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小布施ワイナリーが造る日本酒の会 in 名古屋

2015年ヴィンテージはLe Saké Erotiqueシリーズの6種とLe Saké Naturelシリーズの2種。

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Le Saké Erotique の6種は、同じ産地の同じ米(長野県産・美山錦)で、精米歩合も同じ55%、同じ醸造方法(生酛造り)で造られており、違うのは酵母の種類のみで、純粋に酵母による味の違いを比べることができる。 

この酵母は協会酵母を使っており、明治から大正にかけて発見された、1・2・3・4・5号酵母の5種と、戦後の代表的酵母と言われる6号酵母の、計6種類の酵母をそれぞれ使用して造られた。

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名前もLe Saké Erotique Numero Un (1号酵母)、Deux(2号酵母)、Trois(3号酵母)・・・アン、ドゥー、トロワと酵母の号数が名前となっている。

さて、今回名古屋の会場は「トゥラジョア」。2室しかないプライベート感たっぷりのレストランは年に一度の予約日に年間の予約がすべて埋まってしまう(当然電話もつながりません)予約の取れない店。

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銀座・エスキスで行った第1回目はシェフソムリエ・若林栄司氏のセレクトで、1皿に合うワインと小布施のお酒の両方をペアリングし、飲み比べたペアリング比較だった。
第2回目の今回は、1度にLe Saké Erotiqueの6種類をまず並べ、1皿毎に自分的ベストペアリングを見つける形式でスタート。

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1品目、
安納芋と白海老のカクテル キャビアのせ。

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自分的ベストマリアージュ:1号酵母 純米酒のようなどっしりしたボディと米の甘さを強く感じるお酒。安納芋の甘さ、ややざらりとした舌触りと良くあった。

2品目、
シャンピニオンとポルチーニのスープと椎茸フライ。

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ベストマリアージュ:スープには5号酵母、椎茸フライには1号酵母。
5号は万能に合わせやすく、ウニが詰まった椎茸フライのように、旨味・風味が強い物にはどっしりした1号が合う。

3品目、和牛の秋風味。

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ローストした和牛の上に栗のペースト、添えられたブイヨンをかけて頂く。
松茸、牛の香りと味、それらを柔らかくまとめる栗のペーストが特徴の料理には、乳酸菌のミルキーな酸を感じる3号酵母で。

 

4品目、蟹の春巻き トリュフ塩と蟹味噌。
春巻きの中にも刻んだトリュフ。

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こちらは万能選手の5号酵母。

5品目、舞茸の碗仕立て フカヒレ入り。

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これは酸が強く感じる2号で口中を軽くするか、万能な5号にするか…。

ここでLe sake Naturelの2種を並べる。
Le saké Naturel70は 無農薬、収穫量を減らした長野県産・美山錦で、天然酵母、生酛造り、精米歩合70%。
Le saké Naturel90は 無農薬、収穫量減(通常の半分以下)の自社畑産・美山錦で、天然酵母、生酛造り、精米歩合90%。

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どちらも収穫量を減らした無農薬米を使い、米を極端に削らずに造ったお酒。当主の曽我氏は、「農薬や過剰な堆肥をなくす事で、畑の磨き(削り)をしている。その為精米歩合は少なくても良い。これは畑の吟醸酒だ」とおっしゃる。 

つまり、過剰な堆肥、農薬を使用して作った米にはタンパク質や脂質が多いため精米歩合を多くしなければいけないが、最初からそれらが余分に付かない健康な米を作れば、米を多く削る必要はない。ということなのだろう。

確かにどちらもほとんど削っていないとは思えない、すっきりした綺麗なお酒に仕上がっていた。むしろ精米歩合90%(ほとんど削っておらず、一般に食べる白米と同じ状態)が、どのお酒よりも綺麗で清涼感すら感じるほど。

6品目、秋大根と信州牛の一皿。

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まずは肉をお皿に開いて、中のウニを巻いて食べるスタイル。
これはダントツで、ルサケナチュレル90。

締め、穴子ご飯。

デザート、紅玉のエスプーマとシナモンのアイス。

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洋酒に通じるハーブ香がある4号酵母が活躍。

今回の飲み比べでは、小布施ワイナリーの日本酒の味の違いをはっきりと知る事ができた。1号、2号酵母のお酒は、昔のお酒の味だと言う方が多く、これは明治時代の酵母と昭和の酵母から、味のスタイルに酵母の時代性が出たのかも?という意見があった。 確かに1号・2号酵母は吟醸酒ブームの前の日本酒にある米感のある味に感じ、6号酵母には現在の吟醸酒の味や香りを感じた。本来ならこの味や香りの違いは精米歩合によるものが多いはずだが、これらのお酒は同じ精米歩合。ではこの違いは何からくるのかといえば、「酵母」という他にないが、まるで精米歩合が違うかのような違いが酵母の違いで出るとは、予想をしていない発見に驚きだった。

また、日本酒だけのペアリングを自主的に試したのは初めてで、ここまで個性がある日本酒ではペアリングの合う・合わないは、好みとは別次元ではっきり表れていたのも面白かった。例えば1号酵母のどっしりした米の甘みに乳酸菌発酵したような酸を感じる酒には、安納芋の甘みやウニの癖ある甘みに良く合う、4号は酸と香りが独特なシェリー香があり、それが今回の料理には難しかったが、デザートの紅玉のエスプーマとシナモンのアイスには、その酒が持つハーブ香がぴったりだった! このようにペアリングを自分で探す会は、様々な意見が飛び交い、にぎやかで楽しい会となった。

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森實有紀子(和美塾)
和食・日本酒・着物・茶道、そして日本ワイン。 食文化を含めた『和文化』の素晴らしさを世界に伝える『和美塾』の代表です。

定期的に行う『wabi labo 』は、和食とワインのマリアージュを検証したり、日本酒の新しいあり方について試してみたりと、和文化を体験し、試し、意見を交換し合う活動をしています。その様子をこちらでお伝えしていきます。

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