518-3

今回は広尾のレストラン「ア・ニュ」の熟成エゾシカの、しっとりとしたロティでマリアージュを探求していきます。

エゾシカはマリネされた後にゆっくりと火を通したもので、肉質はとても柔らかい。肉の周辺の焼き目を取り除き、より柔らかい部分だけを提供するので、とてもピュアでテクスチャーがよく、きれいに浸透したマリネの風味と赤ワインにブラックペッパーで仕上げるポワブラードソースとの相性が絶妙です。ビーツと赤みの肉の風味の相性もよく、ワインをとても欲するひと皿です。

まずはクラシカルに、フランス・コート・デュ・ローヌからルネ・ロスタン。熟成によるしなやかな口当たりに、ドライフルーツのような果実味と明確なスパイス感は、故障の風味が効いたソースと土の風味のするビーツの双方にアロマの点でよく合います。

しっかりしたワインのタンニンとも合うように、ソースをたっぷりつけて、しっかり噛みしめながら楽しんでいただければ、双方のフレーバーや飲みごたえとの中和的バランスのよさを感じることができます。

新世界も忘れてはいけません。セントラルコーストからAVAサンタ・リタ・ヒルズのドメーヌ・ド・ラ・コート ピノ・ノワールの2011です。

近年のカリフォルニアはエレガントな味わいが増えていますが、そんなスタイルの代表的な生産者がこちら。さらに2011年は涼しかった年でもあり、酸の伸びやアロマに繊細さのある、エレガントな仕上がりです。

それでも果実感の豊かさや丸みが表現されているのが特徴で、心地よいフレッシュさと共存した味わい。この果実味スタイルには、粘性のあるポワブラードソースト同調する懐の深さがあります。

ビーツはベリー系の果実感ともよく合うので、コート・ロティと同じようにソースに合うタイプのマリアージュですが、この場合、ワインの果実感や豊かさがソースの粘性に合うスタイルで、コート・ロティのソースの風味に合うタイプとは別の楽しみ方になります。

自然派とのマリアージュも面白いと思います。用意したのは、柔らかいテクスチャーを持つ、フランスのロワール地方のドメーヌ・ル・ブリゾー ヴァン・ド・フランス・コテクゥール 2011。柔らかい食事には、柔らかい飲み物を合わせるとテクスチャーが同調するし、このワインにはガメイとコーという品種由来のスパイス感があります。

ワインとしては今回のセレクションの中で一番軽いミディアムライトボディなので、ソースを控えめにつけて、マリネした肉自体のピュアな味わいを楽しむのがおすすめです。

今回の料理は、素材のピュアな楽しみと、クラシカルなソースの深みの2つの大きな楽しみがあります。クラシカルもの、新世界もの、自然派もの、どのワインとも楽しめます。様々なマリアージュの方向性を、食べ方の違いなども考えることができる料理です。

今回の3銘柄

518-2
  • ドメーヌ・ル・ブリゾー ヴァン・ド・フランス コテクゥール 2011

    生産国 : フランス
    地域 : ロワール

    自然派有名生産者であるクリスチャン・ショサールは、この年を最後に亡くなってしまいました。現在は奥さまのナタリーが変わらず素晴らしいワインをつくっています。溌剌としたブラックチェリーのような果実感に、ほどよいスパイス感と、ピュアでナチュラル、きれいなミネラル感を持つのが特徴です。

    マリアージュ結果
  • ルネ・ロスタン コート・ロティ 2000

    生産地 : フランス
    地域 : コート・デュ・ローヌ

    コート・ロティを代表する生産者のひとりで、この地での長いワインづくりの歴史をもつ。2000年のこれは熟成のニュアンスがきれいに出始めており、スパイスやドライフルーツに腐葉土、鉄分を感じさせる鉱物のニュアンスを持っています。ストラクチャーが明確な、クラシカルな味わい。

    マリアージュ結果
  • ドメーヌ・ド・ラ・コート ラ・コート サンタ・リタ・ヒルズ 2011

    生産国 : アメリカ
    /地域 : カリフォルニア

    昨今のカリフォルニアワインの中で注目すべき生産者です。完熟したブドウを全房発酵で醸造し、赤系ベリーやオレンジのニュアンスに、アニスなどの清涼感のあるアロマがあります。果実の豊かさと丸みを持ちながらも、甘くなく、フレッシュな充実した味わいを呈します。

    マリアージュ結果

大越メソッド 基本アプローチ5カ条

① 五味を合わせる
五味とは、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味のこと。料理とワインの2つの要素の中でバランスよく五味が整う時に、双方の風味が味わい深く感じられる。
② 味わいの同調
ワインと料理の五味の中でも特に酸味、甘味、うま味を同調させる。互いのボリューム感や強さに合わせて同じ風味同士を同調させ、一体感を出して味を引き立てる。
③ 味わいの中和
五味や刺激(渋味、辛味)の中でやや強い個性に対し、対の関係にある味わいを合わせて個性を緩和させ、中和することで、風味を心地よく残す。
④ フレーバーを合わせる
とても重要で、頻繁に使用される考え方。ワインと料理の双方が持つフレーバーや香りを合わせて一体感を生み出すことで、いずれも長い余韻、風味を楽しめる。
⑤ テクスチャーを合わせる
やわらかいワインにやわらかい料理、暖かい料理に冷やしすぎていないワインなど、温度や食感などでテクスチャーを整えると、マリアージュ効果がさらに上がる。

この記事を書いた人

大越 基裕
大越 基裕
1976年4月24日 北海道札幌市生まれ
バーテンダーからサービス業界に入る。ワインに魅せられて渡仏を決意、帰国後2000年にソムリエになる。ワインバーで勤めた後2001年に銀座レカンにソムリエとして入社。様々なコンクールや実践で経験を積んだのち、更にワインの奥深さを知るために、再び2006年より2年半渡仏。帰国後2009年より銀座レカンシェフ・ソムリエとなる。