• TOP
  • FOODS
  • 香港は上海ガニだけじゃない!

香港は上海ガニだけじゃない!

インスタ映えする風景とうまいものを味わう2泊3日の旅

ノー・マネー、ノー・ハニー

このあと、香港島に移動して、1975年に建てられた公共アパートメントである勵德邨(ライ・タク・ツェンLai Tak Tsuen)を見物に行った。

中国では、空は○、土地は□で表す、とココさんはいう。勵德邨は円柱形で、中央が吹き抜けになっている。

狭いながらも、少しても快適な住環境をつくり出そう、という理想のもとで建てられたこの公共アパートも、やっぱりインスタ映えするということで若者の人気を集めている。そういえば、スカーレット・ヨハンセン主演の映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」で桃井かおりが住んでいたアパートがたぶんこれだ。

本当は内側から写真を撮ると、○形に空がぽっかり見えてクールなのだけれど、諸般の事情で撮り損ねました。

この公共アパートメントの横の道を隔てたところに、勉強のできる学校がある。この地区は香港でも教育レベルが高く、富裕層が住んでいる。とココさんが教えてくれる。ときおりフェラーリやランボルギーニやベントレー、電気自動車のテスラなど、スーパーカーや高級車が道路を何気に走っていたりしたから、ナルホド、と思う。

「子どもがいい学校に行くと、親は楽ができる。だから、親はいい学校に行かせるために引っ越す」とココさんは言った。

孟母三遷は生きている……。香港で成功するには何が必要ですか? とたずねると、ココさんはこう答えた。

「運と、人間関係」

香港で金持ちになるには不動産投資がいい、とココさんは真顔で言った。だれでも成功する。

「2009年(と聞こえた)は1年で2倍になった。300万香港ドル(約4500万円)だったアパートメントが600万香港ドル(約9000万円)になったのです。まったく同じアパートが、ですよ」

自分で手に入れようと思ったアパートがあったらしい。

1960年代、香港の人口は5万人だった。それが70年代には200万人に膨れ上がった。その後、国境がつくられた。統治していたイギリスは、仕事を求めて流入してきた貧しき多くの中国人のために公共アパートをたくさん建てた。それがいま、インスタ映えのする場所となった。そのインスタ映えのする公共アパートの周囲に、富裕層の住むアパートが立ち並んでいる。

「ノー・マネー、ノー・ハニーだよ」とココさんが言って小さく笑った。お金がないと愛は手に入らない。記者が複雑な顔をしたからだろうか。ココさんは「でも、金持ちになると心配事が増える。だから、金持ちでない私はハッピーである」。そう言って、呵々と明るく笑った。

夕食は、香港島のセントラルの路地裏の伝統的レストラン、すなわち屋台だった。30年ほど前に初めて香港に来たとき、屋台がいっぱいあって、なんだかわけのわからないまま注文し、なんだかわけのわからないものを食べた。今回は心強いコオディネーターがいて、うまいものばかり食べられた。ありがたいことです。

「盛記」という名前の路地裏の伝統的レストランは、コックさんが二丁鍋で調理する達人だそう。日本では見たことのない、どでかいシャコをはじめとする海鮮料理が美味しかったりした。それほど価格が安くないのは、お店を路上で開く権利代が高かったり、天気に左右されたりするからだという。それでも、「盛記」は観光客ではなくて、地元っぽいひとたちでいっぱい。狭い路地に小さなテーブルを並べ、夜空の下、窮屈な思いをしながら、みんなでメシを食べていると、香港的幸せを感じる。

香港人は食べることにお金を惜しまないそうな。

「借り物の場所、借り物の時間」というのはイギリス統治時代の香港を表す言葉だけれど、いまもどこか借り物の感じがするのは、今回の旅がノスタルジーに彩られていたから、だけではないようにも思う。香港が中国に返還されて今年で20周年。中国政府は香港を特別行政区とし、一国二制度を50年間継続すると言明した。あと残り30年。もしも、あなたがまだ香港の魅力を知らないのであれば、あるいは、最近香港とご無沙汰だったりするのであれば、いまの香港を見物に行くのにためらう理由はどこにもない。

この記事を書いた人

WINEWHAT
WINEWHAT
YouTubeInstagramでも、コンテンツ配信中!
フォローをお願いいたします。

Related Posts

PAGE TOP