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焼き鳥に合うワインとは?

料理から探るマリアージュ・メソッド vol.7 恵比寿【鳥幸フレンチ】

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今回は恵比寿の新店「鳥幸フレンチ」で、代表的な3種類の串にそれぞれ別のワインをチョイスし、検証してみます。

まずは鶏のささみを優しい火入れでふんわり焼き上げて、わさびをのせる「ささみサビ焼き」。脂質が少なく柔らかいささみに、わさびの辛さとグリーンノートが際立つ味わいの串です。ワインは肉の柔らかな食感に合わせ、酸味が少なくストラクチャー・バランスが柔らかいものを。焦げがほとんどない串なので、樽のニュアンスや酸化的な風味が控えめで、ピュアな果実感のやや還元的なスタイルが好ましいです。

選んだのは、「ジャン=リュック・コロンボ コンドリュー アムール・ド・デュー」。通常コンドリューは樽のニュアンスが明確に感じられるキュベが多い。そんな中にあって、ジャン=リュック・コロンボのワインはそのニュアンスがとても繊細で、ユリの花や白桃の風味に加え、メロンを思わせるアロマが主体的にきれいに立ち上がります。

特にメロンのようなグリーンノートが、エストラゴンのような風味の強いハーブやわさびのようなグリーンノートとよく同調するのです。情感が強いとスパイスなどを使いたくなりますが、つくり手の個性によってはコンドリューとわさびも面白い香りのハーモニーを生みます。

2串目は、「ねぎま」。鶏胸肉とねぎを交互に串に刺した、塩味の串です。部位は胸肉なので脂質は少なめ、さらにねぎが間に入ることで串全体の脂分のトーンはかなり優しくなります。火の通った優しい甘さの野菜にもワインを合わせることを考えると、強い特徴よりも優しく軽やかで、やや甘やかなニュアンスのものが最適です。

少し焦げた風味も付いているので、ワインはシュール・リーをして複雑味を持ち、しっかり熟度も上がっている甲州、「勝沼醸造 アルガブランカ クラレーゼ」が、この串の塩味と脂質との中和的なバランス感によって、串の風味をさらに引き出します。

最後の串は、「鳥幸フレンチ」自慢の「特上レバー」タレ味です。ふわっふわの食感に甘めのタレがよく絡み、口の中で蕩(とろ)けていくような味わい。前の2串との違いは、脂質の豊かさが素材とタレの双方から感じられることです。ポイントは、柔らかい食感なので、脂質があっても硬いタンニンで中和せず、タレの甘さを受け入れた上で味わいのバランスを取ることが重要になります。

この甘い味わいに合わせるには、やはり同じく甘い“ニュアンス”がいいでしょう。

ワインは「ラルコ ロッソ・デル・ヴェロネーゼ」を選びました。アマローネの名手の彼のスタンダード・キュベは、ドライレーズンを思わせるニュアンスに、甘やかな風味を持ったタンニンのよく溶け込んだ辛口のミディアムボディ。その独特とも言える風味がタレの甘さを受け入れ、かつ脂質を程よく中和、タレの甘い風味とレバーの風味、ワインのフレーヴァーとバランス良く余韻に残します。

様々な味わいが串それぞれに詰まっている焼き鳥は、ペアリングのしがいのある料理。串とワインの多彩なマリアージュを楽しめたら、とても幸せですね。

今回の3銘柄

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  • ジャン=リュック・コロンボ コンドリュー アムール・ド・デュー

    生産地 : フランス
    地域 : コート・デュ・ローヌ

    ヴィオニエというアロマティックなブドウからつくられるワイン。外交的で華やかな香りはユリの花や白桃などを連想させる。酸味は穏やかだが、ミネラル感が豊富で艶やかな味わい。造り手は特にコート・ロティやコルナスで著名。ボトル15,000円。

    マリアージュ結果
  • 勝沼酒造 アルガブランカ クラレーゼ

    生産地 : 日本
    地域 : 山梨

    勝沼酒造は、特に甲州ワインに特化して、スタイルやテロワールによって様々な違いを表現している生産者。自然な美味しさが滲み出る造りのワイン。クラレーゼは、シュール・リーによって複雑味を持った、軽やかながらも厚みのある味わい。ボトル5,500円。

    マリアージュ結果
  • ラルコ ロッソ・デル・ヴェロネーゼ

    生産国 : イタリア
    /地域 : ヴァルポリツェッラ

    アマローネの名手である造り手のスタンダード・キュベ。完熟したブドウからつくられるワインは、複雑で甘やかな風味を持つ。ジューシーかつうま味ののった味わいがこの生産者の特徴。ボトル7,000円。

    マリアージュ結果

大越メソッド 基本アプローチ5カ条

① 五味を合わせる
五味とは、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味のこと。料理とワインの2つの要素の中でバランスよく五味が整う時に、双方の風味が味わい深く感じられる。
② 味わいの同調
ワインと料理の五味の中でも特に酸味、甘味、うま味を同調させる。互いのボリューム感や強さに合わせて同じ風味同士を同調させ、一体感を出して味を引き立てる。
③ 味わいの中和
五味や刺激(渋味、辛味)の中でやや強い個性に対し、対の関係にある味わいを合わせて個性を緩和させ、中和することで、風味を心地よく残す。
④ フレーバーを合わせる
とても重要で、頻繁に使用される考え方。ワインと料理の双方が持つフレーバーや香りを合わせて一体感を生み出すことで、いずれも長い余韻、風味を楽しめる。
⑤ テクスチャーを合わせる
やわらかいワインにやわらかい料理、暖かい料理に冷やしすぎていないワインなど、温度や食感などでテクスチャーを整えると、マリアージュ効果がさらに上がる。

この記事を書いた人

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大越 基裕
1976年4月24日 北海道札幌市生まれ
バーテンダーからサービス業界に入る。ワインに魅せられて渡仏を決意、帰国後2000年にソムリエになる。ワインバーで勤めた後2001年に銀座レカンにソムリエとして入社。様々なコンクールや実践で経験を積んだのち、更にワインの奥深さを知るために、再び2006年より2年半渡仏。帰国後2009年より銀座レカンシェフ・ソムリエとなる。

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