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おいしい鶏肉って なんですか?

食コンサルタント 内藤善夫さんに聞きました

カリフォルニアのアンダーソン・ヴァレーからソノマに向かう道すがらに見かけた風景。ここでは、除草や害虫駆除に、羊とともに鶏も活躍している 写真/徳山喜行

ぼくたちのまわりにはたくさんの鶏にまつわる食べ物があるけれど、その素材である、鶏肉ってどんなものだろう?全国を飛び回る農畜産業のスペシャリスト、食コンサルタントの内藤善夫さんに、生産の側からみた、おいしい鶏肉について聞いた。

内藤善夫
株式会社バイオバランス代表。アンティ・ムッファ株という、乳酸菌の発見者。アンティ・ムッファ株の入った飼料を販売するだけでなく、それをつかった農畜産業の支援をはじめとして、食コンサルタントとしても活躍している。また、自身がかかわった食材を中心としたレストラン『YSM』のオーナーでもある。ワイン醸造の経験もフランスで積んでいる、ワインのプロという顔ももつ。

ワインとの相性を考えた場合、育て方は特に重要です。

ーー鶏肉とワインといった場合どんな印象でしょうか?

「私が皆さんにお伝えしたいのは、鶏肉は、調理法、鶏の種類、肉の部位、といったところが注目されがちですが、育て方が大きなウエイトを占める、ということです。そして、WINE-WHAT!?さんはワイン雑誌ですから申し上げますが、ワインとの相性を考えた場合、育て方は特に重要だと私は考えます」

ーーそれはどんな理由からですか?

「私がおいしいとおもうのは健康に育った鶏の肉です。味が濃く、コクがあります。また、脂のバランスがよくヘルシーです。いわゆるオレイン酸もおおいのですね。さっぱりしていて、もたれない。そして、鶏肉は、すぐ食べるのが基本ではありますが、細胞が健康であれば、保水性があって、すこし日数をおいてもみずみずしい。大げさにいえば、熟成して、かつおぶしのような独特の香りがします。そういった鶏肉は、味付けや調理法の前に、鶏肉本来の味でのワインとのペアリングのきっかけになりえますし、唐揚げや焼鳥といった食べ方だけでなく、さまざまな料理に対応できるとおもっています。総じて、鶏肉にも、牛肉に近いことがいえ、ワインともっと楽しめる可能性があるのです」

ーー健康な鶏の育て方とは?

「鳥は鶏に限らず、臆病ですよね?ちょっとした物音にも怯えます。夜、風で農場の板がカタンと倒れる。その音を怖がり、パニックをおこした鶏が、農場の隅に殺到して、鶏の上に鶏が重なる。朝、そのとき下になった鶏が何羽も圧死していた、などということが、現場ではわりと起こっているんです

それから、鶏は気性が荒いですから、ケンカする。つっつきあって、毛がほとんどなくなっている鶏も少なからず
いますし、弱い鶏を死ぬまで追いかけ回すようないじめもあります。

そういったことはストレスが原因で、肉や卵の質にも悪影響をあたえるでしょうし、〈歩留まり〉という言葉が正しいかはわかりませんが、生産効率が落ちます」

ーーそれは地鶏ならではの現象ですか?

「ケージで育てる場合は、起こりづらいですね。私は私の乳酸菌が抗生物質などとは相性がわるいので、ブロイラーではなく、地鶏とのお付き合いが主ですが、地鶏は生まれて28日目以降は平飼い、1m²あたり10羽以下というJASのルールがあります。いまはやわらかい若鶏がもてはやされますので、80日くらいで肉にしてしまいますが、平飼いのあいだは、他の鶏と接触し、また、いうなれば糞の上で生活しているような状況です。それで、腸内環境が悪いと、栄養が吸収されずに糞にでてしまい、その糞は、におってストレスの原因になります。病気も発生しやすくなります。クロストリジウムという伝染性の病気が代表的です。また、コクシジウムという病気は虫ですが、糞から広がります。

地鶏というとブロイラーよりイメージがいいですが、皆さんが想像するような健康で美味しい地鶏を育てるのは、実は難しいんです」

健康的な鶏のレバーはちょっとしたフォアグラのようです。

ーーよい鶏とそうでない鶏は、どうやって見分けられますか?

「それはもう一目瞭然です。まず、ケンカをしないので、毛が抜けていませんし、怪我もない。ピカピカと輝いています。栄養状態がよければ、体のバランスもよいですね。胸元から羽にかけての骨の形でわかります。そして、堂々としていて、ちょっとした物音ではビクビクしない。糞もわかりやすい。健康な鶏の糞は臭くないですし、軽いんです。水や栄養をきちんと身体に吸収できているからです。私のアンティ・ムッファ株を飼料に使ってくださっている場合は、鶏糞に乳酸菌が出ますから、堆肥としても優秀です」

アンティ・ムッファ株
アンティ・ムッファ株は、飼料にたいして0.2%程度、アンティ・ムッファ株のついている飼料をくわえることで、牛をはじめ、家畜の腸内に活性状態で届き、悪玉菌の生育を抑制するという乳酸菌。2,3週間で効果がではじめ、エサの消化吸収がよくなり、糞も臭くなくなるので、ストレスや病気が減ってゆくことが期待される。堆肥は敷材として使え、生産効率の向上、品質の向上など、さまざまな恩恵の可能性を秘め「魔法の乳酸菌」と呼ばれることもある。使い方、使用後の経過の確認などは、内藤氏はじめ、株式会社バイオバランスがサポートしている。

ーー健康な鶏肉を育てることはメリットだらけにおもわれます。

「ただし、コストの問題はつきまといます。品質向上のために、余裕のない農家にさらに負担をかける、というのは私の望むところではありません。鶏肉、鶏卵の相場は低いところで安定している、物価の優等生です。消費者にも、鶏は安いもの、というイメージがありますよね。それで生産の側でも思い切ったことがやりづらいんです。だから、今後の食糧事情を考えたときに、採卵鶏を食べる、という選択も、私はありだと考えています」

ーー普通は食べないですよね?

「肉鶏の場合は80 日程度で肉にするといいましたが、一般的には100日程度になると肉が固くなりすぎる、とされるようです。いっぽう、私の関わっている地鶏は120日程度でも肉は柔らかく、育っている分、味に深みもあります。採卵鶏は肉鶏とは品種もちがいますが日齢150日くらいから卵をうみはじめるので、ずっと高く、その後、400日程度たつと、卵の質や産卵率が落ちるので、ここで殺してしまうか、一度、絶食等の給餌制限をします。私はここで食べる、という選択肢があると考えています。健康な採卵鶏であれば、地鶏のような美味しさがあります」

ーーもっと美味しい鶏肉の価値を知ってもらいたいですね

「たとえばレバーは顕著です。フィルターですから、健康状態が如実にでます。健康な鶏のレバーは、くさみがなく、ちょっとしたフォアグラのようです。私は鳥でいえば、うずらやダチョウといった鶏以外の鳥の生産者さんともお付き合いがあります。鳥の可能性、食の可能性について、皆さんに興味をもっていただければ嬉しいです。ワインとのペアリングの幅も、ずっと広がるとおもいます」

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