ポルシェの醍醐味

クルマは、運転を楽しむことができた方がもっともっと面白い。昨今話題の自動運転は確かに便利かもしれないが、そこに興奮はあるか。感動はあるか。休日の遠出、せっかくなら目的地だけでなく道中だって楽しい方がいい。そんな、オフの充実にぴったりなポルシェの世界を幾度かの試乗を経て垣間見ることができた。

実は乗りやすい、その理由とは

ポルシェの何がそんなに凄いのか。簡潔に言うならば、車としての基本に驚くほど忠実に作ってあることだ。アクセルを踏めば走る。ブレーキを踏めば止まる。ハンドルを切れば曲がる。すべて当たり前の事であるし、どんな車であってもそのように動くだろう。では、その車はアクセルを踏んだ分に対し本当に忠実に加速するか。ブレーキを踏んだ分に比例して効きが増すか。ポルシェは、この車としての基本性能が呆れるほど緻密に作られており非常に乗りやすい。運転していて全てがリニアなのだ。右足とエンジンが、両手と前輪が直結しているとでも表現すればいいだろうか。

玄人も飽きない懐の深さ

では、奥行きとは何だろう。乗りやすいと上述したが、その一方でクルマの扱いに長けた玄人をも飽きさせない一面も備えている。スキルが上がるに応じて新しい世界を見せてくれるのだ。コーナー手前での減速からのハンドル操作、そしてコーナー脱出後の加速。セオリー通りの操作であるが、一つ一つに対し緻密・繊細に反応するためまるでクルマが乗り手のスキルを試すかのように、その操作に良くも悪くも忠実な走りをみせてくれる。そして一通り手懐けられたと思った頃、さらにその先にある世界へとドライバーを駆り立てる。ドライバーは自分の操作の幅が広がるたび、初めて自転車に乗れた時のような興奮をいくつになっても味わうことができるのだ。

フラッグシップ・911シリーズ

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筆者が911-Ⅱ Carreraに乗った際、まさにこの奥深さを実感した。ポルシェのフラグシップに鎮座する911シリーズは特に、ボディの堅牢さや足回りのしなやかさが突出しておりクルマの動きが掴みやすい。掴みやすいからこそ、自分の運転の至らないところも如実に出てしまうのだが、それを克服して乗りこなせた時が最高に気持ちいい。こう書くと門戸が狭そうに聞こえるが決してそんな事はない。無理をしない範囲で安全に、徐々に乗りこなしていけばいいのである。

ポルシェワールドの入り口

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併せて紹介したいのがBoxster/Caymanシリーズだ。こちらはエンジン配置の関係で物理学的にも最も安定したレイアウトとなっており、さらに911譲りの高性能なシャシーを持ち合わせるためポルシェの醍醐味を体験しやすいモデルとなっている。今回718 Boxsterもお借りすることができた。この車はラインナップ上ではエントリーモデルの位置づけになるものの、高いサイドシルが真のスポーツカーであることを示しておりメーター内には油温/水温/空気圧計まで用意され本格的なスポーツ走行に対応した仕様となっているほか、ルームミラーの造形やペダル配置など随所に細かなこだわりを感じることができた。これだけの性能を持つクルマをオープンにして夏の太陽を浴びながら走らせるのは最高の気分であった。
最後になってしまったが、毎度車両をお貸しいただくディーラー様には厚く御礼申し上げたい。

この記事を書いた人

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冨田成俊
クルマと共に過ごす豊かなライフスタイルを提案。スポーツカー、ドイツ車を中心に試乗レポートを執筆する一方で運転技術への関心も高く、各メーカーのドライビングイベントへ参加する傍らレーシングカートも嗜む。

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