検証9 手羽先

脂が少なく、肉質に締りのある奥久慈軍鶏の手羽先。コラーゲンのようなプリプリした食感。お好みで、すだちをかけて。



キーワードは酸のキレ

脂との同調を狙うと違った結果に



和田 冷えたテラ・モントーサ(5)はいいですよ。酸のキレが。ゲミシュターサッツ(2)も冷えてから美味しそう。


 すごくいいですね、ゲミシュターサッツ。


土田 酸のキレ感ってキーワードになる?

太田 なると思います。でも、今のように温度が上がってくると、ゲミシュターサッツは別の要素が出てきて面白いですね。グリセリンの甘みですとか、アフターのほろ苦味ですとか。フルーツ全開になってきましたし。

 しかし、ここまで9串通して試していると、酸て大事な要素ですね。

和田 はい、売り上げに影響します。

土田 えっ? どういうこと?

和田 美味しい酸味をもつワインを飲んでもらうと、焼き鳥の出る量が違う。もたれないので、いくらでも食べられるから。

太田 どれだけ唾液が出るかですよね。

 瀬川さん、手羽先とバター・シャルドネ(4)とはどうですか?



瀬川 ピンポイントで合わせるなら、皮の部分の香ばしさやオイリーさで合います。ただ柑橘を絞りすぎると喧嘩するので要注意ですね。赤ではサンジョヴェーゼ(3)がよく合います。穏やかな香ばしさと伸びやかな酸でまとめてくれました。


太田 僕もサンジョヴェーゼはよいと思いました。皮の焦げ目とワインの焙煎香がマッチしますね。先ほども話題に出たゲミシュターサッツは酸のエッジが立って、手羽先の油脂の強さをよい意味で軽減してくれたと思います。

土田 手羽先ってお店の技術が一番出る部位だと思うの。それで合わせるワインは手羽先の風味を邪魔しなければ私的にはオーケーなんだけど、この中ではメンシア(8)がよかったかな。


 油脂っぽさの同調を狙うか、あるいは逆に酸の効いたワインでキレを狙うかで結果が変わってきますね。僕の場合、ピンポイントならアシルティコ(1)が美味しいのだけれど、さすがに9串目になると酸のキレがよいプラーガー(10)に軍配が上がる。



手羽先×10本採点結果の上位2本

大沢ワインズ
フライングシープ・サンジョベーゼ 2011
瀬川 ○
太田 ○

エラスリス
カルメネール・アコンカグア・アルト 2015
柳 ○
太田 ○

M. シャプティエ
ジゴンダス ルージュ 2012
瀬川 ○
太田 ○

プラーガー
リースリング・フェーダーシュピール 2016
柳 ○
和田 ○





10本のワイン×9串の焼き鳥の

まとめ



 さて、「バードランド」さんの焼き鳥を9串、そてぞれピンポイントで相性を検証してみましたが、現実には部位ごとにベストのワインを合わせながら食事するのは無理です。そこで今回、もっともバーサティリティの高かったワインを選んでいただきたいのですが。



瀬川 私の場合、サンジョヴェーゼ(3)が予想外に奮闘してくれました。穏やかに寄り添う感じ。つまり邪魔しないという意味での相性です。挑戦的な意味ではジゴンダス(7)ですね。ハーブやスパイスなどいろいろ複雑な要素を含んでいるので、それぞれの部位の特徴的なニュアンスを拾ってくれることがあって、驚きと創造性のあるマリアージュが楽しめます。



太田 手前味噌ですみませんが、ゲミシュターサッツ(2)がイメージ通りだった印象です。油を切るだけではない、口の中を洗い流さない白ワインとしてよく働いてくれました。それからプラーガーのリースリング(10)も抜群でした。このワインはどちらの特徴も兼ね備えています。ある時は油を切って流してくれるし、ある時はグリップ力がしっかりあって肉と同調する。赤は部位によって合う合わないがはっきりしていて、サンジョヴェーゼ(3)とジゴンダス(7)は健闘していたけれど、汎用性という面では難しいところがあるのかもしれません。



土田 焼き鳥って軽く見られがちだけど、本来、焼き手と対峙して楽しむものなんだよね。すると、個性の強い和田さんの焼き鳥に合わせるワインを選ぶのは非常に難しい。私にとって、焼き鳥に合わせるワインはあくまで脇役でいいから、香りが強かったり、おらおらと主張の強いワインはだめで、じつは今回ないけどロゼがいいと思うのね。



 山椒焼きでも言ったように、ロゼは今回選択肢から外させていただいたけど、ここによいロゼが一本あったら、それで決まりだったかもしれない。この中から選ぶなら僕はプラーガー(10)かな。自分が選んだアシルティコ(1)も、樽発酵していないノーマルなタイプならもっと健闘したかもしれないね。



和田 僕はよその焼き鳥屋に行った時、白ワインは頼みません。


全員 えっ?

和田 それにはちゃんと理由があって、たいてい樽の効いたシャルドネだから。合わない白がオンリストされてる和食店がとにかく多いんですよ。だから、かえってサンジョヴェーゼやローヌで値段の張らない赤を選んだほうがまず失敗しない。

 今回、瀬川さんがサンジョヴェーゼ、太田さんがジゴンダスを選ばれたのは、暗黙のうちに和田さんの主張と合致していましたね。みなさん、お疲れ様でした。





焼き鳥とのマリアージュ オールマイティワインのご参考

柳 忠之テイスターの選択

プラーガー
リースリング・フェーダーシュピール2016
産地:オーストリア/ヴァッハウ
品種:リースリング
4,400円/エイ・ダヴリュー・エイ



瀬川あずさテイスターの選択

大沢ワインズ
フライングシープ・サンジョヴェーゼ 2011
産地:ニュージーランド/ホークスベイ
品種:サンジョヴェーゼ
3,000円/大沢ワインズ





太田賢一テイスターの選択

M.シャプティエ
ジゴンダス 2012
産地:フランス/ローヌ
品種:グルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、サンソー
3,400円/日本リカー





Bird Land Ginza (バードランド 銀座)


ミシュランの星をもつ、日本を代表する焼き鳥屋のひとつ。和田店主が自ら焼く奥久慈軍鶏の地鶏焼きは絶品。ワインリストも完備。

東京都中央区銀座4-2-15 塚本素山ビルB1F
TEL:03-5250-1081
営業時間:17:00~21:30
定休日:日曜・月曜・祝日
http://ginza-birdland.sakura.ne.jp

この記事を書いた人

忠之柳
忠之柳
1965年横浜生まれ。ワイン・ジャーナリスト。ワイン専門誌記者を経て、97年に独立。専門誌からライフスタイル誌まで、安いのから高いのまで、大きなワイン愛で包み込む。