのテクスチャーの優しさ、2006年によるほのかな熟成のニュアンス、品種が持ち合わせるスパイシーさは、グリエの風味とも相性がよく、若干の収斂性のあるタンニンは脂質を中和し、まさにこの時期に美味しく繊細なタイプのジビエを食すのにはうってつけです。

次は、ブルゴーニュからジュブレ・シャンベルタン・クール・ド・ロワ 2004年、造り手はベルナール・デュガ=ピィです。こちらのワインはテロワール由来の骨格の強さとスパイシーさに加え、圧倒的な凝縮度を持っています。それが口当たりの厚みや柔らかさを表現し、さらに質の高さがもたらすなめらかさも表現しています。この造り手だからこそエレガントなピノノワールが仔イノシシの味わいに対峙できる強さを持っているのです。

2004年は熟成の早く進む年ですが、デュガ=ピィのワインは総じて熟成が遅く、2004年でもまだ力強さを損なわず、むしろちょうどよい熟成感とスパイス感を共存させています。この料理には酸味の要素がサラダにしかないので、肉自体の脂質を中和する形でもピノノワールの酸味はちょうどよいのです。

最後は日本酒です。肉料理に日本酒は基本的に難しいものです。選ぶとしたら、低精白のナッツ系のニュアンスのあるもの。グリエの風味にも合い、うま味だけでなく、甘さにもよる重さも少し共存していることによって肉の脂質との対峙ができます。

さらに酸味がある程度明確にあれば中和することができるので、より脂質とのバランスが取りやすくなると思います。

そこで今回選んだのは、石川県白山の車多酒造の醸す「天狗舞 山廃仕込純米原酒」です。ぬる燗にすると、その力はより発揮されることになりますが、常温でも楽しめます。今回の料理では、唯一、付け合わせのマカロニグラタンともベスト・マリアージュです。もともと甘みや乳酸系の風味を持っているこの日本酒は、グラタンのベシャメルとの相性抜群で、まさに同調します。

季節のジビエをテーマに様々な角度からのマリアージュを検証しました。現在のジビエは処理が的確で、輸送も素早くなり、新鮮なお肉が届くので、昔のような風味の強いものはなくなってきています。ですからマリアージュの考え方も変わる必要があるように感じています。

今回の3銘柄

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  • 天狗舞 山廃仕込純米原酒 車多酒造

    生産国: 日本
    地域 : 石川県/白山市

    「山廃仕込といえば天狗舞」といわれるほどの人気を誇る。実際、山廃仕込独特の米のうまさと豊かな味わい、心地よい酸味と強い風味がバランスよく表現されている。自然界の乳酸菌と一緒に醸される自然な美味しさ。

    マリアージュ結果
  • ベルナール・デュガ=ピィ ジュブレ・シャンベルタン・クール・ド・ロワ 2004

    生産国 : フランス
    地域 : ブルゴーニュ

    近年盛り上がりを見せるジュラ地方のワイン。その中でもトップ生産者の一人がこのGanevat。この地方は補酒をするかしないかで、そのスタイルが変わるが、これは補酒をしたサヴァニャン。クリーンな味わいに独特のクミンのような風味と旨味のある味わい。

    マリアージュ結果
  • ドメーヌ タカヒコ ナナツモリ ブラン ド ノワール 2013

    生産国 : 日本
    地域 : 北海道/余市町

    北海道で作られるワインも近年は注目度が高くなってきている。その中でもドメーヌ タカヒコの人気は高い。それというのも、余市の土地の個性を複雑に、そして軽やかに感じさせる味わいだからだ。このキュベは貴腐がついた事で、さらに豊かな風味となった辛口。

    マリアージュ結果

大越メソッド 基本アプローチ5カ条

① 五味を合わせる
五味とは、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味のこと。料理とワインの2つの要素の中でバランスよく五味が整う時に、双方の風味が味わい深く感じられる。
② 味わいの同調
ワインと料理の五味の中でも特に酸味、甘味、うま味を同調させる。互いのボリューム感や強さに合わせて同じ風味同士を同調させ、一体感を出して味を引き立てる。
③ 味わいの中和
五味や刺激(渋味、辛味)の中でやや強い個性に対し、対の関係にある味わいを合わせて個性を緩和させ、中和することで、風味を心地よく残す。
④ フレーバーを合わせる
とても重要で、頻繁に使用される考え方。ワインと料理の双方が持つフレーバーや香りを合わせて一体感を生み出すことで、いずれも長い余韻、風味を楽しめる。
⑤ テクスチャーを合わせる
やわらかいワインにやわらかい料理、暖かい料理に冷やしすぎていないワインなど、温度や食感などでテクスチャーを整えると、マリアージュ効果がさらに上がる。

この記事を書いた人

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大越 基裕
1976年4月24日 北海道札幌市生まれ
バーテンダーからサービス業界に入る。ワインに魅せられて渡仏を決意、帰国後2000年にソムリエになる。ワインバーで勤めた後2001年に銀座レカンにソムリエとして入社。様々なコンクールや実践で経験を積んだのち、更にワインの奥深さを知るために、再び2006年より2年半渡仏。帰国後2009年より銀座レカンシェフ・ソムリエとなる。

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