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サンジョベーゼとフェラーリ

488スパイダーでエミリア=ロマーニャ州をぶっ飛ばす!


丘を降った麓の村を出ると、やがて山道に入っていく。コースは青い矢印で要所要所に示してある。ストレートがあったので軽くアクセルを踏み込むと、後ろからルチアーノ・パヴァロッティもかくやのバリトンが聴こえてきて、ドライバーの脳内に快楽物質を撒き散らす。パヴァロッティは音階と音量を変えながら歌い続ける。あ〜、ここは天国であるか……歌声は次々と現れ、天上界へと昇っていく。

オープン・カーのヒロイズム

488スパイダーは、それまでの458スパイダーに代わるV8ミドシップのオープン・モデルである。価格は3570万円。クーペの488GTBより500万円高い。違いは折りたたみ式のルーフ機構を持つことだ。45㎞/h以下までなら走行中でも14秒で開閉可能で、オープン・エア・モータリングの楽しみが気軽に得られる。オープン・カー乗りにとってドライバー、つまり自分こそ主人公である。オートバイ乗りのヒロイズムやナルシシズムに通じるものがオープン・カーにはある。

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サイドから見ると458スパイダーとの共通性が浮かび上がる。折りたたみルーフの機構は基本的に同じ。

サイド・ウィンドウを下げていてもコクピットへの風の巻き込みはごく少ない。ごく少ないけれど、空気の流れを感じないわけではない。山の寒気は容赦なく入ってくる。ときに牛の臭いがしたりもする。それが、生きているってもんである。そこにパヴァロッティの爆声、リアから聞こえる太くて乾いたサウンドがフロント・スクリーンを流れゆく景色のバックグラウンド・ミュージックとなる。我は嵐の中、いずこかに向かう空の勇者なり、という気分。よくぞ男子に生まれけり。

最高出力670馬力の3.9ℓツインターボ・エンジンは488スパイダーに0−100㎞/h加速3秒フラット、最高速325㎞/hというスーパー性能を与えている。

運転それ自体はじつにイージーでエフォートレス、努力いらずである。エンジン、ギアボックス、サスペンション、ブレーキ、ディファレンシャルがすべてコンピューターによって統合制御されている。とんでもない馬力の2輪駆動車なのに、気軽にアクセルを踏み込めるのは裏方の電子制御システムのおかげなのだ。そうわかっちゃいるけど、運転がうまくなった気がする。フェラーリ488スパイダーはドライバーを有頂天にさせてくれる。夢か現か、ワインのように酔わせてくれる、天国のドライビング・マシンなのだ。

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天空城塞都市に到着すると、町長が日本人が待っていて、「ルパン3世」のカリオストロ城のモデルだと教えてくれた。

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今尾直樹
ワインが初めてうまいと思ったのは、1990年代の初め、某フランスの自動車メーカーの国際試乗会でした。パリからTGVに乗ってディジョンまで。駅からドライブ開始で、途中、休憩ポイントに醸造所が設定してあって、そこに寄るたびに試飲するのです。ブルゴーニュ、ピノ・ノワールという単語を知りました。最高にハッピーな試乗会でした。昔はヨカッタ。

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