てんとう虫の石川進之介が、美味しい食材との出会いと料理を紹介する連載企画。第7回目は、富山でお鮨。

富山の人気寿司店「鮨人」。大将の木村泉美さんとともに。

初めての地 富山

2019年10月に甚大な被害を及ぼした台風19号が去った後、交通機関にも多く影響があったことは記憶に新しい。新幹線E7系が本数を減らして走り出す頃、僕には富山との縁ができていた。毎週通って、移動を自粛するようになった3月までは、月の半分以上は富山ライフを送っていたのだ。

それは、ある富山でのプロジェクトに参加したから。

実は、旅するシェフ時代には、僕はこの地を訪れてはいなかった。通過して石川県の金沢や能登の地酒と食材の取材、フードツアーを組んだことはあるのだけれど、富山といわれると、僕にとっては、小学生の頃に通ったイングリッシュクラスの先生の故郷、というイメージだった。先生が帰省され戻られるとお土産に鱒鮨を頂いた。僕はいまも、鱒鮨を食べると先生とともに富山というキーワードを思い出す。味にはその周辺の出来事をも思い出させる力がある。

だから、人間関係も土地も空気も気候も全てが〝お初〞の富山で、人生の旅の1ページを新たに刻めることには胸を膨らませた。

もちろん、プロジェクトは毎回が楽しいことばかりでない。苦境をどう乗り越えるかは、どうその環境で楽しめるかにかかっている。

僕はどんな仕事をしていても、その国、その地域の食に背を向けることなどはできない。食べる楽しみを忘れては素敵な仕事や人間関係を構築できることはできないと思うからだ。そして、何より地場のエネルギーを身体と心に頂けることはこの上ない喜びでもある。

名産の魚介と独特の調理法

天然の生け簀と言われる日本海側にある富山湾は、多種多彩で旨い魚を育む。湾には北アルプスの山々から豊富な酸素と栄養分が供給される。万年雪の立山連峰からの一気に冷える雪解け水は富山平野に流れ水田を潤す。こんな環境下で、鮨が旨くないはずがない。

そもそも鱒鮨からはじまっている僕のなかの富山。富山を通うにつれ、気になる鮨屋に出会った。

その鮨屋の特徴は、地元のネタへのこだわりと赤酢のシャリだ。食材は富山湾や七尾湾で水揚げされた珠玉揃いで、特にアオリイカを握るまでのプロセスには驚いた。

獲れたてのアオリイカはまだ身が固いそうで、マイナス50度に一度凍らせ繊維を壊してから使うという。隠し包丁で丁寧に刻まれ、甘ダレを纏う。絶妙な食感となり、身質が舌を唸らせる。

こちらがアオリイカ。茶褐色をした赤酢のシャリの上のイカには甘ダレがかかっている。

さらには、オスの”のど黒串焼きネギマ”には感動した。

一見焼鳥としか見えないこの串焼きは、のど黒のネギマで、この店のスペシャリテのひとつ。炙ることで溢れてくる魚のおいしい脂をネギが吸いあげ、口の中でトータルに完成する旨味。極楽である。

スペシャリテの“のど黒串焼きネギマ”

ほかにも書ききれない程、うまいお鮨が食べられる。現在の状況が解消したら、現地に行って体感してほしい。

ところで、鮨と寿司の違いはご存知だろうか?

「鮨」は、握り鮨、押し鮨、棒鮨など、現在の「おすし」の漢字として用いたそう。「寿司」は、江戸時代に作られた「鮨」の当て字で、お祝いなどに「おすし」を用意したことから「寿を司る」→「寿司」となったと言われている。

素材もリミックス時代の今は、おすしも魚だけでないので、魚編の入っていない、”お寿司”が馴染みやすいかもしれない。

そして、僕は素材をより引き立てる、シャンパンをお寿司に合わせるのがブームである。これを言うとここに登場するお鮨屋の大将に怒られちゃうかも(笑)彼は冨山でかの有名な日本酒とのペアリングを誇らしげにしてたっけか。あっ、でもいいや。シャンパンとのコラボイベントもしてたな。

結論「美味しければ」いいってことよ。

富山に向かう新幹線の中より

この記事を書いた人

石川進之介
石川進之介
株式会社ミスズライフ ビジネスディベロップメントマネージャー
元・旅するシェフ。世界37ヶ国で出張シェフとして活躍した。
商品開発・農畜産漁業関連のコンサルティング、メディア露出、レシピ本含めた書籍多数。
現在は、冷凍のカットぶなしめじの国内外での販路開拓とPR活動に尽力中。

夢:このカットぶなしめじで世界を結ぶこと。
趣味:自宅でおいしいご飯とワインを飲むこと。